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新・エレクトロニクス工作室

第17回 GPSモジュール用試験器

JE1UCI 冨川寿夫

2023年9月15日掲載

第13回の「10MHz GPS発振器2」では、GPSのモジュールを使って10MHzを出力させました。この安定した出力を使って、GPSDOを制御するのが目的です。

この時にも少々書いたのですが、上手く使えなかったGPSモジュールがありました。そこで心配になり、専用の試験器を作ってみました。従って、内容的には第13回とほとんど変わりません。変えたのは、写真1のように作製し、コネクタでGPSモジュールを接続するようにしました。これで交換が容易ですので、確認試験が簡単にできます。実際に何台かを試してみました。


写真1 このように作製したGPSモジュールの専用試験器

実験

1PPSの出力を10MHzに変更できるGPSのモジュールは、何種類かあります。写真2はaitendoで購入したものです。1PPSが端子になく、LEDの点滅を前提にしているようです。LEDのところにハンダ付けして出力を取り出し、10MHzに設定を変えて使用します。数年前に購入したものは問題ありませんでしたが、最近入手したものが上手く使えませんでした。


写真2 1PPS出力は無くLEDから取るタイプ(NEO6M-ANT-4P)

写真3はaitendoで数年前に購入したもので、週刊BEACONのNo.200で問題無く使っています。最近の製品のチェックはしていません。アンテナが付いていますが、そのままSMAコネクタに外部アンテナを接続する事ができるようです。アンテナの切り替えの操作はしていませんが、特に問題は無さそうです。写真では見にくいのですが、PPSと表示された端子が1PPSの出力です。


写真3 コネクタから1PPSを出力するタイプ(NEO6M5PSMA-U)

写真4は秋月電子で購入したものです。アンテナ単体に見えますが、この中にGPSのモジュールが入っています。左側のコネクタは私が付けたもので、購入時には何も付いていません。1PPSの端子もこの中にあります。


写真4 アンテナとモジュールが一体化したタイプ(GT-902PMGG)

1PPSの出力のモジュールは他にもありますが、10MHzに変更できないと意味がありません。結果的に、いずれもu-blox社のGPSモジュールとなっています。このようなものを容易に試験するためには、コネクタを使用するのが一番です。そこで写真5のように基本的な実験を行い、手持ちのモジュールが正常に使える事を確認しました。このようなバラックでは、同じ実験を繰り返して行うのが容易ではありません。そこで基板に作り直す事にしました。


写真5 このようにバラックで実験

回路

回路は図1のようにしました。基本的には第13回と同じです。回路ではなく構造を少々変えて、様々なモジュールが試せるように工夫しました。10MHz出力に変更する1PPSの端子には、0.01μFが2つ入るようになってしまいました。後述しますが、ここにコイルを入れていた名残です。どちらかを省くのが賢明です。


図1 基本的には第13回と同じ回路となった

困るのが1PPS出力の接続です。1PPSつまり1秒のパルスを、パソコンから専用のソフトで10MHzに設定変更します。しかし、コネクタ端子に出ているものと、LEDを点灯させるだけのタイプがあります。コネクタ端子に出ているものは簡単に接続ができます。GPSモジュール側のコネクタに異なるものがあっても、その度に専用コネクタを作れば良いのです。実際に前述の写真2写真3は本数が異なりますが、接続も異なる事が解ります。

LEDを点灯させるタイプには、簡単に対応する方法はありません。接続にはチップ部品に直接ハンダ付けする必要があります。まあ、本来の目的が点灯ですので文句は言えません。そこで、このタイプのコネクタを写真6のように作製しました。その都度ハンダ付けをする必要があります。しかし、専用のコネクタを作っておけば、ハンダ付け用のワイヤーも出しておけます。これは特に難しい作業ではありません。コネクタを接続して、一か所だけハンダ付けして終わりです。写真6は紫色のワイヤーでLEDにハンダ付けしている様子が解ります。


写真6 一か所だけLEDに直接ハンダ付けする

作製

図2のような実装図を作製してからハンダ付けを行いました。基板は秋月電子のシールドメッシュ付きのCタイプを使用しています。ハンダ面が図3になります。


図2 実装図 緑の点はシールドメッシュにアースする位置


図3 ハンダ面

実装図ではトランジスタの入力付近にスペースが余っていますが、これは10MHzに同調するコイルを入れていたためです。ここにコイルがあると、レベルが低くなったため使いませんでした。そのため、写真7のようにコイルが中央に残ってしまいました。実験では入れなかったものを入れて失敗したという、一番下手な例でしょう。そのため前述のように、0.01μFが余分に入ってしまいました。裏側のハンダ面は写真8のようになりました。後から考えてみると、同調の容量が足りなかったのかもしれません。


写真7 ハンダ付けした様子 中央に使わないコイルが残った


写真8 裏面のハンダの様子

USB-TTL変換基板は写真9のように、メッキ線で親基板上にハンダ付けして固定しました。これはネジ止めをすると余分にスペースを使うためです。更に親基板はアクリル板にネジ止めしました。動作的には変わりませんが、机上に残ったリード線等によるショートを避けるためでもあります。アクリル板を付けただけで使いやすくなります。


写真9 USB-TTL変換基板メッキ線で固定し、アクリル板にネジ止め

試験結果

これで各GPSモジュールを試してみました。もちろんGPSDOの入力に使用して試す事も可能です。元々はGPSDOの入力に使用するために作ったのですので、そのように使うのが最終目的です。ただ、安定するまで時間がかかりますので図4のように接続し、GPSDOの出力と比較しました。これで安定した出力が得られるのであれば、GPSDOの入力にも使える事になります。これらの多くは過去に週刊BEACONで紹介したものの利用です。オシロはXYのモードにして、円の回転状況で確認をします。これでGPSモジュールを交換した場合、ロックするまでは回転します。しばらくして10MHzにロックすると同時に、円の回転がストップします。


図4 このように接続して動作確認を行った

写真10は秋月電子のモジュールで、1PPS出力がコネクタにあるタイプです。GPSのアンテナ付きのタイプですので、試験の時は窓際に置いて試しました。図4の外部アンテナが使えませんが、上手く動作しました。アメリカの衛星の他にロシアと日本の衛星も補足できました。しかし補足数は多いのですが、10MHzの安定度としては特に変わらないようです。ケーブルが長いためか出力に乗るノイズや揺らぎが微妙に多いように感じます。まあ、どう見ても10MHzを出力にして使うようなケーブルには思えません。私の家では屋外にGPSのアンテナを置いていますので、実はこのタイプは少々使い難いのです。


写真10 秋月電子で入手したモジュールを試験

写真11はaitendoで入手したモジュールを試している様子です。これは以前入手したもので、正常に動作確認ができました。サンプルは1個だけですが、全く問題はありませんでした。


写真11 aitendoで入手したモジュールを試験

写真12はaitendoで最近入手したモジュールで試しているところで、10MHzが少々不安定でした。数秒おきにジャンプするような感じになります。また、円周上から外側や内側にズレる事が良くあります。


写真12 問題のあったモジュールを試験

次に、写真12の本試験器の出力をオシロで時間軸の波形を観測してみたところ、写真13写真14のようになりました。なぜかレベルが瞬間的に上がる場合と、下がる場合があるようです。この瞬間に周波数が流れます。

ちなみにこの写真は苦労しました。デジタルオシロではサンプリングが勝手に少なくなり過ぎて測れません。アナログオシロで見ていると頻繁に起こるのですが、数秒に1回程度です。写した写真は20ms幅ですので、これをカメラで写すのは容易ではありません。デジタルカメラのシャッタースピードを0.3秒にして、その間に1ショットを掃引するようにしました。タイミングのミスもありますが、2000枚程度写して数枚程度しか写せませんでした。実際に見ていると写真13よりも深い谷ができる事もありました。しかし、昔々のフィルムカメラでは絶対に行わなかった写真撮影です。苦労したのですがデジタルオシロの使い方に慣れていないだけかもしれません。


写真13 XYではなく時間軸で出力を見るとレベル低下の瞬間がある


写真14 逆にレベルが上昇する事もある

モジュール内部はブラックボックスですので、内部の動作は解りません。試しに電源電圧を測ってみましたが、3.3V一定で不安定な変化はありませんでした。また、LEDへの配線をカットしてみました。電流が流れなくなるので変化を期待しましたが、全く同じでした。気が付いたのは、POWERをONしてGPSモジュールがロックするまでは変動しません。ロックするとレベルが下がり、変動を始めるようです。

使用感

GPSモジュールの動作の状況を確認する事ができました。簡単に10MHzの出力を取り出す事ができますので、使おうとするGPSモジュールが思ったように動作するのかの確認が簡単にできます。もちろん第13回のGPS発振器2のように、このまま出力をGPSDOに接続する事も可能です。

問題の動作について、販売店であるaitendoに質問をしました。返金を依頼したのではなく、調査を依頼したつもりでした。このような場合は、一般的に購入から1週間以内にクレームを申告する必要があります。しかし、このようなケースでは、動作不良に気が付くまでに数か月はかかるでしょう。とても1週間以内は無理ですが、ルールはルールですので「メーカ側に情報はないか」と質問しました。その結果、明確な調査は無かったようでしたが、一応返品返金は可能のようでした。次回からは1週間以内でクレームができますが、そのような目的で作ったのではありません。ちなみに、このモジュール2個は返品せずに、更に動作を確認してみようと思っています。

しかし考えてみると、このモジュールはLEDを点灯させるように作られています。10MHzの出力が設定できるとしても、回路が対応していない可能性もあります。ちなみに100kHzに設定しても安定しないようです。モジュール内のPLLが数秒ごとにシャックリをしている感じです。GPSDOに使う場合は、端子に1PPS出力があるものを使うべきなのかもしれません。「10MHzが正常に出力できない」というのは、使い方に問題があるのかもしれません。

取り敢えず、このような工作に使うGPSモジュールは、予めチェックが可能となりました。次回作は安心して作る事ができます。(いつの事か?)

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