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FBのトレビア

第四十三回 電子ホタルの製作とその解析
三種類の電子ホタルの紹介

2024年1月5日掲載


Dr. FB

蛍の季節でもないのですが、「電子ホタル」を製作します。といっても製作がメインではなく、蛍の発光はどのようにすればできるかを探るのがメインです。その過程で実験した回路を組み立てれば「電子ホタル」ができるといった取り組みです。

「電子ホタル」をインターネットで検索すると思いのほか多くの記事がヒットします。この記事が紹介されるのにはそれなりの理由があるようです。今回は、その電子ホタルに焦点を当て、回路の解析と実験を行います。

電子ホタル

電子ホタルとはLEDを使い、そのLEDの発光を本物の蛍のように「ほわ~」と点灯、「すう~」と消灯となるような発光状態を、電子部品を使って行うものです。

LEDの点灯あるいは消灯は、図1(左図)に示す回路で簡単に実現できます。これではLEDのオンオフだけですから蛍のように「ほわ~」と点灯し「すう~」と消灯するような発光にはなりません。回路に何か工夫が必要です。

LEDを点灯させるにはLEDのスペックに記載された既定の電流を流す必要があります。詳しくはスペックシートを見る必要がありますが、汎用のLEDでは10mA程度の電流を流すと点灯します。


図1 LEDの点灯のオンオフ回路

図1(右図)は、その計算方法です。この回路には下の式が成り立ちます。

V = I・R + Vf

Vfとは発光ダイオードの順方向電圧と呼ばれるもので、これもスペックシートに記載されています。通常は0.6V程度として計算しても大きな誤差にはならないと思います。上式に回路に印加する電圧Vと発光ダイオードの順方向電圧Vf、それに回路に流す電流Iの10mAを代入するとRを求めることができます。

電子ホタルを実現する4つの方法

まずは、LEDの点灯方法です。ついたり消えたりを自動的にする方法を探ります。ネットに掲載されている電子ホタルの回路は下記の4つの方法に大別できるように思います。下記(1)~(3)までは部品を集めて作る電子工作の範疇です。そのうち(2)と(3)はすぐに思いつく回路です。今回の説明では(1)~(3)の方法で実験を行ってみます。

(4)の方法も電子部品は必要ですが、メインとなる装置は2005年にイタリアで開発され、今や世界中に普及しているArduino(アルデュイーノ)です。Arduinoとは、入出力ポートや電源などが搭載されたコンパクトなマイコンボードです。これでLEDの点灯を行うにはちょっとしたプログラミングが必要になります。今回はこの(4)の方法は除外します。

(1) トランジスター2個で構成した発振回路を使う方法 (今回はキットを使用)
(2) 非安定マルチバイブレーターを使う方法
(3) タイマー用IC、NE555を使う方法
(4) マイコンボード、Arduinoを使う方法

トランジスター2個で構成した発振回路を使う方法

正直なところこの方法は思いつきませんでした。この実験には市販のキットを使いました。キットの回路はNPNトランジスターとPNPトランジスター2個で構成した発振回路です。発振回路というと10MHzや20MHzといった高周波の発振回路を思い浮かべますが、要は出力段の信号の一部を入力段に戻す回路のことです。キットの中に同梱されている取扱説明書には回路図が印刷されています。回路図は簡単そうに見えますが、実はこの回路でLEDを点滅させる思いつきは一番難しいように思います。

「電子ホタル」でネットサーチをしているときにこの回路を使った電子ホタルキットがデジハムサポート(DigiHam)で販売されていることを知り、即購入しました。図2がそのキットに含まれている内容物です。


図2 デジハムサポートから送られてきた電子ホタルのキット

キットの製作はいたって簡単です(図3)。ビニール袋の中には、パーツと基板が入っています。回路図が読めなくても取扱説明書に印刷されている出来上がりの写真を見ながら部品を挿入しても30分もあれば完成します。回路図を見ると自分で作れそうですが、完ぺきな基板が同梱されており、それに部品を集める手間暇を考えるとキットの方が安くつきそうです。


図3 取扱説明書に記載されている電子ホタルの回路図と完成基板

実際に部品を基板に挿入して完成させた「電子ホタル」が図4です。辺りを暗くするか、取り付けた部品のCdSに黒色のチューブを被せることで動作の確認を行うことができます。


図4 完成したキットの電子ホタル(CdSに黒のチューブを被せている)

・点滅の原理
図3の回路図を見てください。Q2はNPNトランジスターです。ベースに電流が流れるとQ2はオンになりコレクターからエミッターに電流が流れるようになります。Q2のオンオフに関わるキーパーツがCdS(R1)です。CdSは明るいときにはリード線両端の抵抗値が低く、暗いときは抵抗値が極端に高くなります。この特性を利用して、周りが暗くなると電子ホタルのLEDが点滅する仕組みになっています。

参考ですが、キットに同梱されていたCdSの抵抗値を測定すると太陽光の下では100Ω近くまで低下しました。反対に暗闇の中では、数MΩにもなりました。

さて周囲が明るいときにはR1は低抵抗値となることからQ2のベース電圧はGNDに対してきわめて低くなることから、Q2のべース、エミッター間には電流は流れずQ2はオフ状態となります。つまりコレクターからエミッターには電流は流れません。したがってQ1もエミッターからベースに電流は流れずオフ状態です。このためDS1(LED)にも電流が流れないため、LEDは点灯しません。

周囲が暗くなると、CdSの抵抗値が極めて高くなり、Q2のベースにはR2を通して電流が流れるようになります。Q2はオンとなりコレクターからエミッターに電流が流れようとしてQ1のエミッターからベースにも電流が流れQ1もオンとなります。その電流がR4、DS1を通して流れるためLEDが発光する仕組みです。

同時にQ1のエミッターからコレクターに流れた電流がC2にも流れ込みC2を充電します。C2の充電によってC2の両端の電圧が大きくなるとQ2のベースの電位が下がり、Q2のベースに電流が流れ込まなくなります。つまりQ1、Q2がオフの状態となりLEDが消えます。

Q1、Q2がオフ状態となってもC2は充電された状態となっており、この充電された電荷がLEDを通して徐々に放電されます。放電されると最初の電源オン時の状態に戻りQ1、Q2がオン状態となりLEDは再び点灯します。この繰り返しがLEDの点滅となります。回路の定数を変更することで点滅の時間を変更することができると思います。

非安定マルチバイブレーターを使う方法

非安定マルチバイブレーター(Unstable Multivibrator)とは、出力端子がL(Low)とH(High)を周期的にその状態を切り替える電気回路です。クロック信号を作るようなときに使います。ここでは、その非安定マルチバイブレーターをトランジスター2個で作りLEDを点滅させます。

また、蛍の発光に近い「ほわー」と点灯、「すうー」と消灯の状態をそのマルチバイブレーターの出力に、さらに1個のトランジスターを組み合わせて実現します。その実験回路を図5に示します。R5、C3、R6、Q3で構成した回路がそれです。R5とC3の時定数を変更すると点灯、消灯の時間を調整することができます。


図5 「ほわ~」と点灯、「すう~」と消灯する電子ホタルの回路とその実験基板

・非安定マルチバイブレーターの原理
図6は、非安定マルチバイブレーターの原理図です。回路中に2個のトランジスターが向かい合って描かれているような回路があればそれは間違いなくそれはマルチバイブレーターと呼ばれる回路です。


図6 非安定マルチバイブレーターの原理図

マルチバイブレーターには下記3種類の動作モードがあります。
1. 両安定モード (Bistable mode)
2. 単安定モード (Monostable mode)
3. 非安定(無安定)モード (Astable mode)

今回電子ホタルに使用するのは、非安定マルチバイブレーターと呼ばれるもので、電源を接続すると次に電源を外すまでLとHの方形波が図6で示すA点あるいはB点から出力されるものです。その動作原理を簡単に説明します(図7)。


図7非安定マルチバイブレーターの動作原理を表す電流の流れ

電源Vを回路に接続すると①か④の電流の流れを生じます。ここでは①の流れがまず生じQ1がオンになる状態から説明します。

1. 電源を接続すると電流①はR3を通ってQ1のべースに流れ込みQ1がオンになる。
2. Q1がオン状態であるためA点はGNDレベルとなり、C1の電荷②は放電される。
3. そのためQ2のベースには電流は流れ込まず、Q2はオフの状態となる。
4. Q2がオフの状態でB点はH。
5. C2にはR4を通して電流③が流れ込み充電が開始される。
6. C1の放電が終了すると電流④はR2を通ってQ2のベースに流れ込みます。
7. ここでQ2がオン状態となる。
8. Q2がオンの状態でC2は放電され、Q1はオフとなる。
9. Q1がオフのためC1の充電が開始される。
10. C1の充電が終了するとまた電流①はR3を通してQ1のベースに流れ込む。
11. またQ1はオンとなる。

上記の動作の繰り返しでQ1、Q2がオンオフを繰り返し、Q1、Q2のコレクターA点、B点にはH、Lが連続で出力されます。今回の電子ホタルでは、ゆっくり点灯させる必要のあることから、B点からその出力を図5で示すR5、C3で取り出し、その電圧の過渡現象を利用して「ほわ~」と点灯、「すう~」と消灯を実現しています。

タイマーIC NE555を使う方法

LEDをチカチカさせる動作を行う回路で最初に思い浮かぶのは、このNE555のタイマーICを使う方法ではないでしょうか。

NE555は、8ピンのICで一般的にはタイマーICと呼ばれています。タイマーとしての用途のほかパルスの発生や発振器の用途として使われることがあります。このICも前述のマルチバイブレーターのように下記3つの動作モードを持っています。その3つのモードの中からNE555を発振回路として動作させLEDをチカチカと点滅させます。

今回は電子ホタルがメインですから、LEDの点滅だけではなく、蛍のような自然な発光を実現するためにNE555の出力に図5でも使った積分回路を付加しトランジスターでLEDをドライブしています。図8にその回路と実験基板を示します。


図8 タイマーIC NE555を使った電子ホタルの回路と実験基板

・動作原理
NE555を発振器として使用する場合の周波数やデューティーサイクルは図9に示した方法で決めることができます。


図9 NE555の基本となる周波数等の求め方

図8に示した実験回路では、出力周波数の決め手となる各部品の定数を下記に示します。
R1 = 10kΩ
R2+R3 = 470kΩ~970kΩ
C1 = 10µF

これらの定数に基づきTHとTLを求めると下記のようになります。
TH = 3.0~6.2秒
TL = 3.2~6.7秒

NE555の出力端子(3番ピン)がHのときに図8で示したR4とC3の積分回路で徐々に電圧を上げていき、それに応じてLEDが「ほわ~」と点灯するようになります。図8に示したR3を調整することで、LEDの点灯あるいは消灯時間を調整できます。


図10 それぞれの点灯
左: タイマーIC、中:非安定マルチバイブレーター、右:トランジスター2個(キット)

点滅の様子は、こちらをクリックしてご覧ください。

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