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FBのトレビア

第二十六回 MOSFETを使ってみよう
MOSFETでスイッチングを理解する

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Dr. FB

電子回路のスイッチングにMOSFETが多く使われています。MOSFETは「モスエフイティ」と呼ぶ方もいますが、「モスフェット」と英語読みされている方もおられます。MOSFETは、メカニカルリレーによるスイッチングのように接点のON/OFFのドライブに大きな電流を流すこともなく、ほとんど電圧のあるなしだけでON/OFFを制御することができます。ここではMOSFETの大きな特長であるスイッチング動作の説明をします。

MOSFETとは

MOSFETとは、トランジスタの一種です。そのトランジスタの中でも大別するとFETの仲間です。FETは日本語で電界効果トランジスタと呼び、英語ではField Effect Transistorと呼ぶことはご存じのとおりです。FETの前に付いているMOSは、Metal Oxide Semiconductorの略です。これはFETの構造に由来する名称ですが半導体の構造はDr.FBはよく分かりませんのでスキップします。

FETですから通常のバイポーラトランジスタにあるようにベース電流の変化でコレクタ電流を制御するような電流駆動素子ではありません。ドレイン・ソース間の電流はゲート・ソース間電圧(VGS)で制御しますので電圧駆動素子といえます。電極には電圧を掛けますが、そこに電流が流れる構造となっていませんので省エネ回路に大いに役立ちます。

MOSFETは構造上、図1に示しましたように二種類のFETがあります。一つはNチャネルMOSFET、もう一つがPチャネルMOSFETです。このMOSFETの中にも動作上、高周波増幅でよく使われるデプレッション型とスイッチングに使われるエンハンスメント型があります。この記事では、後者のエンハンスメント型のMOSFETに限定して説明をしています。

MOSFETのゲート(G)・ソース(S)間電圧(VGS)の印加の仕方でドレイン・ソース間の抵抗値(RDS)が変化します。今号のShort BreakではPチャネルMOSFETを使った電子工作の記事が掲載されています。これは、ゲートに印加する電圧はソースに対して(+)の電圧、あるいは同電位とすることで、ドレイン・ソース間がOFFとなることを利用したものです。


図1 MOSFETのシンボルと各電極の名称

MOSFETの基本動作

MOSFETのスイッチングの基本動作を理解すれば、これまでメカニカルリレーでON/OFFさせていた電子回路もMOSFETでON/OFFさせることができ、回路の電子化はもとより、省エネ化も図ることができます。

(1) ゲート(G)・ソース(S)間電圧 vs ドレイン電流
NチャネルMOSFETのG-S間が0Vのとき、ドレイン電流(ID)は流れません。G-S間の電圧(VGS)を徐々に上昇させるとドレイン(D)・ソース(S)間の抵抗値は下がり始め、ドレイン電流が流れ始めます。この抵抗値を十分に下げON状態とするには、VGSを十分上げる必要があります。メーカーのデータシートでしきい値電圧(VTH)以上にすることで、RDSが低下し、スイッチング動作として機能します。


図2 Nチャネル、PチャネルMOSFETのON/OFFの対するゲート・ソース間電圧

(2) 切り替わりに要する時間
メカニカルリレーによるスイッチングは、トランジスタで図3のようにドライブしてON/OFF制御を行います。ドライブを行うベースに電圧が加わるとベース電流(IB)が流れ、スイッチングとして使われているトランジスタがONします。トランジスタがONするとリレーの駆動コイルに電流が流れ、それが電磁石となりリレーの接点がカチンと音を立てて③の接点につながります。このとき、接点が機械的に切り替わりますのでそこには物理的な時間の遅延を生じることになります。小型メカニカルリレーでは10ms以下ですが、大型リレーでは数10msほど要することになるようです。


図3 トランジスタによるリレーの駆動回路

(株)ルネサステクノロジが公表している2SJ555のデータシートによると、そのターン・オン・オフ遅延時間は、nsオーダーです。つまり10の-9乗ですからメカニカルリレーのmsオーダーとは比べものにならないことが分かります。

(3) ドレイン・ソース間のオン抵抗(RDS)
上記で述べたデータシートには、MOSFETがスイッチング機能として動作しているときのオン抵抗の値が記されています。半導体がスイッチング機能として動作しているのであれば、そのリレーの接点の代わりとなるドレイン・ソース間のオン抵抗値(RDS)は非常に重要です。データシートには、VGS=-10V、ID=-30Aのとき、RDSは0.017Ωと記されています。0.017Ωとはかなり低い値です。仮に100Wの無線機を接続したときに流れる20Aもの電流をこのMOSFETでスイッチングしたとしますと、RDSで消費される電力は、P=I2・Rより、P=20x20x0.017=6.8Wとなります。小さな放熱板は必要でしょうが、ファンで冷却するほどの熱量ではないと思います。

(4) VGS対RDSの具体例
図4は、PチャネルMOSFETをゲート電圧でON/OFFする原理図です。SWをONの状態つまり、スイッチを閉じるとゲートはスイッチを通してグランドに接続されますから、ゲート電圧はゼロになります。このことでソース・ドレイン間抵抗(RDS)は、低くなり導通に近い状態となります。逆に、SWをOFFの状態にするとゲートには、Rを通してソースと同じ電圧が印加されます。PチャネルMOSFETは、OFFとなりソース・ドレイン間には電流は流れなくなります。


図4 PチャネルMOSFETを使った電源スイッチの原理図

図4のSWをトランジスタに置き換えて製作した過電圧防止回路が今号のShort Breakに掲載されています。

CL

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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