Short Break
2024年2月1日掲載
デジハムサポートの店内に展示されているパラボラアンテナ
筆者は1970年の大阪万博の年にFDAM-3で開局し、それ以来HFからVHFそしてUHFと世の中のアマチュア無線の変化に沿って運用するバンドも変わりました。当時電電公社(現NTT)では、中継地を結ぶ通信にはマイクロ波が使われていました。これはプロの世界の技術で、多くのアマチュア無線家にはほど遠い技術でした。それでも当時すでにSHF帯を楽しんでおられるすごいアマチュア無線家はおられ、CQ ham radioには時々それらの記事が掲載されていたのを覚えています。
昨年、アイコムからIC-905が発売されました。このトランシーバーは、従来から人気の144MHz、430MHz、1200MHzに加え、2400MHz、5600MHz、そしてなんと10GHzまで運用できる画期的なトランシーバーなのです。技術の流れを掴みたいこともあり、購入するかどうかは別にしてメーカーのHPや取扱説明書を見てどんなものかを調べてみました。
アイコムのホームページに掲載の写真(図1)を見て「ちょっと普通のトランシーバーと違うぞ」と感じました。
図1 IC-905(アイコムのホームページより引用)
写真ではIC-705と同じような感じですが、本体右上に放熱器のようなユニットが写っています。IC-905の取扱説明書によるとこの放熱器のようなものをRFユニットと呼んでおり、文字通り高周波の送受信回路が入っているユニットだそうです。そうなると図1のディスプレイが付いている本体と呼んだこのユニットは操作部であり、この部分にはIC-705のようにRFの送受信回路は入っていないことになります。
送受信のRF部は、その放熱器のようなRFユニットに組み込まれており、これを屋外のアンテナ直下に取付ける仕様になっています。そのためアンテナで受信した高周波信号は一旦このRFユニットで高周波増幅、検波まで行い、その信号をシャックまで同軸ケーブルではなくLANケーブルで送っています。SHF帯ほどの高い周波数になるとその信号をアンテナからシャックまで同軸ケーブルで引き回すと特にSHF帯は高い周波数であるため同軸ケーブルでの大きなロスを生じてしまいます。LANケーブルでの信号伝送はこれを防ぐためでよく考えられています。図2がその全体の構成図です。
図2 IC-905の設置概略図
取扱説明書やアイコムのホームページを読むことでIC-905の概要がだいたい分かりましたが、気になるのは各ユニット間の接続です。たくさんのコネクターが取り付けられており接続は複雑そうです。
取扱説明書に掲載されているイラスト(図2右)をよく見るとRFユニットには四つのアンテナコネクターが取り付けられています。それを拡大したものが図3のイラストです。➊はGPSの信号を受信するGPSアンテナのコネクターです。➋は144/430/1200MHzの3バンドが一つとなったコネクターです。➌は2400MHz用、➍は5600MHz用となっています。
図3 RFユニットに取付けられている四つのアンテナコネクター(IC-905の取扱説明書より引用)
ここまでは理解できますが、問題は10GHzです。IC-905は10GHzも運用できることが売りですが、そのアンテナを取付ける端子がRFユニットには見当たりません。10GHzのユニットCX-10Gの取扱説明書を見て分かりました。10GHzの信号は、2400MHzの信号を利用して作られていることが分かりました。そのため10GHzのユニットの名称がトランスバーターとなっているのです。したがって10GHzのCX-10Gのユニットは、RFユニットの2400MHz用のコネクターと接続します。
言葉で説明するより、これを詳しく説明した10GHzのトランスバーターの取扱説明書(図4)を見るとよく分かります。
図4 各ユニットの接続(アイコム CX-10Gの取扱説明書より引用)
10GHzを運用するにはIC-905XGを最初から購入するか、標準のIC-905を購入したあとオプションの10GHzトランスバーター(CX-10G)を別途購入する必要があります。全てのユニット接続を説明したものが図4です。この説明でも分かりますができれば実体配線図のようなサポートが欲しいところです。
先日、電子部品の調達に大阪の日本橋に行ったついでにデジハムサポートに寄ったところ、痒いところに手が届くとはこういうことをいうのかと思う展示がありました。上の説明で取扱説明書のイラストで示した接続例が正に実体配線図のようにお店の中に展示されていました。
図5 10GHzパラボラアンテナAH-109PBの展示
現物のユニットやアンテナに各ケーブルが接続されている展示ですので配線もよくわかります。アンテナの取付け方法や必要な取付け金具も分かるため非常に参考になります。見ても覚えられないため、お店の人の許可をいただきユニット間の接続の写真をバッチリ撮ってきました。
参考ですが、RFユニットと10GHzのトランスバーターとの接続に使われている青色の同軸ケーブルは人によって取付ける方法も異なるためIC-905のセットには同梱されていません。自分で準備する必要があります。ケーブルの両端にはSMA-Pのコネクターが必要ですが、5D-2Vに取付けるM型オスのコネクターのように簡単にハンダ付けで完成といったような感じではありません。ケーブルの製作には圧着の工具等も必要になることから、ひょっとして既製品を購入する方が、信頼性が高く、返って安くつくかも知れません。お店ではこの同軸ケーブルについても丁寧にアドバイスをいただけました。
図6 まるで実体配線図のような各ユニット間の接続展示
余談ですが、お店にはD-STARはもとより、最近はやりのFT8などのデジタル通信にも長ける店員さんがおられ、その人にアドバイスをもらいながら製品やオプションを選ぶこともできそうです。さらに語学に堪能で、ちょっとアマチュア無線のことも分かるYLの店員さんもおられますので外国人の方々には安心です。IC-905用のSHF帯用の無指向性アンテナやパラボラアンテナを実体配線図のような感じで展示されている珍しいお店です。
CL
<協力>
写真撮影: デジハムサポート
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