ラジオ少年
2024年3月1日掲載
完成したLED表示簡易電界強度計
今号では、その1、その2で実験した回路をユニバーサル基板に組み込み、それらをアルミケースに入れて最終段階の完成まで一気に進めます。これまで行った実験で得た回路の全体図を図1に示します。その1、その2で示した回路と若干変更を加えた部分があります。
(1)検波回路
J1は受信用のアンテナを接続するコネクターです。単に信号を受信するだけのものですからどのようなコネクターでもOKです。ここではBNCコネクターを使いました。D1、D2はゲルマニウムダイオード(1N60)です。このゲルマニウムダイオードを用いることが感度をよくするポイントです。ダイオードの接合電位差あるいは順方向電圧降下(VF)とよばれる電圧がシリコンダイオードは約0.7Vで、このゲルマニウムダイオードでは約0.2Vと低いため、シリコンダイオードを用いるより感度アップが図れます。
(2)検波信号の増幅回路
IC1(LM358)は汎用のオペアンプです。このICで非反転増幅器を構成し3番ピンに入力された微弱な信号(VIN)を大きく増幅します。非反転増幅回路の入力(VIN)と出力(VOUT)の関係は下の式で表すことができます。
回路に使用した抵抗の定数を上式に代入し( )内の増幅度(AV)を計算してみます。VR1は1MΩの可変抵抗器です。VR1が1MΩの時はAV≒1000倍、最低の0Ωの時はAV=2倍となります。増幅回路で入力信号が1000倍にも増幅されると仮にVIN=1VであったとしてもVOUTは1000倍の1000Vにもなると思ってしまいますが、実際は電源電圧以上の出力は得られません。VR1は増幅回路の増幅度を可変する意味で外付け部品としています。
(3)メーター表示回路
LED表示の電界強度計とする場合は針式のメーターは特に必要ありません。今回は入力信号の細かな動きも観測したいとの思いもあり取付けました。メーターの切り替えは、6Pのスライドスイッチを使っています。針式のメーターは、最大値1mAの電流計を使いました。信号の強弱を知るだけですから、高価な電流計は不要です。回路図中のR5およびVR2の定数は使用する電流計によって異なりますが、1mAの電流計であれば回路図に示した定数でほぼ問題なしと思います。
(4)LED表示回路
IC2で構成される回路は本記事その1でも説明したLEDレベルドライバー(LM3914)を使ったLED表示回路です。LM3914のデーターシートには注意事項としてLEDとIC間の結線が6インチ(約15cm)以上となる場合はC4を取付ける必要があると記されています。本製作ではそこまで長くはなりませんが、念のため10µFの電解コンデンサーを取付けました。
信号の強さは4種類の色のLEDで表示します。信号の弱い順に青➝緑➝黄➝赤としました。IC2の5番ピンに入力される信号の強さでDS1~DS10のLEDが順次点灯しますが、入力信号のレベルとLEDの点灯個数の調整用にVR3を3kΩの可変抵抗としました。最後のまとめの項目で説明しますが、屋外の明るい環境では緑、黄、赤のLEDの輝度はそれほど高くないため、輝度の高い青色LEDの使用をお勧めします。
図2 LED表示基板
SW2をメーター側に切り換えた時、IC2の5番ピンは何ら入力信号のない浮いた状態となることから、LED表示が誤動作することがあります。このため入力ラインにプルダウン抵抗(R4)を取付けました。
(5)電源回路
フィールドでも使用できるように電池で動作するようにしています。本製作には単4電池×4本で6Vを得ています。電池の逆挿入はないと思いますが、一応保護ダイオード(D3)を挿入しています。従って、IC1、IC2に印加される電圧は、6Vより約0.7V低い5.3Vとなります。
150×100×40mmのアルミケースに組み込みます。図3が加工したシャーシーに組み込んだ外付け部品です。
図3 加工したアルミシャーシーに外付け部品を組み込んだ状態
図1に示した回路を表示回路とメイン回路の2つに分けて製作し、それぞれの基板を図3に示したケースに組み込んだものが図4です。
図4 2つの基板と周辺部品を組み込んだ内部の構造
(1)VR2の調整
針式メーターの調整を行います。入力信号が非常に大きい状態を作ります。この状態ではIC1の1番ピンには4~5Vの信号が出力されます。この4~5Vの電圧で1mAの電流計の指示をフルスケールとするには電流計と直列に約5kΩの抵抗を挿入すればよいことが分かります。そこでR5=4.7kΩ、VR2には3kΩの可変抵抗としてフルスケールの微調整をVR2で行います。
(2)VR3の調整
次に入力信号の変化量とLEDの点灯個数を裏付ける可変抵抗器(VR3)の調整を行います。調整はVR2の時と同様、入力信号が非常に大きい状態を作ります。このときVR3を回してLEDが最大の10個全部が点灯するようにします。
図5 各部品の取り付け位置
430MHz帯になると検波用ダイオード(D1、D2)の特性が高い周波数帯に追い付かず、メーター感度は著しく低下すると思っていましたが、本機はHF帯からUHF帯まで良好に動作することが分かりました。
図6 完成したLED表示簡易電界強度計のフロントパネル
感度調整ボリューム(SENS.)(VR1)を右いっぱいに回しメーターの感度最大にします。送信側のRF出力を5Wにすると144MHz帯では、送信側と受信側が30mほど離れてもLEDの点灯を確認することができました。この時の受信アンテナは、図6の写真に示したように最大長55cmのロッドアンテナでした。送信側もテストということもあり、ハンディー機のフレキシブルアンテナで、どちらもダイポールと比較したときの利得はマイナスゲインでした。送信側を当初の目的の八木アンテナ等の指向性アンテナの調整ということであればアンテナのゲインもあるため、30m以上の距離でも実用になると思います。
実使用して分かったことですが、屋外の明るいところでは緑、黄、赤のLEDの点灯は周囲の明るさに負けてしまい、30m程度離れたところからは電波の強弱の判断は付き難く、この色のLEDの使用は避けた方がよさそうです。使用するLEDは、輝度の高い青色LEDか、サイズの大きいLEDの採用をお勧めします。
動作表示は、ここをクリックして見ることができます。
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