FBのトレビア
2024年4月1日掲載
Dr. FB
図1は、デジタル機器の概念図です。単にマイクの音を増幅するだけならDSP(Digital Signal Processor)で信号を処理する必要はありませんが、入力された音を加工して出力するようなときはDSP処理は有効的です。マイクから入ったAF信号をA/D(Analog/Digital)変換回路でデジタルにし、その信号をDSP内で必要に応じた処理を行ったのち、D/A変換回路でアナログ信号にもどします。多くのデジタル機器は、このような一連の流れで信号が処理されています。今回は、4ビットのデジタル信号が簡単な抵抗の組み合わせでアナログ信号に変換できるD/A変換回路を実験で確かめます。
図1 デジタル機器の概念図
複数の抵抗を梯子(はしご)の形に組み合わせて回路に応用することがあります。この抵抗の組み合わせは、はしごの形に似ていることからラダー抵抗と呼ばれており、デジタルICの各ビットから出力される"0"、"1"の信号を振幅のレベルに変換するD/A変換回路に使われます。
図2 ラダー抵抗回路の一例
図2で示したラダー抵抗を変形し、図3のようにR1~R8の形で4ビットのカウンター出力QA~QDに接続します。QA~QDの4ビットのデジタル信号に対応した信号が電圧の変化として出力に現れます。
図3 ラダー抵抗を使った4ビットD/A変換回路
このラダー抵抗に使用する抵抗値には少しルールがあります。R1~R4、それにR8の抵抗値はR5~R7の2倍の抵抗値とします。例えばR5~R7をそれぞれ5kΩとした場合、R1~R4、それにR8はそれらの2倍の10kΩとなります。1:2の割合で抵抗値を決めます。1kΩと2kΩを選択してもOKです。10kΩと20kΩでもOKです。
前者は抵抗値が低いため、回路に流れる電流が大きくなります。反対に抵抗を大きくし過ぎると回路にノイズを伴った電流が流れると説明されている文献もあります。1:2の割合で抵抗値を決めることから図3に示したラダー抵抗のことをR-2Rラダー型と呼ぶこともあります。
図3で示したD/A変換回路に"1"の状態を示すLEDを追加して製作したものが図4(右)に示した基板です。QA~QDの各ビットの信号はスイッチのON/OFFで行います。ONのときはラダー抵抗に5Vが加わり、OFFのときはGNDレベルになります。これを0000~1111まで24通りの信号をラダー抵抗で作ったD/A変換回路に加え、その出力を電圧計で計測します 。
QA~QDの4ビットの信号入力に対して出力電圧をデジタルマルチメーターで測定した結果が図5に示した表です。そして出力電圧をプロットしたものが図5のグラフです。4ビットの数値の変化が電圧の変化になって表れていることが分かります。
図5 4ビットR-2Rラダー抵抗の入力信号vs出力電圧の対比
4ビットですから0000~1111までの24通りの表現が可能です。一番低い値が0000で、次が0001です。一番大きい値が1111となります。このデジタル信号が1アップするごとに出力電圧Voは約0.313Vずつアップしていく様子を図5のグラフから読み取ることができます。入出力特性は線形(リニア)のように見えますが、実際は図6に示したように階段のような出力となります。
今回は4ビットのD/A変換を試みましたが、これが8ビットとなると1段階ごとの出力電圧(Vo)の大きさは、下の計算で示すようにわずか0.0195Vとなり、4ビットと比較すると滑らかさが増すことになります。
図4では4ビットの入力をスイッチのON/OFFで行いました。スイッチの代わりに4ビットのアップカウンターのICを使うと、カウンターの出力は0000から始まり1111で終わり、次の瞬間また0000から始まり1111と順次同じ出力を繰り返すことになります。その結果、ラダー抵抗の出力には図6の信号が次から次と連続的に現れます。近似的には、下に示すようなのこぎり波の形をした信号となります。
図7 カウンターとD/A変換回路で実現できるのこぎり波
次回は、この現象をオシロスコープで確認します。
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