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【番外編】 例の百均ON AIRライトを改造しよう

JP3DOI 正木潤一

2024年4月15日掲載


百円ショップ『セリア』にて扱われている、インテリア小物のLEDライト。このシリーズの中に、ラジオ局などにある“ON AIR”と点灯するライトがあり、アマチュア無線家のあいだで話題になりました。このライトをリグの送信と連動してON/OFFするように改造した例がSNSに次々と投稿され、ON AIRライトの人気に拍車を掛けました。その仕組みとしては、送信波を検波して直接電源とする方法(無電源式)が多く、中にはトランジスタを使ったスイッチングを用いる方法(電源式)も見られました。

4月6日時点でも全国的に品薄になっていますが、先月何気なくセリアに寄ったときに1つ見つけ、さらに先日もう1つ入手しましたので、せっかくだから改造してみることにしました。IC-705で使う場合と、デュアルバンドハンディー機で使う2パターン作ってみました。なお、どちらも出来るだけ外観を維持したまま、簡単に出来る方法にしました。

「ON AIRライト」の概要

背面にLR44電池を2つ(別売り)入れてスイッチをONすると白色LEDが点灯します。

分解するには4つのネジを外します。接着したほうが製造コストを抑えられると思いますが、ネジを使ってくれていることで改造しやすくなっています。ただ、筐体の樹脂が強くないため、分解・組み立て時に緩めたり締めたりを繰り返すとネジ溝が失われていくような気がします。

白色のLEDはいわゆる砲弾型ではなく、発光面がややフラットになっています。この形状のほうが集光せずに拡散しやすいのでしょうか。しかし、”ON AIR”の文字盤の中心に光のムラが出来てしまいます。複数のLEDを使うか、光を拡散するフィルターを間に入れると改善すると思いますが、百円の小物にそんなにコストは掛けられないのでしょう。

製造ロットによって異なるかもしれませんが、LEDの電流制限には47Ωのリード抵抗が使われています。カラーコードが読み取りにくく、実測では46Ωでした。また、スイッチとLEDを繋ぐリード線も芯線が細くてすぐに切れそうで、半田付けも褒められたモノではありません。元のリード線も太いものに交換したほうが良いです。

電源のLR44型ボタン電池(2個)を出来るだけ長持ちさせるため、電流制限抵抗をもっと値の大きなものに変えました。220Ωに替えてもさほど明るさは変わりません。高輝度のLEDなのかもしれません。

改造

タイプ1 「SEND端子」を使う方法(HF機)


IC-705のSEND端子は送信中にLow(ほぼ0V)になります。PNPトランジスタのベース端子がGNDに落ち、エミッタ・コレクタ間が導通することでLEDが点灯します。送信波を使わないので、出力やアンテナとの距離に関係なく、安定して点灯させられます。また、AMやSSBでも一定の光量で点灯します。

IC-705に限らず、他の機種でもSEND端子が付いていれば使用できます。なお、ロジック電圧のHigh・Lowですから、電流はほぼ流れません。信号の引き出しに細いリード線を使っても差支えありませんし、すでにSEND端子を他の用途に使っている場合でも並列接続して使えます。


回路(点線内が追加回路)

小さく切り取ったユニバーサル基板に部品を実装します。筐体内は比較的余裕があるのでリード部品を使いました。トランジスタには手持ちの2SA950を使いましたが、2SA1015などの定番品でOKです。


部品を基板に実装したところ


バンドや出力、アンテナとの距離に関係なく点灯する

タイプ2 送信波を検出してスイッチングする方法
送信波の1部を両波整流して得た直流電圧によりNPNトランジスタをONさせます。整流ダイオード(2つ)にはゲルマニウムダイオードを使います。定番は“1N60”ですが、試しにAmazonで買った中国製ダイオード(メーカ不明)を使ってみました。それでも動作しますので、他の同等品でも使えると思います。

トランジスタは2SC1815などの汎用品でOKですが、増幅率ランク(hFE)は高いものを選んだほうが良いです。なお、トランジスタを2つ使って増幅率を大幅に高める『ダーリントン接続』は使用できないと思われます。ダーリントン接続は確かに増幅率が高いのですが、ベース・エミッタ間電圧(VBE)も高くなります。この整流回路で得られる電圧は高くありません。


回路図(点線内が追加回路)


部品を基板に実装したところ

ダイポールアンテナのような動作を期待して、ピックアップのリードのほかにGND側からもリードを伸ばして筐体内に収めました。ただ、その効果のほどは分かりません。後述のように、信号源までリードを伸ばすほうが良いように思います。

実際に作ってみると、いかにうまく送信信号をピックアップするかがポイントだということが分かります。ご存じのように電磁波は距離の2乗に反比例して弱くなるので、少し動かしただけで点いたり消えたりします。ここではハンディー機にアクセサリー(今風に言うとチャーム)として取り付けることを想定しているので、アンテナか本体(筐体GND)からの輻射を捕らえることになります。しかし、使うアンテナや運用バンドによって強い輻射が得られる位置が異なります。検討した結果、アンテナ基部(ローディングコイル付近)からピックアップすれば、バンドやアンテナ形式に関係なく安定して光らせられるようです。


VHF(左)とUHF(右)、どちらも出力0.1Wで点灯
(ID-52にデュアルバンドアンテナを装着した状態)

ハンディー機用のデュアルバンドアンテナは、144MHz帯は1/4λ型、430MHz帯では1/2λ型として動作します。1/4λ型は筐体がGNDとなるので筐体からの輻射も多いですが、1/2λ型はエレメント上で完結するため筐体からの輻射が少ないはずです。実際、ピックアップリードの位置を検討した結果もそうでした。

最後に

今回はSNSの流行に乗る形で面白いアマチュア無線アイテムを作ってみました。

固定機においては、[SEND端子]信号を使うのが良いと思います。送信波を整流して得られる直流電圧は低く、アンテナに近づけないと光りません。

送信波を検出してスイッチングする方法は、固定機+外部アンテナの場合、皮肉なことにアンテナとのミスマッチによって同軸ケーブルやリグ本体にRFが載っているとむしろ光り易いと思います。ハンディー機の場合は、リグのアクセサリーにしてはこのライトは大きく、明るい昼間は光ってもよく見えないのが残念です。ただ、使用するアンテナの形態とバンドによって、どこからの輻射が強いか、あるいは同軸にRFが載っていないかを調べるのに使えるかと思います。

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