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新・エレクトロニクス工作室

第31回 50MHz AMトランシーバ2

JE1UCI 冨川寿夫

2024年11月15日掲載

第20回では写真1の50MHz AMトランシーバを作製しました。少々課題を感じていましたので、その解決をしようと再度作成したものです。見た目も写真2のように、同じように作りましたので「2」としました。


写真1 第20回で作製した50MHz AMトランシーバ


写真2 今回作成した50MHz AMトランシーバ2

このIF部の元になったのが第30回のLA1201テストボードです。その他の部分も第8回のAF部&電源部テストボード、第11回のSi5351Aを使ったVFO実験ボード2、第12回のRF部テストボードが基本となります。

課題

まずは、全体の構造が少々問題で、メンテの時などは外す部分が多過ぎる欠点がありました。それだけならまだ良いのですが、外し難いのです。特にスタンバイスイッチがアルミLアングルにあるのが一番の問題でした。操作性としてはLアングルにある方が良いのですが、基板内の方がずっと作りやすくメンテが容易になります。また、アンテナのBNCコネクタとLPFもメインの基板外になっていました。これらも基板内に移す方が圧倒的に合理的な構造になります。

第20回では構造的に写真3のようになっており、左側にしかアルミLアングルを付けていませんでした。これは特に必要性を感じなかったからです。ところが、このトランシーバを左手で持っていると、右端の背の高い部品に指が触れてしまうのです。触れ過ぎたらしく、10μFケミコンのハンダ付けがアース側で外れてしまいました。ハンダの不良ではなく、銅箔が剥がれたのです。これはまずいでしょう。仕方なく、寝かせるようにして付け直しました。写真3の中央下に寝ているケミコンです。Lアングルは両側に付ける方が良さそうです。このようなトラブルも無くなり、使う時にハンダ部分に触れずに済みます。


写真3 アルミLアングルは片側だけであった

また、ダブルスーパーではなくシングルスーパーにしたかったという事があります。性能的に問題は無かったのですが、少々気にしていました。

構成

図1は受信部を含む全体の構成になります。黄色が受信部、橙が送信部、青が共通部です。第20回と大きな変更は無く、IF部のICを変えただけになります。ダブルスーパーからシングルスーパーにしたのですが、第20回の図が手を抜いていたため変更が目立ちません。


図1 全体の構成

JARDに保証認定の申請をするときには図2になります。受信部を外し、それらしくなるように表現の変更をしています。送信側の回路は第20回と同じですので、申請する時も同じです。但し、私もまだ申請をしているわけではなく、指摘される部分があるのかは不明です。


図2 保証認定用のブロック

回路

上記のように考え、図3のような回路としました。基本的には第20回と大きな変更はありません。IFはLA1201に変更しただけですが、回路よりも構造を変えた方が大きいように思います。


図3 全回路図

送信部については、故JH1FCZ大久保さんの発表された回路がベースにあります。LM386を使って2SC1815に変調をかけますが、LCのインピーダンス変換兼用のLPFを追加しました。変調を深くするミソの部分ですので、前回の説明を確認して下さい。このLCの値はベストではないと思います。まだまだ改善の余地は沢山ありそうです。

作製

全体のイメージを考えながら、図4の実装図を作製しました。


図4 部品面から見た実装図

このハンダ面が図5になります。この図は部品面からの透視図になります。中央上に抵抗330Ωが見えます。これは感度とフィルタのリップルとの兼ね合いですので、不要であれば撤去する方が良いと思います。調整が容易になるようにハンダ面に付けました。


図5 ハンダ面(部品面から見た透視図)

ハンダ面の左右を反転したのが図6になります。これは下から、つまりハンダ面から見た図になります。


図6 ハンダ面(ハンダ面から見た図)

基板は写真4のように、部品面にシールドのあるユニバーサル基板を用いました。図4の丸点はこのシールドにハンダ付けします。良く秋月電子の基板を使うのですが、C基板ではサイズが小さ過ぎて入りません。写真5のようなサンハヤトの基板を用いました。これを必要なサイズにカットして使用しています。


写真4 部品面にシールドのあるユニバーサル基板を使用


写真5 サンハヤトの基板

図4の実装図を基に作り始めたところが写真6になります。この場合、端の方から作るよりも中央のアースのハンダがやり難そうな部分から始めるのが良いと思います。とは言え、やり難い部分が残ってしまうのが普通です。フィルタには10.7MHzの通過帯域10kHz程度のものを使っています。金属ケースに入った素性の良さそうなものですが詳細は解りません。10.7MHzのAM用であれば使えるはずです。


写真6 作製開始の様子

完成した基板が写真7です。いつもと同じですが、この状態で動作確認を行います。スピーカは前回と同じものですが、超小型のボックス入りを使いました。かなり前にaitendoで購入したのですが、今は無くなりました。別の小型スピーカを探して下さい。スタンバイスイッチに黄色の太めのワイヤーが接続されていますが、これは0.8D-QEVの極細の同軸になります。


写真7 基板完成

このハンダ面が写真8になります。この写真8図6と比べる事ができます。


写真8 ハンダ面の様子

今回は前回よりも上手い構造にするため、送受を切り替えるトグルスイッチを基板上に置き、基板外への配線を作らないようにしました。出力のコネクタは基板用のSMAコネクタを使って、基板外への配線を作らないようにしました。最近では同じようなBNCコネクタがありますので、それでも良いと思います。電源には9Vの006Pを使っていますが、ここだけは仕方ありません。基板上に電池ボックスを置く事もできるのですが、高さのバランスが悪くなってしまいます。それでもコネクタを使って取り外しができるようにしました。従って電池ボックスからのコネクタを外し、ネジ4個を外すだけで写真9のように基板だけ外せます。メンテ等も容易になりました。実際これは大切な事です。


写真9 基板全体が簡単に外せる

写真10のように、見た感じは左側の旧作とほとんど変わりません。しかし、構造を含めた実際の完成度はずっと上がっていると思います。


写真10 左: 旧作、右: 新作

裏側も写真11の左から右のようにスマートにしました。つまり基板を固定するカラーはネジ止めではなく、生基板上にハンダ付けとしました。これだけでもスッキリとします。また、Lアングルをネジ止めするナットも生基板上にハンダ付けしていますので、外すのは簡単で手間もかかりません。取り付けも簡単です。


写真11 裏側もスマートに、左: 旧作、右: 新作

ソフト

使ったソフトは第20回と全く同じで、変更はしていません。50.000MHzから50.999MHzを1kHzステップで可変します。受信時には表示周波数からマイナス10.7MHzを発振します。POW ON時には50650kHzからスタートします。あとから50670kHzの方が良かったと気が付きました。第20回のところに置いてありますので参考にして下さい。

ちなみにPOW ONすると写真12のような表示をします。このようにコールサイン表示が私のものになっています。今年になってパソコンの入れ替えを行い環境が変わってしまいました。今のところ、「コールは私のものに・・」という変更には対応できません。それどころか、ソフト開発が全くできない状態です。私も困っています。


写真12 POW ON時の表示

測定

出力の測定は図7のようになりました。超QRPですので、外部のアッテネータ等は使用していません。このように出力は+10dBm、つまり10mWになります。従って、無線設備規則の帯域外領域の不要輻射は50μW、スプリアス領域の不要輻射は100μW以下が必要になります。


図7 出力の測: 出力は+10dBm(10mW)
帯域外領域の不要輻射: 50μW(-23dBm)以上のレベルは無く問題なし

ところで、図7は帯域外領域の不要輻射の測定を兼ねています。このスパンは125kHzで、50MHzでAM時の帯域外領域を測る幅になります。もちろんですが、中央の必要周波数帯幅の6kHzは含みません。このように50μW(-23dBm)以上のレベルは全く無く、問題ありません。キャリアの付近のノイズフロアが盛り上がっているのは、スペアナ内部のC/Nが良くないためです。これはトランシーバの問題ではありません。

スプリアス領域の不要輻射は図8のようになりました。2倍波が-38.53dBmのレベルですので、100μW(-20dBm)以下となり問題ありません。


図8 スプリアス領域の不要輻射: 2倍波が-38.53dBmのレベルで問題なし

このトランシーバは「平成17年に規定された新スプリアス規格に基づき設計・製作した」ものです。このように特性的に全く問題ありません。この記事を参考に、そのまま作り「第□送信機は平成17年に規定された新スプリアス規格に基づき設計・製作した」の文章を「スプリアス確認保証願書」の参考及び、送信機の系統図に記入します。これでJARDの保証認定にスペアナ画面なしで通るはずです。文献等の質問があった場合は、「FBニュースの通り作製した」事と記事ページのアドレスを返答して下さい。

私自身は、これから変更申請を行う予定ですが、今年のハムフェアでJARDの担当の方に上記を伺いました。但し、送信機系統図等のどこかに問題があるか否かは解っていません。その対応は御自身でお願いします。

使用感

初めて作るパターンのトランシーバは、構造的な問題点に後々気が付くものです。今までも良くありました。若干の回路変更程度であればまだ良いのですが、構造というのは修正では済みません。そこで作り直すという事になってしまいました。使い勝手も良くなり、部品配置もしっかりとした印象になりました。一応はまとまりましたので、今後は「すみやかに」JARD経由で変更申請を行う予定です。

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