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Short Break

受信部はやっぱりアップコンバージョンか?

スーパーヘテロダインの周波数構成

アマチュアが使っている無線機の受信部は、90%以上がスーパーヘテロダイン方式といっても間違いはないと思う。スーパーヘテロダイン方式とは、受信した電波を一旦中間周波数と呼ばれる別の周波数に変換して行われる受信方式です。

周波数変換の過程において、中間周波数をどのように設定するかは受信機の性能に影響を与えるとされています。国内アマチュア無線機メーカーのフラッグシップ機で、A社、B社は中間周波数を受信周波数より低いダウンコンバージョン、C社は中間周波数を受信周波数よりはるかに高いアップコンバージョンを採用しています。

図1は、典型的な受信機の周波数構成図です。受信周波数を14MHzとすると、第一中間周波数(fIF)を8~9MHzとするために、局部発振回路(LO)の発振周波数(fLO)をおよそ23MHzとしています。ミキサーの出力は、fRとfLOの和と差の周波数が出力されることはご存じと思います。ミキサーの出力のうち、差の9MHzをBPF(ルーフィングフィルター)で取り出し、fIFとしています。この周波数構成では、fIFは受信周波数fRより低く設定されています。この方式をダウンコンバージョンと呼んでいます。


図1 14MHzの受信を例にした周波数構成の一例(ダウンコンバージョン)

アンテナには様々な周波数の電波が到来しています。図1の周波数構成で、例えば14MHzを受信中、希望しない32MHzの強力な信号がアンテナから入ってきた場合、高周波増幅器の前に同調回路が組み込まれているものの、微弱な信号が同調回路、高周波増幅器を通過しミキサーに入ります。ミキサーではこの32MHzの信号がfLOと足し算、引き算された信号が出力されることになります。

つまり、足し算では、32+23=55MHzとなり、引き算では32-23 = 9MHzとなります。前者の55MHzの信号は、9MHzのルーフィングフィルターを通過することはできませんが、本来不要な信号の受信で生成された後者の9MHzはルーフィングフィルターを通過し、IF回路に入ります。これが本来受信しなくてもよい32MHzの信号を受信してしまう原因で、スーパーヘテロダイン受信機の持つ影像周波数妨害(イメージ混信)です。

アップコンバージョンを使った周波数構成ではどうなるか

図2にアップコンバージョンの周波数構成を用いたブロックダイヤグラムを示します。前述同様に14MHzの電波を受信していると仮定して周波数構成を検討します。ミキサーでは、14MHzの受信信号(fR)とLOの信号(fLO)の和と差の信号がそれぞれ生成されます。


図2 14MHzの受信を例にした周波数構成の一例(アップコンバージョン)

和の場合、14+78=92MHz、差の場合は78-14=64MHzとなります。前者の92MHzは、64MHzのルーフィングフィルターを通過できませんが、後者の差の周波数を取った場合はバッチリ通過することになります。これは意図する動作です。

ところで、アップコンバージョンの場合でも、仮に142MHz(=fR+ 2×fIF)の信号がアンテナから同調回路、高周波増幅器を通過してミキサーに入ると仮定すると、142-78=64MHzの式が成り立ち、fIFと同じ周波数の信号が生成されることが理論的に導き出されます。仮に142MHzの信号がミキサーに注入されるとイメージ混信が発生する可能性はあります。

ところが、142MHzの信号は、HF~50MHzの受信範囲から考えると2倍以上離れており、同調回路や高周波増幅器で確実に排除されるため、ミキサーの出力がイメージ混信を発生させることは実際上ありません。

これからも分かるように、スーパーヘテロダイン受信機でイメージ混信をなくすようにするには、fIFの周波数を受信カバレッジの周波数以上に設定すること、つまりアップコンバージョンの構成にすることが大きな解決策となります。(文末 1アマの試験問題参考)

高い周波数のルーフィングフィルターの性能は?

ミキサーで生成される信号から希望の信号だけを取り出し、第一中間周波増幅器に送るには、その前にルーフィングフィルターで不要信号をカットしておくことが重要です。これにはルーフィングフィルターの帯域幅が重要なファクターとなります。帯域幅は狭ければ狭いほど不要な信号の通過はなく選択度がアップします。

このルーフィングフィルターの中身は物理的な水晶片であり、水晶片のカットの方法で性能・仕様が確保されています。一般的に周波数が低い方が帯域幅の狭いフィルターの製作には有利とされています。帯域幅が狭いとそれだけ、近接の信号を排除することができます。つまりダウンコンバージョンの受信機のほうがルーフィングフィルターの帯域幅を狭くできるため、近接信号の妨害のレベル比(RMDR)を高くできることを意図して受信機の開発がなされています。

アップコンバージョンで使われている64MHz帯のルーフィングフィルターの帯域幅は昨今のフィルターメーカーの技術革新もあり、64MHzに対して1.2kHzという驚異的な狭帯域を実現されており、もはやダウンコンバージョンでしか狭帯域のフィルターが実現しないといった神話は昨今の技術革新で解消されています。

LOの信号の純度(ピュリティ)が選択度をアップさせる

ダウンコンバージョンを採用し、ルーフィングフィルターの帯域幅を狭くして選択度をアップさせる方法は多くの機種で採用された順当な方法ですが、イメージ混信は残されたままとなっています。希望の周波数だけを取り出すことに関しては、ダウンコンバージョン、アップコンバージョンの区別なく重要なファクターはLOの信号の純度(ピュリティ)です。

ミキサーでは、fRとfLOの信号とが混合されます。このとき、LOの信号のピュリティが悪ければ、足し算、引き算を行ったミキサーの出力信号もLOの信号のピュリティに応じて悪化します。アイコムのIC-7800は当時では抜群の選択度を誇っていました。その元になるのが図3に示したLOの信号のピュリティ、つまりC/N(Carrier to Noise Ratio)です。IC-7800のC/Nは-70dB辺りから徐々にノイズが含まれ信号のすそ野が広がっています。それに対してIC-7850/IC-7851のLOの信号を見ると-100dB辺りの信号でもすそ野が広がった信号となっていません。つまり、ミキサーの出力には、受信した信号の成分がほとんどそのまま表れることになります。


図3 IC-7800、IC-7850/IC-7851のLOのC/Nの比較(アイコムIC-7850/IC-7851のすべてより引用)

LOのピュリティ+アップコンバージョンで最強か

ダウンコンバージョンの周波数構成で、IFの周波数を下げルーフィングフィルターの帯域幅を狭くしながら近接信号の妨害を防ぐことも一つの方法です。

アップコンバージョンの構成でイメージ混信を回避し、さらにピュリティを大幅にアップしたLOの信号で近接信号の妨害を回避することがC社のアップコンバージョン採用の無線機で実証されています。
CL

<参考>
問(B-3)にイメージ混信(影像周波数妨害)についての記述があります。


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次号は 12月15日(火) に公開予定

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