Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

Japan Castles On The Air (JACOTA)

Castle 3 田辺城(京都府舞鶴市)

JO3SLK Greg Cook (翻訳 JP3DOI 正木潤一)

こちらの記事を印刷する(PDF 形式)

今月のJACOTAは、田辺城での運用をご紹介します。

田辺城は1570年に織田信長が細川藤孝(ふじたか)に命じて造らせた城です。藤孝は自身の居城である宮津城を自ら取り壊し、この田辺城を築きました。彼の息子忠時(ただとき)が関ヶ原の戦いで徳川家に加勢して戦った1600年のことです。石田三成率いるおよそ15000の軍勢が田辺城を取り囲み、対する細川藤孝側の守りは500の軍勢でした。50日に及ぶ戦いののち、御門(みかど)の仲介によって藤孝は投降して命拾いしますが、田辺城は落ちました。その後、京極高知(たかとも)が新たに城主となり、次いで1668年に牧野親成(ちかしげ)が城主となりました。その時に親成が築いた石垣と城門が現在も遺っています。その後、日本で城が廃城となる明治時代まで牧野氏は繫栄しました。


田辺城

田辺城は京都府舞鶴市にあります。私がそこで移動運用をしたのは2月の終わりでした。しかし、あらかじめお城の様子をチェックするとともに運用する許可を得るために2020年11月にすでに訪れています。お城の北100mの辺りに広い駐車場があり、とてもアクセスが良い場所です。お城は常時立ち入り可能な公園の中にあります。城内の資料館は朝9時の開館です。野球やサッカーをしたり、ラジコンカーを走らせたりできるくらい広い庭園が広がっています。


田辺城の一角

田辺城内へと入る正面の城門は巨大です! 門は分厚い梁と鉄でできており、城の守りを強固なものとしています。門の上の櫓(やぐら)の中は広い資料館となっていて、興味深い展示物があります。


田辺城の櫓門

北の門の櫓(やぐら)には田辺城に関する展示物と案内があります。敷地内の建物はどれも状態がよく、管理が行き届いています。


城内にある櫓

櫓の東には、もとのお堀の一部を使った、とても素敵な日本庭園が広がっています。たくさんの木や低木が植えられていて、落ち着いた雰囲気を楽しめます。


堀の一部を利用した庭園

田辺城での運用

日本では6mバンドが人気です。運用には、HFではAL-705マグネチックループアンテナ(以下MLA)、6mバンドでは3エレの八木アンテナを使うことにしました。6mバンド用の八木アンテナは、米国製のアンテナキットで、『Deluxe Buddipole®システム』に付属している部材と別売の6mバンド八木アンテナ用キットと別売の部品を使って組むことができます。(使用する部材と組み立てについては後述します)

城内の建物と門からさほど遠くない、中庭のすこし小高くなった場所を運用場所に選びました。すべての機材はキャリーカートに載せて持ち込みました。天気予報では晴れるとのことだったので日傘を持ってきていたのですが、途中でそれをアンテナの三脚に取り付けて使用しました。その日は少し暑いくらいに日が照ってきたので傘を持ってきて正解でした。

6mバンドの八木をメインに、カメラの三脚に据えたMLAをサブとして使うことにしました。そして、樹脂製の軽い三脚に載せたIC-705を、キャンプ用の折り畳みテーブルの上にセットしました。


城内の庭園に設営した運用局

40mバンドの運用にはMLA『AL-705』を持ってきました。MLAの帯域はたいへん狭く、運用周波数を変えるごとにチューニングし直す必要があります。帯域が狭いので受信感度が良くノイズも少ないのですが、送信時にSWRの低いポイントに合わせるにはコツが要ります。AL-705は組み立てがカンタンで持ち運びやすいので、JACOTAのような移動運用に向いています。その日はSSBで6mバンドとHFバンド(特に40mバンド)を代わる代わる運用しました。


カメラの三脚の上に据えたAL-705マグネチックループアンテナ。動作は良好。

MLAのチューナー部の改良

前述のように、MLAのチューニングは、調整がたいへんクリティカルで微妙なダイヤル操作が求められます。チューニングダイヤルを少し動かしただけで同調周波数が大きく変わってしまいます。私は、細かな調整が必要な割にはダイヤルが小さ過ぎると考え、一回り大きなゴム製のワッシャーを写真のようにオリジナルのダイヤルに取り付けました。


直径を大きくしたチューニングダイヤル

また、チューナーにナイロン製の『結束バンド固定具』を取付け、ループ上部にある給電部から同軸ケーブルがまっすぐ下に垂れ下がるように固定しました。さらに、スマホホルダーを使い、チューナーを挟んでアンテナをカメラの三脚に取り付けられるようにしました(両面テープを貼って補強してあります)。なお、スマホホルダーの底部にも三脚の取付け口(真鍮製のネジ穴)があります。


同調部とスマホホルダーの後ろ側(白いものが結束バンド固定具)

ループ部へのひと工夫

結束バンドを使って2本のループ同士を固定するとともに、接合部の樹脂製の取付具をなくさないようにしました。


結束バンドで固定したところ

機材の運搬

沢山の機材を運用場所まで運ぶのにキャリーカートが便利です。今回は駐車場からお城までのアクセスがとても良かったので、いつもより多くの物を持ち込みました。それでも、すべての機材がカートにちゃんと収まり、スイスイ引っ張れました。


機材とキャリーカート

6mバンド八木アンテナ

これまでは、Buddipole®アンテナシステムで垂直系アンテナを組んで運用するのは40mバンドのみでした。今回はHFの運用にAL-705を持ってきました。私は40mバンドが好きですが、6mバンドも好きです。ここ日本では6mバンドも人気なので、Buddipole®アンテナシステムで6mバンドの3エレ八木を組み立てました。6mバンドの3エレ八木はフルサイズでもそれほど大きくもなく、Buddipole®アンテナシステムの短縮コイルも、この構成では使う必要ありません。

三脚のマストを除いて、Buddipole®アンテシステムを使えば、以下の構成品を使って6mバンドの3エレ八木を組むことができます。

・22インチ(約56cm)長のブーム金具×4本
・エレメント用ホイップアンテナ×6本
・VersaTee®ユニット×1個
・6mバンド八木アンテナキット 
(ITカラー2個、ITアダプター2個、Soft Touchノブ2個、6角レンチ1本)
・予備のIT アダプター
・予備のSoft Touchノブ


Buddipole®3エレ八木アンテナの構成部品

ITアダプターのピンをVersaTee®にある穴にはめ込みSoft Touchノブで締め付け、固定します。2本のブームを連結させ、片側をVersaTee®ユニットに取付け(ねじ込み)んで、導波器側のブームを組み立てます。ホイップアンテナをVersaTee®ユニットにねじ込み、放射器を構成します。


左右の放射器エレメントと導波器側のブームを取付けたところ

導波器のITカラーをアンテナアームの端までスライドさせ、それを六角ネジで固定します。ITアダプターをアンテナアームの先端に取り付け、アダプターにあるピンをITカラーの穴に差し込みます。Soft TouchノブでITアダプターをブームに固定します。アンテナアームを所定の(周波数に合った)長さにセットして水平に固定した後、エレメントを水平に保ったまま六角ネジで固定します。


導波器をブームに取り付けたところ

同じようにして、VersaTee®ユニットの反対側にアンテナアームを取付け、その先端に反射器を取り付けます。VersaTee®ユニットに直接取り付けたホイップエレメントが放射器となります。


反射器をブームに取り付けたところ

放射器と導波器、反射器の取り付けが終わると各エレメントを周波数に合った長さに合わせます。放射器に同軸ケーブルを接続してSWRをチェックします。必要であれば各エレメントの長さを微調整してから所望の方角にビームを向けます。


出来上がった6m 3エレ八木アンテナ

運用

その日、私が近くの駐車場に着いたのは午前9時でした。すべての機材をキャリーカートにのせ、約100m離れたお城まで引っ張って行きました。お城に着いたのは午前9時半で、運用に適した場所を探し、アンテナの組み立てに掛かりました。

組み立てた6mバンド3エレ八木アンテナのSWRは、SSBがよく使われる周波数うまく調整できました。MLAのチューニングはクリティカルなので、IC-705のスペクトラムスコープ上で空き周波数を探してからアンテナの同調を取り、そこでCQを出すことに専念しました。どうしても妨害波がひどくて応答が聴こえない場合だけ周波数を変更しました。

歴史的な名所旧跡で無線を運用するのはやっぱり楽しく、特に今回の田辺城での運用は楽しくもあり、また収穫もありました。何人かが私に近づいて来て「何をしてるのか」尋ねてきました。中にはアマチュア無線を知っている方もいましたが、いずれもたいへん興味深そうに私の機材や運用している様子を眺めていました。終日好天に恵まれましたが、午後よりも午前中のほうが過ごしやすかったです。暖かくなってきて、私は上着を脱いで日傘を差したほどです。お城を管理する方には、午後2時ごろまでこの場所で運用すると伝えていました。そのため1時半ごろになると運用を切り上げ、片付けを始め、キャリーカートにすべて詰め込みました。そして2時きっかりにお城に別れを告げて駐車場へと戻りました。車に荷物を積み込んで、2.5時間のドライブで家路に付きました。家に付いた時には少し疲れていましたが、早くも次回のJACOTAのことで頭がいっぱいでした。

次回のお城は・・・

明石城に行って運用の許可を取ろうと思っています。その際にあらかじめお城の写真を取っておこうと思います。


明石城

今年の始めに出石城を訪れましたが、その時は雪が積もっていました。私は出石城が大好きで、そこで運用するのも楽しみにしています。


出石城

他にも訪れてみたいと思っているお城がいくつかあります。次回の運用地がどこになるかは、運用の許可が取れるか、当日の天気、そしてコロナの状況次第でしょう。もしお時間があるようでしたら『Jcastle』にアクセスして、明石城や出石城、そして興味のあるお城について調べてみてはいかがでしょうか。ではみなさん、お元気で。73

※BuddipoleとVersaTeeはBuddipole社の登録商標です。

Japan Castles On The Air (JACOTA) バックナンバー

2021年4月号トップへ戻る

次号は 12月 1日(木) に公開予定

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.