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Short Break

LM358を使った過電圧防止装置 その1
オペアンプをコンパレータとして使用

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製作した過電圧防止装置(右)

新型コロナウイルスが世界的に広がるさらに2年ほど前、大阪で開かれたアマチュア無線のイベントで、LM358や4558Dといったオペアンプや、あまり使い道のないような5000番台のICがぎっしり詰まったジャンク品が300円で売られていました。いつもの癖でついつい衝動買いしてしまいました。4558DはV+とV-の2電源が必要ですが、LM358は単電源で動作し、使いやすいことから今回そのオペアンプを使い過電圧防止装置を製作しましたのでご紹介します。

過電圧防止装置の製作は、2回の連載です。第1回目が電源遮断にオーソドックスなメカニカルリレーを使ったスイッチングに対し、第2回目は少し進んだMOSFETを使った半導体によるスイッチングとしています。

リレーによる過電圧防止回路の概要

過電圧防止装置の構成図を図1に示します。すでにお使いの定電圧電源の出力端子に今回製作する過電圧防止装置を経由して負荷に電力を供給します。定電圧電源には何ら改造の手は加えません。単に外付けの装置とします。

この過電圧防止装置は、定電圧電源が何らかの原因で規定以上の出力電圧となった場合、接続している電子機器を過電圧から保護する目的で接続する装置です。装置は過電圧をコンパレータで検知します。通常は、定電圧電源の電力が過電圧防止装置を単に通過しているだけですが、入力側の定電圧電源の電圧が16V付近になるとリレーがONとなり、電源回路をリレーで遮断します。


図1 コンパレータによる過電圧防止回路の構成図

製作に使う2つのキーパーツ

図2がその過電圧防止装置の回路図です。使用部品もそれほど多くはありませんし、特殊な部品もありません。比較的簡単に電子工作ができます。


図2 過電圧防止装置の回路図

キーパーツは2つです。1つは回路図の中央に描かれた三角形のパーツです。これがオペアンプのLM358です。コンパレータとして使用します。もう1つは、金属片の接点によるリレーです。DC 12Vで動作するリレーを選びます。リレーの接点には通常状態で電流が流れますので、流す電流の大きさに応じたリレーを選ぶ必要があります。

回路の動作説明

図3がLM358の内部ブロック図です。1つのパッケージに2個のオペアンプが入っています。オペアンプは、回路に負帰還を掛けると本来のアンプ(増幅器)として動作します。コンパレータとして動作させる場合は、負帰還は掛けません。コンパレータは、二つの入力端子(+)と(-)間の電位差を比較して、その状態に応じて出力端子がLOWになったりHIGHになったりする機能を持っています。今回はこの機能を使い、基準となる電圧と定電圧電源の出力電圧をコンパレータで比較します。定電圧電源の出力電圧が基準電圧より高ければ、コンパレータの出力がHIGHとなり、その信号であとのトランジスタでリレーのコイルをドライブし、定電圧電源回路を遮断します。


図3 LM358のピン配置

コンパレータの(+)端子に供給する電圧は、電源の出力電圧がこれ以上アップすると外部機器に不具合を与えることになる電圧から求めます。(+)端子に加える電圧はR1とR2の分圧で求めますが、基準電圧(-)をちょうど越えたあたりに設定します。

電圧防止装置の仕様

通常動作での定電圧電源の電圧を13.8Vとします。それが何らかの原因で16Vを越えると、この過電圧防止装置が働き、供給する定電圧電源の出力をこの装置で遮断するものとします。製作には、手持ちの定電圧電源には手を加えず、外付けの装置とします。

過電圧防止装置に使う主な部品

(1) D1
コンパレータの基準となる(-)端子に加える電圧を決めます。手持ちの部品からD1には8Vのツェナーダイオードを使用します。よって(-)端子には約8Vが印加されます。

(2) R1、R2、R3
定電圧電源の出力電圧が16Vとなったときに、この過電圧防止装置を動作させる仕様ですので、(+)端子に加わる電圧をR1とR2+R3の分圧から基準電圧の8Vになるように計算します。R3は、3番ピンの閾値(しきいち)電圧を若干可変できるように可変抵抗器としました。

Vccが16Vのとき、2番ピンに印加される電圧は、ツェナー電圧の8Vとなります。すなわちR2+R3の直列接続の抵抗値とR1の値は同じであることが分かります。ここでR1=R2+R3となるように抵抗値を選びます。この条件のときにR3の可変抵抗器を調整すると3番ピンには2番ピンと同様の8Vが加わります。


図4 コンパレータの基準電圧と比較電圧の設定

(3) D2
1N4002を使いました。メカニカルリレーがON/OFFするとき、コイルの両端には逆起電力が発生するため、この起電力のサージ対策でダイオードをコイルと並列に接続します。

(4) D3
リレーがON状態となると、定電圧電源のプラスラインがリレーで遮断されます。このとき、過電圧になったことを警告する赤色LEDをQ2でドライブします。

(5) R3
IC1の3番ピンに8Vが印加されるように50kΩの可変抵抗器をR2に直列接続します。R3の調整で3番ピンに印加される電圧は6.4~9.4Vに可変できます。

(6) R4
8Vのツェナーダイオードが定電圧動作となるような抵抗を選びます。ここでは、22kΩとしました。

(7) RL1
電源ラインのスイッチングを行うメカニカルリレーです。使用する電流容量に合わせてリレーを選んでください。ただし、リレーの電磁石の部分は、DC15~16Vで動作することが条件です。

製作

部品をユニバーサル基板に組み込みます。リレーは手持ちに図5に示すようなDC 12Vのものがありましたのでそれを使いました。リレーは、流す電流の大きさで選びます。IC-705用であれば10Wフルパワーで流れる電流は3A程度です。100W機を接続するのであれば、最大で20Aぐらい流れますので大電流に耐えるリレーを選択することはもちろんですが、ユニバーサル基板に使用する線材も大電流の流れる部分には太い線材を使用する必要があります。


図5 過電圧防止装置の内部

調整と動作の確認

ご使用の定電圧電源の出力端子と製作した過電圧防止装置の入力端子を図6のように接続します。過電圧防止装置の出力端子に適当な負荷と電圧計を接続します。今回の製作には負荷として10Ωのセメント抵抗を2本パラ接続で使用しました。


図6 過電圧防止装置の接続

定電圧電源の出力電圧を13.8Vにセットします。そのとき、過電圧防止装置の出力端子には、13.8Vの電圧が出ていることを確認します。徐々に定電圧電源の電圧を上げていき、16V付近で止めます。図2の回路図のR3の可変抵抗器を調整して、過電圧防止装置の出力がゼロになる位置にセットします。

コンパレータはヒステリシス特性を持っていますので、この調整を何回か繰り返して確実に16V付近でリレーが「カチン」と音が鳴りONになるようにR3を調整します。リレーがONになると赤色LEDの警告ランプが点灯します。

LM358について

LM358は本来オペアンプですが、今回はコンパレータとして使いました。コンパレータの簡単な動作原理については、本WEBマガジン「FBのトレビア」で説明しています。併せてご覧ください。

次回も、過電圧の検知には引き続きLM358を使いますが、電源遮断のスイッチングの部分にはPチャネルMOSFETを使った装置を製作します。CL

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