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ものづくりやろう!

第一回 アンテナチューナの製作

JH3RGD 葭谷安正

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はじめまして

月刊FB NEWSをご覧の皆さん、こんにちは。ハンドルネームYOSIです。私のアマチュア無線局の開局は今からちょうど50年前の1971年です。それから10年程50MHzのみでオンエアしておりましたが、勤務の関係と興味関心が他の面白い事へと移ったため34年間の眠りにつき、そして6年前に昔のコールサインでカムバックしました。

カムバックの契機は、8年程前に職場でクラブ局を開局する話が持ち上がり、その際に一緒に面倒をみてもらえないかと協力を求められたことがはじまりです。

そのときから無線に首をつっこみなおしたのですが、私が以前見た世界だけでなく、SDRやデジタル技術の大幅な導入といったことに目を奪われ、新しい技術がいっぱい取り入れられた世界が加わっていたということに驚きました。「こんな面白い世界になっているんだ、いろいろやってやろう」と、RTL-SDRを買い込んでウォーターフォール表示の便利さを実感したり、RTL-SDR用に周波数コンバータを作成しHF信号を受信できるようにしてハードウェア製作を楽しんだりと、どんどん深入りしていきました。もちろん、HF帯のアマチュア無線のウォッチも暇があればするようになりました。6年前に以前のコールサインで144/430MHzの2バンドで再開局しました。しかし、特にオンエアすることもなく、狸ウォッチの日々をおくっていました。そんな折、IC-7300の発売アナウンスがあり、子供がおもちゃを欲しがる時のように「これでHFに出たい」と激しい気持ちが湧いてきました。また、タイミングよくXYLから「もうすぐ60歳、記念に背広でも買いましょうか」と言われ、「背広なんかいらない。無線機が欲しい」と懇願しましたら、私の駄々っ子のような反応にXYLもあきれてしまい、それから数日でIC-7300が私の部屋に鎮座することになりました。

カムバックにあたり、もうひとつ続けていきたいことがありました。中学生の頃の私は熱烈な「ラジオの製作」ファンでしたが、当時理論もわからないのにラジオの製作の実体配線図を見ながら大阪日本橋の、今はなきニノミヤ無線で部品を購入しては真空管の並四ラジオを作ったり、トランジスタラジオを作ったりと回路等の製作に勤しんでいました(その延長線上で電話級アマチュア無線の免許をとりました)。還暦を過ぎて年甲斐もなく当時のものづくりの気持ちがぶり返し、また自分で部品を集めて作りたいという気持ちが強くなりました。高性能な無線機や複雑な装置を作ろうというのではなく、簡単なものでもいいのでできる限り自作できるものはつくりたい。電子工作のものづくり、それとモールス通信が今の私の精神を高揚させる良薬になっています。

先日、月刊FB NEWSの執筆話をいただきましたが、「私はベテランOMのように最先端のものを作ったりできませんが簡単なものでしたら作成できます」と返信しましたら、「幅広い読者がおられ初心者の方も読めるような記事も掲載しています」とのことでしたので、初心者の私が作ったものを作成当時の気持ちも文に添えて紹介させていただき、連載をはじめさせていただきたいと思います。

アンテナチューナ製作・試験

再開局しましたが、計測機らしいものとしてはテスターとLCRメータというありさまで、そのほかに測定器は何もありませんでした。ろくな調整もできませんが、とりあえず購入した無線機とマルチバンドのモバイルアンテナを10メートルの同軸ケーブルで接続しアンテナ調整からはじめました。IC-7300のオートチューナをオフにして、内蔵のSWR計を頼りに可能な限りSWRが減少するようにエレメント長を何度も調整しました。HF機を持つのは初めてですからわからないことだらけ、知り合いのOMさんもおらず、U/Vで運用している職場の方に聞いたり、本を調べ、グーグル大先生(?)にお聞きして我流でやっていきました。これも楽しい時間ではありました。本来ならば同軸ケーブルの長さも使用周波数の波長λを考慮して長さを決めなければならないのを、物干し竿に縛り付けたアンテナと無線機間の距離をざっと測ってエイヤーとばかりに同軸ケーブル10メートルを買ったので、IC-7300内蔵のオートチューナでも7メガ以外はSWRが下がりませんでしたが、「大丈夫、これくらいでは無線機は壊れないだろう」と大雑把な性格そのままに運用することにしました。しかしネットで調べると「アンテナチューナとワイヤーアンテナでアンテナのマッチングばっちり、お手軽に出られる」などの記事が多く目につき、気になりだしました。

開局から数日すると、もはやアンテナチューナがどれくらい有効なのかが気になりだし、実験のためLC接続(C可変)の簡易チューナを作成し、無線機にとりつけて受信してみました。

ベテランOMの皆さんには無駄な話とは思いますが少々アンテナチューナの解説を。アンテナチューナは、無線機とアンテナの間に接続する機器で、その目的はアンテナと送信機のインピーダンスを整合(インピーダンスマッチング)させて、電力伝送の効率を高めるという装置です。整合の度合いは定在波比(SWR: Standing Wave Ratio)という進行波と反射波の関係を表す数値で判断し、インピーダンスマッチングがとれて反射がない状態が1、マッチングが取れていなければSWRが大きくなります。当時の私のアンテナではバンド毎に異なりますが、アンテナチューナを入れずに計測すると1.5から3くらいでした。マッチングが取れていない状態で送信し続けると、場合によっては電力増幅回路の素子を壊してしまいますね。わたしもSWRが大きい状態で無線機を運用していて2台ほど電力増幅のトランジスタを壊してしまいました(涙)。近頃の無線機にはSWRを表示するメータがほぼ装備されていますね。

さて、当時自宅に設置していたアンテナはWARCバンドをカバーしていませんのでIC-7300のアンテナチューナでは自動同調してくれませんでしたが、簡易版アンテナチューナのバリコンを回していったところ、IC-7300画面のウォーターフォールのレベルが大きく上がり、今まで見えなかった(聞こえなかった?) 信号が見えるようになりました。自作のアンテナチューナでは、マニュアルで調整しなければならないことや出力効率はそんなに良くはならないだろうとは思いましたがアンテナチューナで整合すれば今のアンテナでも10MHzにオンエアできそうだと思い込み、手動のHFアンテナチューナをつくるという決断を下しました。普通はこの段階で、アマチュア無線ショップやヤフオクに直行してアンテナチューナの購入や入札になるのでしょうが、自作の道を選ぶことにしました。

アンテナチューナにはT型やπ型など何種類かの配線方法がありますが、T型アンテナチューナを製作することにしました。本来ならば耐圧や可変範囲の広さ等を考慮して選ぶのでしょうが、製作例が多いように感じましたのでT型にしたという単純な理由です。

今回の記事は製作の説明を中心としていますのでアンテナチューナの動作原理の説明は省略します。

・アンテナチューナ仕様
アンテナチューナの簡単な仕様をまとめました。
① 屋内設置用T型アンテナチューナ
② 対応周波数バンド: 3.5MHz~28MHz (WARCバンドを含む)
③ 最大入力: 50Wを想定 (カムバック当時50Wで運用していました)

・回路図
回路はよく見かける普通のT型回路です。


図1 製作したT型アンテナチューナの回路図

・使用部品
自作したHF用アンテナチューナに使用した部品は次のようなものです。

① 可変コンデンサ (タイトバリコン: 160pF)
② 可変コンデンサ (タイトバリコン: 120pF)
③ コイル (タンクコイル: HF無線機用中古品)
④ ロータリースイッチ (バンド切替用: 1回路11接点)
⑤ M型レセプタクル (「M型メス」2個)
⑥ つまみ (ロータリースイッチ×1、可変コンデンサ用×2)

上記の部品のうち可変コンデンサとコイルは手持ちの部品箱に入っていました。これらは以前ヤフオクで入手した中古品です。一時は「トロイダルコアかホビンにエナメル線を巻いてコイルを作るぞ、コンデンサも作るぞ」と意気込みましたが、そこまでできるのかなという不安がよぎり、わずか一日で「部品は既製品」との結末になりました。(「“自作する”という決意はどうなったの?」と突っ込みが聞こえてきそうですが・・・)

以前入手したコイルは部品の説明中にHF無線機の部品と記載されていました。配線のためのラグ板の個数がすくないことから、3.5MHz、7MHz、14MHz、21MHzそして28MHz用かと推定しました。WARCバンド用の端子が見当たらないため、目測で10MHz、18MHz、24MHzの周波数に相当する位置を推定し、その位置にはんだ付けで配線を追加することにしました。


写真2 コイル(タンクコイル)

ネット上の製作記事や製品の回路図を見ると、手持ちのコンデンサよりももっと大容量のコンデンサを使用しているようでした。製作後に装置の試験を行い、マッチングがどこまでできるかを確認し、コンデンサの容量不足が見られれば大容量コンデンサに付け替えることにしました。

・製作
使用部品がそれほど多くありませんので、配線にはそれほど時間は必要ありませんでした。しかし、ケースの加工は時間がかかりました。アルミのシャーシなどは完成後の見栄えはよいのですが、あまり道具を持っていない私のような者には加工が大変です。写真3のような加工の容易なケースを100均ショップで入手してきました。


写真3 アンテナチューナ用ケース

高周波信号がこのケースのなかで暴れるわけですから、少しはシールド効果を持たせる必要があるかと考え、ケースの一部にアルミ薄板をはりました。これも100均一での購入品です。

・配線
実際の配線を写真4に示します。はんだ付け箇所はそれほど多くはありません。コイルにWARCバンドの端子がないため端子を付けずに直接コイルにはんだを載せました。はんだの量が少なかったため後の試験の時に気が付けば外れてしまっていました。しっかりとはんだを載せ、事後確認すべきでした。


写真4 配線

・完成
完成しました。外観はつぎのようなものでした。


(a)正面


(b)背面

写真5 アンテナチューナ外観

・使用方法
アンテナチューナの使い方ですが、次のように各部品を設定します。
① 真ん中のコイルをアンテナのバンドに設定します。
② 低出力で送信状態にし、アンテナ側のコンデンサを動かしてSWRが低く下がる点でとめます。
③ 同じように、トランシーバ側のコンデンサをゆっくり動かしてSWRが下がる点でとめます。
④ ②、③を繰り返してマッチングを行います。

・試験
製作したアンテナチューナがどれくらいのマッチング性能を持つのかをバンド毎に計測してみました(表6)。計測値はIC-7300画面上のSWR計を目視で読みました。SWRが3以上の場合は「3以上」と記載しました。アンテナは現在私が使っているマルチバンドの「万歳アンテナ」です。10MHzには対応していませんので10MHzではSWRは3以上となり、IC-7300のオートチューナを起動させてもすぐに停止してしまいマッチングできませんでした。製作したアンテナチューナではマッチング可能でした。(めでたし、めでたし!)

逆に、アンテナの調整がうまくできていてSWRが1のバンドでは、コイルの位置を調整したいバンドより高いバンドに設定しないとSWRを1に維持することができませんでした。またこのときにアンテナ側コンデンサの容量は最大値に達していました。コンデンサの容量不足なのかもしれません。

表6 自作アンテナチューナのマッチング性能

バンド (計測周波数) SWR (チューナOFF) SWR (自作チューナ)

7MHz(7.008)

1.5

1.0

10MHz(10.110)

3以上

1.5

14MHz(14.004)

1.2

1.0

18MHz(18.080)

1.0

1.0
(コイル位置を24MHzに変更してマッチング)

21MHz(21.020)

1.0

1.2
(コイル位置を24MHzに変更してマッチング)

24MHz(24.900)

3以上

1.5

28MHz(28.020)

3以上

1.0



後日談

アンテナチューナを自作後、ヤフーオークション(ヤフオク)で中古のアンテナチューナを入手しましたが、金額的には自作のほうが安価ではありましたが、見てくれや信頼性、安心感(?)などの点ではメーカーの製品がよいですね。

今はIC-7300にはヤフオクで入手したアンテナチューナがつながっていますが、この自作のアンテナチューナはIC-705につながっていて現在も稼働しています。IC-705用のアンテナチューナが発売されており興味をそそられますが、もう少し自作アンテナチューナを使っていようと思っています。そのためには、50MHz、144MHzと430MHzまで拡張せねば!、厳しい!

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