ジャンク堂
久しぶりに“今日のジャンク”です。今回のジャンクはAZDEN(アツデン)のDX-327というデスクトップマイクロフォンです。
ひょんなことから1980年頃に販売されていたと思われる、DX-327というマイクを頂戴しました。私は実物を見るのは初めてです。当時、コリンズのデスクトップマイク(SM-3)のそっくりさんということでそれなりに人気があったように聞きますが、ネットでググってもあまり情報がありません。
頂いたものは箱入りで、年代の割に綺麗です。残念ながら、取説などがなかったのでスペックは不明ですが、箱の横に貼られた値札をみると今はヤマダ電機となった神戸の星電社で\8kで購入されたようです。
頂いたときはYAESUの4ピンコネクタだった(元の持ち主は当時FT-101Eで使用していた)のですが、なかなか格好が良いのでハンドマイクしかない我がシャックのメインマイクにしようと、早速アイコムの8ピンコネクタに交換しました。しかし、ダイナミックマイクであるためか、感度がとても低く大声を出しても最大パワーに届きません。これでは使いものにならないのでジャンク箱行きになってしまいます。
そこで何とか使えるようにしようと改造を試みましたので紹介したいと思います。昔の無線機用のダイナミックマイクであれば同じように改造できると思うので、かつて愛用したマイクをもう一度復活させたいと考えておられる方への参考になればと思います。
先ずはDX-327をバラしてみます。最初にスタンド部分を外します。スタンドとマイクのベース部分はネジ込み式になっています。
次に、マイク根元のネジを外してマイク本体をバラしてみました。
先端と根元部分もねじ込みになっていて、回すと簡単に外れます。トランスは根元側に入っています。
また、筒の中にはスポンジが入っていました。
PTTスイッチの付いたハウジング部分の写真を取り忘れましたが、後ほど出てきます。
中身を確認したので、改造に取りかかります。
本来であればダイナミックマイクの良さを引き出すためにはもっと真面目に設計したマイクアンプを外付けすべきと思いますが、今回は簡単に感度不足を補うことを最優先にします。
そこで最近の無線機の付属マイクに使われているECM(electret condenser microphone)と同じような回路をマイクに内蔵してみることにしました。この方法は最小限の部品数で済み、ECM使用を前提とした最近のトランシーバと相性が良いと思ったからです。
回路は以下のような簡単なモノです。
マイクのトランス出力から、マイクケーブルに出ている線の途中にFETと抵抗、コンデンサをそれぞれ1個ずつ付けただけのモノです。FETのドレインの負荷抵抗は無線機内部のECM用直流供給用の抵抗になります。
元々、PTTスイッチがついているハウジングの内部でマイク(トランス)からの線と無線機へのカールコードが接続されており、そこにFETアンプを組み込みます。FETと抵抗、コンデンサはユニバーサル基板をカットしてその上に配線をしました。
この後、基板全体にテープを巻いてショートしないように養生します。
なお、オリジナルもマイクのシールド線の外皮(アース側)はハウジングのダイカストに玉子ラグで接続されており、これがないとハムが入ります。上の写真では黒いビニル線がグランド(ハウジング)へ接続する配線です(緑と白の線はPTTの配線です)。
FETは手持ちの昔懐かしいオーディオ用J-FETの2SK30を使いました。IDSSランクはYのものです。一応ノイズのことを考えて47kΩの抵抗は金属皮膜のものを使用しました。
なお、ゲートとソース間の100pFのコンデンサは高周波の回り込み防止です。マイクエレメントからFETまで少し距離があるので用心に入れています。ゲートのインピーダンスを47kΩと高くしているので、高域への影響を避けるためにコンデンサの容量は少なめにしています。マイクによってはドレインとソースの間にコンデンサを入れた方が良いかも知れません。ドレインとソース間にコンデンサを入れる場合は1000pFくらいの方が良いでしょう。最近の無線機にはモニター機能があるので電波を出しながらヘッドホンでモニターをして高周波の回り込みによる歪みがないか、確認をした方が良いでしょう。
取り敢えず、マイクとして普通に使えるようになりました。IC-7610に接続して別の無線機でモニターをしてみましたが音質は、普通というか平凡なモノです。最近のアイコムの固定機に付属されているHM-219と比べると低音が少し減った感じがします。感度はハンドマイクのHM-219より少し高くなりましたが、スタンドマイクとしてはもう少しゲインが欲しいところです。アンプにもう少しgmの大きなFETを使うと少しは感度が上がるかも知れません。
しかし、このマイクは机に置いたときの安定がよく、少々モノをぶつけても、ひっくり返る事がありません。PTTも使いやすく、めでたくシャックのメインマイクに納まることとなりました。
最近のトランシーバの付属マイクは100%といっても良いくらいECMが使われています。ECMはマイクユニット内にFETのアンプが内蔵されていることからマイク感度はダイナミック型より高く、また比較的低いインピーダンスで受けても感度低下がありません。そのため、最近のトランシーバはマイクアンプのゲインが低めで入力インピーダンスも数kΩ前後のものが多いようです。
ダイナミックマイクは一般的にECMに比べると感度が低く、また感度を少しでも稼ぐためにトランスで昇圧していることから、なるべく高いインピーダンスで受ける必要があります。私の記憶では、昔のダイナミックマイクは公称インピーダンスが50kΩくらいだったと思います。
そのようなダイナミックマイクを入力インピーダンスが低い、最近のトランシーバで使うと元々感度が低いダイナミックマイクの感度がますます低くなってしまい、十分な変調が掛かりません。
アマチュア無線の世界でも音質にこだわっている方々はECMではなくオーディオ用のコンデンサマイクやダイナミックマイクを使われますが、必ずマイクアンプを別に用意されています。
今回の改造はそのような本格的にダイナミックマイクを使いこなそうというのではなく、手持ちの古いダイナミックマイクを復活させてみたいと考えておられる方には手軽な方法ではないかと思います。
今回は2SK30という昔のFETを使用しましたが、最近のFETでも使えるものは色々とあります。Nchのオーディオ用J-FETでスペックシートにコンデンサマイク用などと書かれていれば、使えるのではないかと思います。
またECMを分解して中のFETを使うという方法もあります。試しに手持ちのECM(型番など不明)を分解してみましたので紹介します。大抵のECMは同じような構造になっていると思います。
今回はこのようなECMを分解してみます。
端子側から、先の細いニッパで外側のアルミケースを引きちぎっていきます。なおこのときにマイクのグランド側のパターンを確認しておきます。アルミケースと接触している端子がグランド側です。
アルミのケースを全部取り除いたところ。
上部の金属のエレメントをピンセットで外します。
樹脂のハウジング中央にFETのゲートの足が出ているので、これをピンセットで伸ばします。
そうすると、樹脂のハウジングが外れるので、基板に乗ったFETを取り出せます。
基板のグランド側のパターンがFETのソース(マイナス端子)で、もう一つの基板のパターンがドレイン(マイク出力端子)です。ソースとドレインを間違えると音が出ないので注意が必要です。
FETのゲートとソースの間に47kΩをはんだ付けします。なお、100pFはここでは取り付けていませんが、高周波の回り込みが心配な場合は47kΩと並列に取り付けると良いでしょう。
このままで配線することもできますが、ジャノメ基板に載せてみます。FETが乗った丸い基板の縁を少しニッパで切って平らにしました。
この方が後の配線がしやすいと思います。
この方法ではFETの素性が分からないのですがECMに使われているFETなので、このような改造には使えます。今回、私が分解したものでは2SK30A-Yのアンプとほぼ同じ感度でした。
録音などPAの世界ではダイナミックマイクのトランスを外して半導体アンプを組み込む改造をすることもあるようです。トランスを排除することで音質が向上するとのことですが、今回の改造はマイク感度優先のためにトランスは残しています。
それでは、Best 73 & 88!
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