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第三十二回 アナログスイッチの動作について

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Dr. FB

スイッチといえば、多くの人は図1に示したものを想像します。使い方はいたって簡単です。配線ははんだ付けが必要ですが、スイッチのオン・オフは指先でレバーを動かしたり、ボタンを押したりして開閉します。スイッチは、内部の金属接点が物理的に接触したり、離れたりすることで回路を開閉します。今回は、その機械式スイッチではなく、半導体によるスイッチ、通称アナログスイッチについて説明します。メカの部分がありませんので、接点不良になることはありませんし、チャタリングも発生しません。電気的に回路をオン・オフすることで使用用途が広がります。


図1 機械式スイッチの数々

MOSFETによるスイッチング動作について

回路のオン・オフを半導体で行う電子部品としてトランジスタやFET、ダイオードがあります。これらの部品は、機械式スイッチとは異なり、制御信号としてH/Lの電圧を加えることで半導体の二点間のインピーダンスをローインピーダンス、あるいはハイインピーダンスとすることでスイッチの機能となるオン・オフの状態を作ります。これら半導体で構成されるスイッチを一般的にアナログスイッチと呼んでいます。今回はその中でもMOSFETをベースにしたアナログスイッチICに焦点をあてて説明します。

以前、本ウェブマガジンのShort Breakで「シームレス電源切替器の製作」として、アナログスイッチの元となるMOSFETによるスイッチング動作を取り上げました。また、FBのトレビアでも「第二十六回 MOSFETを使ってみよう」の記事でも同様にアナログスイッチの動作を説明しました。

半導体によるスイッチングは汎用のバイポーラトランジスタでももちろん可能ですが、ここではスイッチングに適したMOSFETをベースとした回路からアナログスイッチを考えます。MOSFETでは、HあるいはLの制御信号をゲートに加えることでソース・ドレイン間を機械式スイッチと同様の導通(ローインピーダンス)・非導通(ハイインピーダンス)の状態を作ることができました。図2がその回路の一例で、アナログスイッチの元となる回路です。「シームレス電源切替器の製作」の中ではゲートに印加されている電圧が何らかの変化でゼロとなった場合、MOSFETのソース・ドレイン間があたかも機械式スイッチでON状態になったように導通状態となります。


図2 アナログスイッチの原理図

図1に示した機械式スイッチのオン・オフは、手でスイッチのレバーやボタンを動かします。アナログスイッチの場合は、制御信号によってオン・オフ動作が行われます。コンピュータプログラムのif文のような感じです。「制御信号がLであればソース・ドレイン間が導通状態となる」あるいはその逆で「制御信号がHの時は、ソース・ドレイン間が非導通になる」といった動作です。その状態変化をまとめたものが図3です。


図3 Nチャネル、PチャネルMOSFETの状態変化

4066アナログスイッチ

図2に示したスイッチング回路では、MOSFETのほかにR1やR2、あるいはR3の抵抗が必要となり、回路として動作させるにはそれら部品を基板に組む込み電子回路として完成させる必要があります。これから説明するアナログスイッチICの素子には、入力、出力、制御信号の三つの端子しかなく、簡単に使えるようになっています。

機械式スイッチの接続では、回路のホット側とコールド側の結線の区別はありませんが、図3に示した回路では、例えばソースとドレインの向きを変えて回路を組むと動作しません。使用には制約があり、それを機械式スイッチのように向きに関係なく使いやすくしたのが図4に示したアナログスイッチICです。今回使うICの品番はTC74HC4066AP(以下4066)で、データシートによるとQuad Bilateral Switchと記されています。ほかにもアナログスイッチとネット検索すれば多くのICがヒットします。

データシートによると、このICは高速CMOSタイプのアナログスイッチとの記載があります。ICはアナログあるいはデジタル信号の高速スイッチングが可能で、コントロール(制御信号)入力が Hレベルの場合、スイッチは導通し、Lレベルの場合は非導通となると説明されています。このデータシートを元に簡単な実験をしてみます。


図4 アナログスイッチ(4066)の真理値表

図5左は、このアナログスイッチの外観です。ディップタイプ以外のフラットタイプもありますが、今回は実験に都合のよいディップタイプを用います。図5右は、各ピンの接続図を図式化したものです。等価的にはこのような図が分かりやすいと思います。一般の機械式スイッチの場合、スイッチがオンになると導通状態となり、その間の抵抗値はほぼゼロΩとなります。ところがアナログスイッチの場合は、導通状態と呼んでいますが実際は数十Ωの抵抗があり、正確には左下の等価回路が適切かも知れません。4066のデータシート(図6)によるとオン抵抗はVccが9Vの時で50Ωと記されています。従って微小な電流をオン・オフさせる回路にはこの50Ωの抵抗も無視できないかもしれません。いずれにせよ50Ωはロジック回路やスイッチング回路では問題とならないレベルです。


図5 4066の外観とピン接続図


図6 4066の定格(TC74HC4066APのデータシートより引用)

アプリケーション(その1)

アナログスイッチを使ってLEDを点灯させます。LEDの点灯だけなら特にアナログスイッチを使う必要もありませんが、今回はその動作を見ることで敢えて使って実験を行います。図7の回路図で青色の破線で囲った部分が機械式スイッチを使ってLEDを点灯させる回路です。実にシンプルです。SWを閉じるとLEDが点灯します。

図7の右側がアナログスイッチを使用したLED点灯の回路です。機械式スイッチを使って点灯させる回路と比較すると随分複雑です。でも点灯部のスイッチングは機械式スイッチと同じ接続です。4066は1つのパッケージに4個のアナログスイッチが入っていますが、実験では1個しか使いません。アナログスイッチのオン・オフはこの回路では13番ピン(制御信号)にHあるいはLを印加するために機械式スイッチを使用していますが、実際の応用回路ではロジックの出力を13番ピンに加えることで回路の動作に応じてLEDの点灯、消灯を電気的に行うことができます。これがアナログスイッチの便利なところです。


図7 アナログスイッチを使ってLEDを点灯させる実験

今回使った4066では使用しない制御信号の入力端子はVccあるいはGNDに接続します。図7の回路では100kΩの抵抗を通してGNDに接続しています。直接GNDに接続しても問題ありません。VccにもGNDにも接続せず、宙に浮いた状態で放置すると内部の半導体スイッチが中途半端にオンとなり、4066ではLEDが薄っすら点灯します。このことはデータシートにも注意書きとして記載されています。

アプリケーション(その2)

4066を使い4入力のAND回路を作ることができます。4066のパッケージには4個のアナログスイッチが内蔵されています。この4個のアナログスイッチを図8のように全部直列に接続することで、ロジック回路(1)~(4)の出力が全部Hにならない限りトランジスタのベースには電圧が掛からず、リレーが働かない回路です。


図8 アナログスイッチを使った4入力のAND回路

参考

上に示しました2つのアプリケーションでは直流のスイッチングだけでしたが、アナログスイッチは我々が扱う高周波に対してもスイッチングができます。実験は行っていませんが、データシートによると出力が0dBmになるように入力信号レベルを調整し、それに対して出力が3dB低下したときの周波数は標準で200MHzとの記載があります。何かの折に実験を行いここで報告したいと思います。

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