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From Steve's Workbench

安価で効率の良い衛星用アンテナ
その2: 指向性アンテナ

JS6TMW Steve Fabricant (翻訳 JI1GYO 王新華)

先月の記事は、アマチュア衛星(VHF/UHF)通信用の無指向性アンテナについて書きました。今月は、安価で楽しく組み立てられ、衛星通信に非常に有効な2種類の指向性アンテナを紹介します。組み立ての詳細については、インターネットで情報を得ることができます。

指向性アンテナは、高周波エネルギーを特定の方向に集中させ、送受信時に等方性アンテナより利得を得ることができます(図1)。これらのアンテナの指向性は、干渉信号を減らすのに役立ちますが、通常、私たちは、より強い信号を送信し、弱い信号を受信できるように、利得が欲しいだけなのです。


図1. 指向性アンテナは放射された電力を集中させる。
ダイポール比の利得はdBdまたは単にdBと表記され、等方性アンテナの利得より2.15dB小さくなる。

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Q1. 指向性アンテナの種類を3つ挙げてください。

最初の答えは「八木」でしょうか? 八木宇田アンテナは何十年も前からハムに親しまれていますが、その面白い歴史を知っている人は少ないでしょう。八木宇田アンテナや、そこから派生したキュービカルクワッド、モクソン、ヘックスビームなどは、1つ以上の寄生(パッシブ)素子を使って、放射器からの放射の位相を変え、ある方向は強化し、他の方向は低減させるというものです。また、W8JK(HB9CV)アレイ、ログペリオディックアンテナ、反射板、ホーンアンテナなど、指向性のある位相関係を作り出すためにやや異なる方法が用いられています。

八木宇田アンテナの人気が衰えないのは、比較的小さなサイズで実現できる指向性と利得が一因です。2mで強い信号が欲しいと思っていた若い頃、私は図2のような32エレ八木アレイのためにお金を貯めましたが、最初に遭った暴風には耐えられませんでした。同じ前方利得で、風圧負荷がほんの小さな15エレの八木アレイに換えました。


図2. 144MHz用の32エレメントコリニアアレイ。このタイプは初期のレーダーでも使用された。

後述するヘリカルアンテナや、ひし形、Vee、スカイループなどのHF用ワイヤーアンテナも、指向性、利得が得られる狭い放射特性を持つアンテナです。

八木宇田アンテナについて詳しく見てみましょう。エレメントの配列はハムにはおなじみですが、その理論はかなり複雑です。


図3a、3b. 八木宇田アンテナの位相関係の概略。

やや長めの反射器は、駆動する放射器の後ろに、意図する送信方向と反対側に配置されます(図3a)。また、放射器の前方には、より短い導波器が配置されます。これらの受動素子(または寄生素子)は、放射器からエネルギーを受けて再放射するため、前方向の波は同位相になり、逆方向の波は位相がずれています。前方向の波は加算合成され、逆方向の波は部分的に打ち消されます(図3b)。


図4. 7エレ八木宇田アンテナの水平放射パターン。良好なF/B比と小さなサイドローブを示している。

無線通信において、帯域幅、F/B比、雑音指数などはいずれも重要なアンテナ性能ですが、ハムは通常、何よりも高い前方利得を求めています。八木宇田アンテナにはいくつかの特徴があり、主にアンテナのエレメント数が利得に影響します。反射器を追加すると約4~5dBの利得が得られ、最初の導波器で約2dB、さらに導波器を追加するごとに約1dBの利得が追加されます。エレメント間隔は利得に影響を与え、ある最適な間隔までエレメント間隔を広げるとより利得が得られます。反射器と第一導波器の位置が最も重要です。したがって、ブームを長くすれば八木アレイの利得は増えますが、アンテナを小型化する必要があるため、HFの八木アレイで本当に最適な設計になっているものはほとんどありません。しかし、VHFやUHFでは、エレメントの間隔が小さいので、より多くの導波器を使用することができます。図4は、7エレメント、ロングブームのVHF八木宇田アンテナの優れた指向性パターンを示しています。

アンテナの給電インピーダンスも重要な変数です。八木宇田アンテナの放射器は、50Ωよりはるかに低いインピーダンスを持つことがあります。エレメントの間隔はインピーダンスに大きな影響を与えるので、間隔を調整することは所望のインピーダンスを得るための設計手法の一つです。OWAアンテナ(Optimum Wideband Antenna)は給電インピーダンスが50Ωで、第一導波器が放射器に近いので簡単にわかります。


図5.放射器に接続されたヘアピン(ベータ)マッチ。

給電インピーダンスの整合によく使われる他の方法としては、ヘアピンまたはベータマッチ(図5)、ガンママッチ(図6)があります。ヘアピンマッチは非常に正確に作らなければならないし、ガンママッチはスライド接触部を持ち、場合によっては直列コンデンサを持ち、低VSWRのために調整しなければならないという欠点があります。もう一つの方法は、短い伝送線路のインピーダンス変換器を使用する「DK7ZBマッチ」(Qマッチ)です。


図6. 435MHz衛星通信用アンテナでのガンママッチ。

DIYでアンテナを作る人には多くの選択肢がありますが、私は簡単に作れて、あまり調整せずうまく機能し、優れた性能と信頼性を持つ設計を選びます。これらの条件をすべて満たしたアンテナの1つが、ダイポールのように直接給電する私の50MHzのOWAアンテナです。

移動運用の衛星通信では、市販の「アロー」アンテナが非常に人気で、多くの人が複製しています。2mと70cm用の小型八木アンテナが1本のブームに取り付けられており、手で狙えるほど軽量で、持ち運びも簡単です。2本の八木は直角でも同一平面でも構いません。ガンママッチを使用しますが、私が移動運用で使うシンプルな衛星通信用八木アンテナについて説明します。


図7. フォールテッドダイポール八木。

八木アンテナでは、フォールテッドダイポールを使用するのが一般的です。自由空間の300Ωのインピーダンスは導波器によって下げられ、同軸や並行フィーダ線に容易にマッチングさせることができます。何十年もの間、テレビアンテナは図7のような形をしていました。私のお気に入りの自作八木アンテナは、自由空間で約150Ωのインピーダンスを持つ4分の3の折り返しダイポールを放射器として使っています(図8)。他のエレメントを追加すると、インピーダンスは50Ω程度に下がります。2006年にWA5VJBがUS CQ誌に発表し、「Cheap LEO (Low Earth Orbit) Yagi」として知られるようになりました。J型ダイポールの長辺の中心は電圧ヌル点で同軸シールドに接続され、同軸中心導体はJの先端に接続されているので、構造は非常に簡単で、ハンダでの接続によりアンテナでの同軸コネクタは不要になっています。


図8a、8b 「Cheap LEO」J-ダイポール放射器は、八木に給電するための良い方法です。

WA5VJBは、コンピュータ・モデリングとフィールド・テストにより、144MHzでは2、3、4、6エレ、435MHzでは5、6、8、11エレの最適な長さと間隔のデータを得ました。私は、軽量の角材ブームを使用して、いくつかの“アロー”タイプのデュアルバンド八木アンテナを製作しました(図9)。これは、垂直方向の穴あけを簡単にし、エレメントを絶縁する必要性をなくします。エレメントはアルミパイプで、放射器は硬いがハンダ付けしやすい真鍮の溶接棒でできています。普通の144MHzの八木アンテナは少しの調整で済みましたが、この小型のアンテナのVSWRは小さな変化にとても敏感で第一導波器をわずかに曲げることにより、放射器を調整するよりも簡単に共振周波数に調整する良い方法でした。


図9. “アロー”デュアルバンド衛星通信用アンテナの“Cheap LEO”バージョン。
スマートフォンホルダーは、衛星追尾アプリを使うために取り付けました。

私が作った最長のCheap LEOは、当初2mが5エレ、70cmが10エレで、後に2mで2エレ、70cmで4エレを追加できるようなブームセットを作り拡張しました。仰角20度固定で取り付け、これで何百回も衛星を介して交信しました。その後、RS-44が登場しました。


図10. 自作の方位/仰角ローテータに別バージョンのアンテナを取り付けたもの。
(楽しいプロジェクトですが、屋外で常時使用するにはあまり向いていません)。


図11.偏波を変えることができる市販のデュアルバンド衛星通信用アンテナ。

ロシアのリニアトランスポンダ衛星RS-44は、その広い通信可能範囲によりすぐに衛星通信DX'erに人気が出ましたが、その信号はフェージングに悩まされていました。ほとんどのアマチュア衛星は単純なユニポールアンテナを使用しているので、地上局の偏波を変えない限り、衛星が回転する際に偏波面が変わり信号損失が発生します。また、偏波フェージングは、信号が大気を通過する際のファラデー回転によっても発生します。手持ちのアロー型アンテナをひねるのは楽しい(見物人も楽しい)ですが、地上局では垂直・水平アンテナの切り替えや円偏波という対応が必要です。M2 LEO-PACK(図11)のようなやや高価な地上局用アンテナは、リレーとフェーズラインを使って偏波を切り替えています。


図12. 2つの交差したダイポールによる円偏波アンテナ。


図13. ブーム上で同一のアンテナを離して配置した円偏波アンテナ。

幸いなことに、右旋円偏波だけでもアマチュア衛星には有効であり、アンテナはかなり簡素化されます。これは、電気的な遅延(図12)または物理的な遅延(図13)のいずれかによって作られる90度の位相差を持つ交差したアンテナを使用することによって得ることができます。2番目の方法は、DIYビルダーが正確な位相関係を得るのがより簡単な方法です。私は「Cheap LEO」設計を用いて、52cmずらした2つの6エレ144MHz八木アンテナを作りました(図14)。両図に示す75Ωの同軸マッチング部を使えば、衛星サブバンドで低いVSWRを得るための調整は必要ありませんでした。


図14. 私の6エレ144MHz用円偏波八木アンテナ。

70cmの円偏波アンテナも必要になってきました。クロス八木は調整が難しそうだし、八木はもう飽きました。ヘリカルアンテナは宇宙通信に広く使われていて、利得が高く帯域も広いので、試してみたらどうかと地元のハムから勧められました。私は、このアンテナはハムが発明したもので(フェーズドアレイのW8JK)、またかつて私の教授が1960年代に重要な改良を加えていることを知りました。何より、非常にシンプルで(図15)、簡単に作れそうだったのです。


図15. ヘリカルアンテナの主要部(B)中央支持部、(C)同軸ケーブル、(E)ヘリカルエレメント絶縁支持部、(R)反射板、(S)ヘリカルエレメント。

軸性モードで動作するヘリカルアンテナは、軸方向に指向性を持つ放射パターンですが、八木・宇田アンテナに比べサイドローブが強くなります(図16)。軸方向モードは、螺旋の円周を約1波長、間隔を1/4波長とすることで得られます。巻き数が多いほど利得が大きくなります。螺旋単体では軸方向の両方に放射されるので反射板が必要であり、給電インピーダンスは100~200Ωとなります。


図16. ヘリカルアンテナの水平面または垂直面における典型的な放射パターン。

ヘリカルアンテナを説明することと、実際にどのように機能するかを知ることは全く異なります。非共振進行波モードで放射され、回転する電場と磁場がアンテナの両端から円偏波ビームを発生させます。1波長の円周と1/4波長のターン間隔があるので、八木宇田アンテナと同じように軸に沿って位相補強が行われる様子が目に浮かびます。螺旋形状が円偏波をもたらすことは明らかなようですが、私の想像はそこで止まってしまいますので、元の話題に戻りましょう。

導電性の螺旋エレメントと三日月形のマッチングスタブ、そして小さな反射板があるだけなので、構造はとてもシンプルです。初めての経験でしたが、すべてのパーツをどのように取り付けるか考えるのが楽しかったです。軽量化のために、アルミ線と25mm角の木製ブーム、そして螺旋エレメントを支えるための木ダボを使いました。ブームは合板の反射板フレームにあるハブにフィットするので、メッシュ反射板に対して螺旋と銅製のマッチング部分の位置を調整することができます(図17)。


図17. ヘリカルアンテナの最初のターン、反射板、銅製のマッチングライン、そして自慢の我が作業台。


図18. VK5ZAIが製作した144MHzヘリカルアンテナの詳細。

図18は、AMSAT-UKのホームページの記事から引用したものです。寸法は144MHzのものですが、組み立てと調整は私の435MHzバージョンと同様です。オンライン計算では、他の周波数での螺旋の直径、間隔、エレメントの長さを知ることができます。1.8mのブームで9ターン、14dBの利得は実用的と思われます。2.5mmのアルミ線を螺旋の直径に近いコイルに包装されたものを購入しました。そのため、組み立ては非常に簡単でした。まず、銅製マッチング部にしっかりと接続し、コイルをスリンキーのようにゆっくりと外側に引っ張り、木ダボに固定しました(図19)。


図19. ブーム位置の反射板のハブ調整と背面同軸コネクタ。

PL-259コネクタを合板フレームに取り付け、グランドを反射板に接続し、中心を銅製マッチング部にハンダ付けしています(図19)。400~500MHzで完全なVSWRを得るためには、マッチング部を狭くする必要がありました(図20)。銅製マッチング部と反射板の間隔は非常に敏感でしたが、一度調整するとVSWRは安定し、アンテナをマストに取り付けても変わりませんでした。


図20. ブームの位置で調整し広帯域で低VSWRとなった。

ヘリカルアンテナは非常に良い働きをします。八木アンテナの時のようにRS-44のダウンリンクを聞くためにプリアンプを必要とすることはほとんどなく、フェージングもかなり少なくなっています。2mのクロス八木アンテナもよく機能しています。私は両方のアンテナをグラスファイバーのクロスブームに取り付け、塩ビパイプと継手を使って垂直マストに固定させました。また仰角を15度程度に固定し、6000km以上離れた局ともRS-44を介して交信しています。

クロス八木アンテナとヘリカルアンテナは、アマチュアの地上局としては高性能で低価格な組み合わせで、作るのがとても楽しかったです。材料はすべて(グラスファイバーのクロスビームを除く)地元のDIYショップで入手し、総費用は市販のアンテナシステムに比べてほんのわずかでした。

参考文献
図1: https://www.ahsystems.com/EMC-formulas-equations/images/Antenna-gain-dBi.png
図2: https://www.rfcafe.com/references/qst/images4/beam-antenna-144-mhz-qst-december-1953-2_small.jpg
図3a、3b: ウィキペディア(英語版)
図4: https://antennas-amplifiers.com/product/4meter-antenna/70mhz-7-element-antenna-4-meter-yagi/
図5: https://mfjenterprises.com/products/vb-23fm
図7: https://www.tutorialspoint.com/antenna_theory/images/construction_yagi_uda_antenna.jpg
図 8a、8b: https://www.wa5vjb.com/yagi-pdf/cheapyagi.pdf
図12: https://www.qsl.net/dk7zb/Cross-Yagi/crossyagi.htm
図13: https://www.qsl.net/sv1bsx/antenna-pol/polarization.html
図15: ウィキペディア(英語版)
図16: https://www.antennatheory.com/
図18: AMSAT-UK

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