Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

日本全国・移動運用記

第81回 北海道道央方面移動(前編)

JO2ASQ 清水祐樹

2022年も、4月末から5月初めの大型連休に北海道へフェリーで移動して、長期間の運用を行いました。その様子を2回に分けて紹介します。

寒暖の差に耐えられるように、重装備で移動

今回は道央方面への移動で、移動距離は比較的短い行程になりました(図1)。特にリクエストが多かった市町村は、CWの運用局が少ない山越郡長万部町、陸地がわずかしか無い珍しいグリッドロケータPN92がある久遠郡せたな町、運用場所の確保が難しい札幌市中央区、町の数が多い雨竜郡(空知)、日本で最も人口が少ない市である歌志内市、などでした。

2021年との違いは、フェリーを舞鶴港⇔小樽港から敦賀港⇔苫小牧東港に変更したことです。1日3~4か所のペースで、5:30から18:30頃に運用するように予定を組みました。夜間は野生動物との衝突の可能性があるため、そのような道路はできるだけ避けるようにしました。


図1 今年の移動ルート

5月初めの北海道は、日によって、また地域によって気温の差が激しくなります。2021年の道東移動では雪が降ったほか、それ以前には内陸部で最高気温が30℃を超えたこともありました。気温の変化に対応するため、冬物から夏物まで多くの種類の衣類を持参しました。

強風の日が多いため、アンテナは接触不良が生じにくい、ビニル線を沿わせた釣竿と、オートアンテナチューナーを主に使用しました。この詳細は2020年9月号などで説明しています。夜のローバンド運用でリクエストが多く、風が無い時には、1.9MHz帯の受信性能に優れた1/4波長逆L型アンテナ(2013年10月号)を設置しました。

無線機の電源に鉛シールドバッテリーを使うと、低温により電圧が低下して、バッテリー直結での50W出力が難しくなります。そこで、今回はリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(12V 100Ah)を使用しました(写真1)。使用方法は2022年1月号のJF3LCH永井さんの記事などをご参照ください。このバッテリーは残容量が低下しても12V以上の電圧が確保できるため、50W出力で長時間の運用ができます。重量は約11kgで、片手で持ち上げて運搬が可能です。

バッテリーは2個を持参し、走行中に充電して、電圧が低い(残容量が少ない)方の1個を宿に持参して充電しました。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは満充電での保管が好ましくないとのことで、満充電にした場合はある程度使用してから長期保管しています。


写真1 無線機の電源として使用したリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(写真中央にある、緑色のラベルが付いているもの)この写真は、2022年4月17日に開催された ハムらde無線フェア における筆者の出展。

行き帰りのフェリーでは、サテライト通信に大苦戦

昨年と同様、フェリーに2台のIC-705を持ち込んでサテライト通信にチャレンジしました(写真2)。室内での運用で、モードはCWのみです。昨年との違いは、今年は使える衛星の種類が少なく、ダウンリンクが強力なXW-2B、XW-2Fなどが使えなくなった点です。

運用を開始すると、衛星のダウンリンクがノイズのためほとんど聞こえませんでした。145MHz帯の受信はホイップアンテナで+10dBほどノイズが振っており、435MHz帯の受信はノイズは少ないものの、ダウンリンクの受信が極めて困難でした。筆者の推測ですが、窓ガラスに紫外線カットの加工がされていて、電波が通過する際の減衰が大きいことも影響するようです。

結果として、行きは1QSO、帰りは3QSOに終わりました。自局のダウンリンクは相手局には良く聞こえていたとのことですが、ノイズのため呼んできた局のコールサインは判別が困難でした。また、外洋を航行中はインターネットが使えないので、状況をリアルタイムで確認できませんでした。

次回は受信能力を向上してチャレンジしたいと考えています。


写真2 フェリーでの運用の様子

1日目(4月28日) 厚真町から開始

行きの乗船日、4月27日の名古屋の最高気温は26.1℃でした。北海道では夜になると0℃近くになる可能性があり、さらに車中泊では温度差に体が対応できない可能性があります。完全防寒装備で乗り込んだところ、幸いに最低気温は5℃程度で、冷え込みはあまり感じられませんでした。

フェリーから下船した後、近くの勇払郡(胆振)厚真町で運用を開始しました。以前、港の近くの真っ暗な公園で運用していたところ、逆L型アンテナにキツネが引っ掛かったことがあるため、国道に隣接した明るい公園で運用しました。ローバンドのコンディションはまずまずで、3.5MHz帯では沖縄からも呼ばれました。

2日目(4月29日) 壮瞥町、室蘭市で着実にQSO数を重ねる

2日目は登別市で運用を開始し、室蘭市、伊達市、有珠郡壮瞥町に移動しました。室蘭市の市街地では周囲が開けた場所が見当たらないため、海岸近くにある公園で運用しました。有珠郡壮瞥町も平地が少なく、山に囲まれた場所ではサテライト通信の運用に支障があるため、山の上にある公園の展望台で運用しました(写真3)。天気が良く、日中の気温が上がって快適な陽気になり、HF帯の伝搬のコンディションも悪くはなく、まずは目標の1日1,000QSOをクリアしました。


写真3 有珠郡壮瞥町での運用の様子

3日目(4月30日) 午後からは、土が巻き上げられる強風に

この日は虻田郡(胆振)洞爺湖町、虻田郡(後志)喜茂別町、留寿都村、真狩村に移動しました。朝の冷え込みが厳しかったものの、気温は徐々に上がりました。しかし風が次第に強くなって釣竿アンテナが大きく曲がるようになりました。

午後からの真狩村移動では、強風で畑の土が巻き上げられて視界が悪くなり、最も厳しい状態では2台前を走っている車が見えなくなるほどでした。土の影響を受けにくい、市街地にある公園で運用しました(写真4)。伝搬のコンディションはあまり良くなく、国内向けの電離層反射は18MHz帯までが限界の様子でした。


写真4 真狩村での運用の様子

4日目(5月1日) 雨の1日、コンディションもあまり上がらず

朝から雨が降り続きました。山越郡長万部町は、市街地にある公園で運用しました。無線機用バッテリーの容量は十分に確保されており、運用中はアイドリングの必要が無いので、住宅地での運用も問題ありません。瀬棚郡今金町では南側が開けた河川敷、久遠郡せたな町は少し高い所にある公園で運用しました(写真5)。せたな町では、グリッドロケータPN92で運用するため、ID-52でグリッドロケータを確認しながら移動しました。

リクエストが多かった地域だったにもかかわらず、伝搬のコンディションがあまり良くなく、7MHzと10MHzでの交信が多くなりました。


写真5 せたな町での運用の様子

5日目(5月2日) 2日続けての雨、雷で早目の撤収

寿都郡黒松内町、寿都郡寿都町、磯谷郡蘭越町、虻田郡(後志)倶知安町と移動しました。このあたりは広い平地が少ないので、運用しようとする衛星の方向に山が無い場所を選んで運用しました(写真6)。前日に続いて雨が断続的に降っており、サテライト通信用アンテナを車から出し入れするたびに全身を拭きながらの運用でした。

倶知安町では、ようやくコンディションが上がってきて28MHz帯でも交信できるようになったものの、雷が接近したことでノイズが連続して発生するようになり、安全面も考えて早めに撤収しました。


写真6 蘭越町での運用の様子

(次号 後編に続く)

日本全国・移動運用記 バックナンバー

2022年6月号トップへ戻る

次号は 12月 1日(木) に公開予定

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.