Short Break
2023年6月15日掲載
日本の南を進んだ台風2号や前線の影響を受け、西日本や東日本の太平洋側では「線状降水帯」が相次いで発生。近畿、東海、関東地方では記録的な大雨となり、各地に大きな被害をもたらしました。私の住む大阪では、その大雨の翌日もまだ細かい雨が降っていましたが、時おり雲の間から差し込む太陽光線できれいな虹を見ることができました。
さて、その虹を構成するレインボーカラーを私たち日本人は「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の7色といっています。その7色を円板に均等に塗り、それを回転させると何色に見えるのだろうかと疑問が湧きました。
絵の具の色を混ぜ合わせると黒になり、赤、緑、青のLEDの光を混ぜると白になると何かの書物で読んだことがあります。私の周りにいる人たち10人に尋ねてみました。答えはばらばらでした。「実験で試してみよう」ということになり、その実験を紹介します。
黒と答えた人が4名と圧倒的に多く、続いて白が2名でした。それぞれの回答者の答えを図1にまとめました。
図1 10人の回答
まず、7色を均等に描いた円板をパソコンで作ります。単に赤色といっても薄い赤もあれば濃い赤もあります。個人差をなくすために、7色を16進数のカラーコードを用いて表現します。カラーコードは、ネット検索で例えば「赤色 16進数」といった具合に検索すればすぐにヒットします。この要領で7色のそれぞれの色をパソコンで調べた16進数を図2に示します。
図2 レインボーカラーと16進数回答
ネット検索した16進数のカラーコードを図3に示すHex(H)の入力窓にパラメータとして入力し、右上の[OK]ボタンを押すと、その色を描くことができます。
図3 16進数のカラーコードを入力して7色を作る
図4のように円板を7等分し、それぞれのエリアにレインボーカラーの7色を塗ります。これをプリンタでカラー印刷し、印刷したものを厚紙に糊付けしたものをハサミできれいに円板状に切り取ります。プリンタによっては、若干彩度が異なりますが、そこは無視して進めます。
図4 レインボーカラーの円板を製作
プラモデル用のモータを用意します。今回準備したものはDC 3Vのモータです。そのモータと乾電池ボックス、それに回転を制御する電子回路を板の上に取付けます。円板の回転だけなら、モータに電池を直結すれば1分もあればできます。しかしそこは月刊FBニュースの記事として少し電子回路を含めます。ツマミを回すことで連続的に回転数を変化させることができます。その装置が図5です。
図5 円板を回転させる装置
装置のスイッチをオンにし、徐々に回転を上げていくと円板の色が変わっていくのが分かります。低速のときは、目で7色を追いかけることができましたが、高速回転になるにつれ、色が混ざって見えます。色は屋内と屋外では見える色が若干異なりました。
図6 屋内での撮影(シャッタースピード1/10)
屋内では茶色に見えます。(図6) また条件によってはうすいグレーにうすい赤みを帯びた色に見えるときもあります。屋外では屋内で見えた色より若干全体的に薄くなりますが、一部の人の答えのように「白」にはなりませんでした。
色彩を扱うデザイナーのように、これまで色について詳しく勉強したことがありませんので私にとっては実験の結果が全てです。しかし、実験装置の使い方や円板の出来具合、あるいはプリンタの色のばらつき等もあるかも知れません。「実験結果はこうなったが、理想的にはこのようになる」といった理論があるはずです。
私たちが使うパソコンのモニター画面はミクロ的にはRGB(Red・Green・Blue)の発光体で構成されており、それぞれがフル点灯すると「白」になることは知っています。このことを前提に実験を行いましたが、「白」にはなりませんでした。円板に塗った7色は発光体ではないからかもしれません。
三原色と色の混合と題して「加法混合・加法混色」と「減法混合・減法混色」の違いを詳しく説明されているのは、東北芸術工科大学デザイン工学部プロダクトデザイン学科教授であり、さらに東北大学情報知能システム研究センター特任教授をされている酒井聡氏。
このお方に今回の実験結果を説明し、高速回転した円板がなぜ白色にならなかったのかズバリ問い合わせました。初めての問い合わせでもあるのに時間を割いて頂き、下のようなていねいな説明を受けることができました。
参考記述 2023年6月6日 コンピュータ基礎演習 No.8 https://sakaiso.com/sakaiso/?p=4043
赤、緑、青の三色を均等に塗りつぶした円板を高速回転させると教授が言及されたように黒っぽくなりました。正確には屋内では濃いグレー、屋外では屋内よりやや薄いもののグレーに見えることが観察されました。(図7)
図7 新たに製作した円板にて再実験
理論的には黒になるようですが、円板にプリンタで印刷したものは自然界の光を表面で反射し、その発光体が混ざることで白になるものの、絵の具を混ぜると黒くなる現象の二つが混ざり合ってグレーに見えているのではないかとの筆者の勝手な推測です。
いずれにせよ、上記の方法で製作した円板を回転させると実実験では白でもなく黒でもない、どちらかというと濃いグレーのようになりました。
CL
<参考>
酒井聡氏
●学位 DEGREE
博士(芸術工学)(東北芸術工科大学)
●所属 CAREER
・SAKAI DESIGN STUDIO 代表
・東北芸術工科大学 デザイン工学部プロダクトデザイン学科 教授
・東北大学情報知能システム研究センター 特任教授
●東北芸術工科大学大学院博士課程にて、「音、振動、光の共調による感性表現の研究」を研究テーマに創作研究活動を行った。その知見から、現在では新しいデジタルサイネージシステムの研究開発や自動車内装部品のインタフェース研究などを手がけている。
同氏のホームページ (https://sakaiso.com/sakaiso/)のBIOGRAPHYより引用
参考記述 2023年6月6日 コンピュータ基礎演習 No.8
https://sakaiso.com/sakaiso/?p=4043
今回の月刊FBニュースの記事では、氏の専門分野である三原色と色の混合と題して「加法混合・加法混色」と「減法混合・減法混色」の違いを詳しく説明されている記事がきっかけとなり、実験結果を理論的に考察して新たな実験方法を提案していただいた。紙面ですがご協力に深く感謝いたします。
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