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海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~

その123 今回で海外での運用の紹介は終わります 2002年
「あの人は今(第48回・最終回)」JF3PLF杉浦雅人氏

JA3AER 荒川泰蔵

2023年6月1日掲載

今回で海外での運用の紹介は終わります

今回は2002年の全大陸で、今回で海外での運用の紹介は終わります。次回はエピローグとして10年間余りをかけて紹介させて頂きました記事を振り返ってのエピローグにしたいと考えています。2002年のSEANETコンベンションはオーストラリアのパースで開かれ、多くの日本人が参加して特別記念局VI6SWAのゲスト運用を経験しました(写真1)。尚、今月の「あの人は今(第48回・最終回)」は、JF3PLF杉浦雅人氏の紹介です。


写真1. オーストラリアのパースで開かれた、第30回SEANETコンベンションの参加者達。

2002年 (台湾 BX2/JA3DYU)

JA3DYU太宰正昭氏は、台湾でのBX2/JA3DYUの運用に付いて手紙で知らせてくれました(写真2~4)。「-手紙より抜粋- 今年はサイゴン行きを中止し、台北の連中に知らせたら、局免を発給するので来ないかと誘いを受けました。局免は中華民国業餘無線電促進會(CTARL)が保証するとの事で、パスポートの写し及び局免の写しをFAXで送りました。費用は無料で、有効期間は3月12日より3月31日までの免許を得ました。当初電信のみ(3.5及び7MHz)を予定していたのですが、14MHzの馴染みの局よりSSBに出る様に頼まれ、マイクロフォンの提供を受け、数局とリポートしたのみで、3.5MHzに出ましたが、5局で目的は果せました。目的はサイゴン同様で、アンテナの型式及び高さにより、どの様に強さが変化するのかの確認です。3月13日より17日まで空に出ました。13日には連中が歓迎会を開いてくれました。今回の好意に対して、アンテナアナライザー(クラニシBR-200)、7/21MHzダイポール、IC-706、マイクロフォンをCTARL北部分會に寄贈致しました。(2002年3月記)」


写真2. BX2/JA3DYU太宰正昭氏の短期免許状。(右)使用可能周波数などの規則書。


写真3. BX2/JA3DYU太宰正昭氏と仲間達の共用QSLカード2種。


写真4. 東京ハムフェアー2001にて、お世話になった台湾の友人BX2AF劉清林さんを案内するJA3DYU太宰正昭氏(右側)。

2002年 (オーストラリア VI6SWA, VK6AER)

JA3AER筆者は、SEANETコンベンションの特別局VI6SWAを運用した時の事を記録していました(写真5~9)。「2002年11月にオーストラリアのパースで開催されたSEANETコンベンションに参加する為、XYLと共にシンガポール経由でパースに到着したのは深夜であったにもかかわらず、パース空港ではSEANETの旗を持ったVK6XC, Benさんが出迎えてくれ、SEANETコンベンションの会場となったAcacia Hotelまで送ってくれました。その後別便で日本から到着したメンバー達も、ホストクラブのメンバーVK6YLW, Lik Weiさん達が手分けして出迎えてくれたようで、コンベンションを主催する意気込みが感じられました。


写真5. (左)SEANETコンベンションの会場になったAcacia Hotel。
(右)観光地でバスから降りて歓談する参加者達。左からJA1BRK米村さん、JA3AER筆者、その向かい側9M2KN, Dr. Kenさん、JA8OW谷本さん。

ホテルの59号室には既に特別局VI6SWAが設置され、参加者による運用が始まっていました。TS-570Sに3階建屋上のバーチカルアンテナの他、2m用のリグとアンテナが用意されていましたが、そこへ参加したJA1BRK米村さんとJA1RJU小笠原さん達は、持参した6m用のリグとビームアンテナを急遽設置して、合わせて3波が同時に出せるようになりました。この特別局VI6SWAは、SEANETコンベンションへの参加者達がゲストオペを許されていましたので、私も14MHzと21MHzのSSBで運用させて頂き、11局とQSOしました。(2003年1月記)」


写真6. (左)VI6SWAを運用するJA3AER筆者。(右)VI6SWAのQSLカード。


写真7. SEANETコンベンション2002年を記念した郵趣カバー。オーストラリアのアマチュア無線とWIAの75周年を記念して、1985年に発行された記念切手付き封筒に、コアラの切手を貼り足しパース中央郵便局の2002年11月1日付け消印を得て、コンベンション参加者のサインを貰った記念品。


写真8. (左)晩餐会でVKの女性たちのダンスを観賞。(右)VK6XC, Benさんから、SEANETコンテスト入賞の表彰状を受け取るJA3AER筆者。


写真9. 晩餐会では、日本人グループが日本の歌を合唱した。

JA3AER筆者は、SEANETコンベンションの特別局VI6SWAのシャックを借りて、またそこでお会いしたVK6BEC西浦さんのシャックを訪問して、事前に取得しておいたVK6AERのコールサインで運用させて頂いた時の事を記録していました(写真10)。「SEANETコンベンションに参加の後、パース郊外にお住まいのVK6BEC(7N3BEC)西浦さんのシャックを訪問し、事前に取得しておいたVK6AERのコールサインで21MHzのSSBでQRV、JAIGネットへのチェックインを含めJAを中心に約50局と交信させて頂きました。西浦さんはHFでは勿論、インターネットのeQSOでもアクティブです。(2003年1月記)」


写真10. (左)VK6BEC西浦さんのシャックにて、西浦さんと。
(中央)VK6AERのQSLカード。(右)VK6AERの免許状。

2002年 (シンガポール ex.9V1PJ)

オーストラリアの帰途、ex.9V1PJとしてシンガポールに立ち寄り、9V1PJ時代のQTH辺りを散策したり、シンガポールでアクティブな9V1YC, Jamesさんの事務所に訪ねたりしました。また、9V1UU佐藤さんとEyeball QSOの後、現地の旧友との食事会に誘って頂いて、懐かしい現地のハムとの再会をした他、9V1DJ(JA3KAB)島津さんが、在シンガポールの日本人ハムを誘って夕食会を開いて下さるなど、多くのハム達とEyeball QSOを楽しませて頂きました。(写真11~14)


写真11. (左)筆者が1968年ごろ9V1PJでQRVしていたゲストハウスがあった場所「10 Nassim Rd.」は、サウジアラビアの大使館になっていた。
(右)シンガポールでアクティブな9V1YC, Jamesさんを事務所に訪ねた。彼はマッキントッシュのPCを駆使し、世界の主なDXペディションの動画を編集中であった。


写真12. (左)シンガポールではいつもお世話になる9V1UU佐藤さんが、電気店街を案内してくれた。
(右)9V1UU佐藤さんのシャックにて、佐藤さんと。


写真13. (左)9V1UU佐藤さんが誘ってくれた海鮮レストランにて、左からex.9V1PJ筆者、9V1WD, Ianさん、9V1UU佐藤さん、9V1NQ, Joeさん、9V1OK, Frankさん。
(右)9V1OK, FrankさんのQSLカード。


写真14. (左)シンガポールの日本レストラン「新宿」の前に立つex.9V1PJ筆者。
(右)レストラン「新宿」にて、左から9V1NC(JM1NCA)太田さん、9V1YJ(JA8CSW)佐々木さん、ex.9V1PJ(JA3AER)筆者、9V1DJ(JA3KAB)島津さん

2002年 (西マレーシア 9M2KE)

JA3AER筆者は、1998年にシャープ株式会社を定年退職後、同社の人材開発センターの非常勤講師として2002年までの4年間勤務し、マレーシアに幾つかある関係会社の社員研修に出張する事があったので、その機会に現地のハムを訪ねたりしていて、2002年9月の記録を残していました(写真15~19)。「2002年9月、マレーシアのジョホール州バツバハ(Batu Pahat)にあるテレビの生産会社(SREC - Sharp Roxy Electronics Corporation)と、VTRの生産会社(SMC - Sharp Manufacturing Corporation)の従業員の研修の為出張した際、日本からの駐在員にも会ったが、その中にはアマチュア無線家もおられ、仕事以外にアマチュア無線の話にも花が咲きました。


写真15. (左)SRECにて、駐在員の9M2AKI(JE1BOI)丸山昭治さんとJA3AER筆者(右端)。
(右)SMCにて、駐在員を含む現地社員達とJA3AER筆者(左端)。


写真16. (左)SMCの玄関にてJA3AER筆者。(中央)幹部との会議風景。(右)従業員への研修風景。

ペナン近郊のケダ州スンゲイペタニ(Sungai Petani)にあるシャープのオーディオ製品の生産会社(SRC - Sharp Roxy Corporation)には、以前にもゲスト運用させて頂いた9M2KE河野俊一さんが駐在しておられ、今回も仕事の合間にそのシャックに招いて頂き、9M2KEをゲスト運用させて頂きました。幸いコンディションも良く、21MHz, SSBでJAを中心に50数局と交信することができました。


写真17. (左)9M2KEをゲストオペするJA3AER筆者。
(右)9M2KEのQSLカードを貼ったゲストオペのログの一部分。

この時、9M2KE河野俊一さんには、当地のアマチュア無線の長老であり、ペナンで開催された第1回SEANETコンベンションに参加された9M2FK, Esheeさんのシャックへ案内して頂き、久し振りにEsheeさんにお会いしました。ペナン近郊でアマチュア無線を開局する日本人は、少なからず彼のお世話になっているようです。また、ペナンで毎週金曜日に、ローカルのハムが集まるオープンエアーミーティングにも案内して頂き、9M2TO出雲さん他、現地のハム達も紹介して頂きました。その中にはSEANETコンベンションで会ったことのある人達もいて歓談することができ、楽しく有意義な時間を過ごさせて頂きました。


写真18. (左)ペナン地域の長老9M2FK, Esheeさんのシャックにて、EsheeさんとJA3AER筆者。
(右)ペナンのオープンエアーミーティングにて、後列左から9M2KE河野さん、JA3AER筆者。後列右端が9M2TO(JA0DMV)出雲さん。

東南アジア駐在時の1969年頃クアラルンプールでお世話になった旧友9M2TA, Ongさんが、ペナン近郊に転居したと伺っていたので、この機会に旧交を温めたいと事前に連絡しておいたところ、XYLさんと共にホテルまで愛用のベンツで会いに来てくれました。そしてアテンドしてくれているSRCの現地人スタッフと共に、彼のシャックまで案内して頂きました。


写真19. (左)愛用のベンツでホテルまで会いに来てくれた9M2TA Ongさんご夫妻とJA3AER筆者。
(右) 9M2TA, Ongさんのシャックにて、OngさんとJA3AER筆者。

2023年 (西マレーシア 9M2JKL)

いきなり現在の2023年と、21年もとんだ番外になりますが、4月号の当連載記事(その121)の(西マレーシア9M8AER/2)の項で紹介させて頂いた、クアラルンプールにある日本人クラブのクラブ局9M2JKLについて、最近信号を聞かないが、3月号の当連載記事(その120)の「あの人は今第45回」JR4PMW河野俊一氏の最後の「マレーシアの現状」の項で述べておられる、外国人に対する免許が厳しくなってきている為でしょうか、との複数の読者の方々から問い合わせがありましたので、9M2JKLを管理しておられる9M2BZ(JH1LKO)鶴岡愼一郎氏に問い合わせていましたところ、メールで近況をお知らせ頂きましたので、ここで紹介させて頂きます(写真20)。「9M2JKLは日本人会の指示によりコロナ以降休止状態でしたが、現在は活動が認められています。現状では帰国者もあり部員が減少していますが、出来る限り活動をするつもりです。現用中のリグはFT450,TS940で、FT8での運用も出来る様になりました。課題はアンテナの整備ですが、これはなかなか進んでいません。ライセンスは最近改革がありましたが詳細は調査致します。最近JG0AWE局が9M2のライセンスを申請した様です。9M2JKLのシャックは赤沼さん(ex.JJ1DOY)と小生が管理しています。(2023年4月記)」


写真20. (左)9M2JKLのシャックと、(右)そのQSLカード。

「あの人は今 (第48回・最終回)」JF3PLF杉浦雅人

JF3PLF杉浦雅人氏の近況は、既に2020年6月号(その87)の「あの人は今」で紹介させて頂きましたが、そこではJARL京都クラブのメンバーとしての活動が中心の紹介でした。今回はその後の活動を中心とした近況を寄せて頂きましたので、ここに紹介させて頂きます(写真20~22)。「近況: 38年間の教員生活定年退職後も、同じ学校で担任を持たない専科加配教員として勤務しています。今回はその勤務先である宇治市立北小倉小学校の児童を対象とした取組を中心に、青少年のアマチュア無線体験活動についてレポートさせていただきます。

【8J3YAA/3】この局は、2020年の電波法施行規則改正を機に、JARL関西地方本部が開設した全国初の体験局です。この年、私は5年生の担任でした。ご存じの通り新型コロナウイルス感染症の拡大により、全国で臨時休校があった年です。せっかく学校が再開されても、活動は制限され、子ども達が楽しみにしていた林間学習も、この年は泊なしの実施となりました。野外炊飯もなし、キャンプファイヤーもなし・・・ そんな中でも何か特別な体験をと思い付いたのが、オリエンテーリングで登る山の展望台でのアマチュア無線です。この日のために、8J3YAAを2週間ほど借り受け、授業の合間を縫って、学校でも体験運用を行いました。林間学習の当日も、希望する児童が山頂で他県のハムと交信することができました(FBニュース2020年10月号の記事参照: https://www.fbnews.jp/202010/news03/index.html)。


写真21. (左)林間学習の合間に体験運用をする児童と、(右)8J3YAA/3のQSLカード。

【8N3YAA】2021年春に定年退職を迎えましたが、その後も常勤講師として北小倉小学校に残ることになりました。前年度、他学年の保護者から要請されていたこともあり、全学年が体験できるアマチュア無線局の可能性を探っていました。北小倉小学校は2022年に創立50周年を迎えるので、体験局の開設要件にはこれがピッタリです。私が次年度も勤務できることが確定すると同時に、かねてから近畿総合通信局とも打ち合わせていた内容で体験局を申請しました。近畿では、まだ体験局に8Nは発給されていなかったのですが、既に9エリアで8N9YAAとYABが免許されていることを伝えると、特に問題なく8N3YAAが発給されました。局の名称は「北小倉小学校50周年記念局」で、今年度いっぱい、休み時間や放課後、全校の児童が体験交信を楽しんでいます。特筆すべきこととして、開局式に校長先生が体験者第1号となって開局宣言(記念交信)を行ったこと、十数名の児童がJANETメンバーのW6OPQ丸さん(米国カリフォルニア州)との交信を楽しんだこと等が挙げられます。免許が切れる年度末までには、延べ100人以上の児童が、アマチュア無線を体験できる見込みです(JARL京都府支部HPの記事参照: http://www.khn.co.jp/~shibu/8n3yaa/8n3yaa.htm)。


写真22. (左)教室で体験運用をする児童と、(右)8N3YAAのQSLカード。

【8N350K】上述の通り、北小倉小学校は2022年に創立50周年を迎えますが、4年後には統廃合による閉校も決まっています。何か大きなことをして校名に歴史を残しておきたい。その思いを実現させたのがARISSスクールコンタクトでした。3月に申請、5月にメンバー募集、6月から事前学習開始、7月に実施・・・ と、取組を進めました。その結果、4年生から6年生まで、20名の児童が10分間にISSのKjell Lindgren宇宙飛行士(KO5MOS)と素晴らしい英語での交信を果たし、大成功を収めることができました。その模様は、地元紙、全国紙、市広報誌等、様々なメディアに紹介されました。勿論サフィックスの50Kは、50周年+「北小倉」です(FBニュース2022年8月号の記事参照: https://www.fbnews.jp/202208/news03/index.html)。


写真23. (左)ARISSスクールコンタクトで交信する児童と、(右)8N350KのQSLカード。

【8J3KL】これは、関西6府県支部が同時に開設した「支部発足50周年特別局」で、小学校の関係ではありませんが、これも体験局です。11月に行われた「青少年のための科学の祭典京都大会」で公開運用を行いました。コロナ禍で、入場者を事前予約者に限定した開催で、1日だけの出展でしたが、体験運用のブースは盛況でした。この日の最年少体験者は、幼稚園児でした(JARL京都府支部HPの記事参照: https://je3zpz.ampr.org/sf2022/sf2022.htm)。

アマチュア無線の世界も高齢化。しかし、それは若年層がアマチュア無線の楽しさを知らないからだと思います。無線を体験する子どもの目はいつも輝いています。体験制度ができたことや、試験がいつでも受けられるCBT(Computer Based Testing)化されたことを、アマチュア無線活性化の追い風にしたいものです。私も、自分自身でDX、コンテスト、移動運用等を楽しむ傍ら、今後も青少年育成に関わって行けたらと思っています。(2023年2月記)」

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