ラジオ少年
2023年8月15日掲載
往年の名測定器(DELICA MINI BRIDGE)
コンデンサの容量(キャパシタンス)とコイルのインダクタンスが分かれば共振周波数は、2πルートfc分の1の公式で求めることができます。たいていのコンデンサはその部品の表面にキャパシタンスが印刷されていますが、コイルは自作することが多く自作派を悩ませます。そこで今回は、このコイルのインダクタンスを測定する簡易インダクタンスメータの製作にトライします。市販の測定器のようにデジタル表示で正確に求められるものではありませんが、使い物になる程度のものを目指します。
製作は2部構成に分け、今号のPart 1ではその原理を簡単に説明します。Part 2では、実際にケースに入れて製作に臨みます。
コイルのインダクタンスを求める方法を考えます。図1は交流ブリッジを用いる方法です。交流ブリッジが平衡すると2πfLx×R2=2πfL1×R1の式が成り立ちます。このときG(ガルバノメータ :検流計)の両端の電位が等しくなることから、Gには電流は流れません。この流れない状態を探して、Lxのインダクタンスを求める方法です。
図1 交流ブリッジを用いる方法
被測定コイルLxと既知の値のL1、それに可変抵抗器R1、R2の値を図1のように接続します。R1、R2を可変することでGのメータが振れない平衡点が発生します。回路が平衡すれば、Lxは図1の(1)式から求めることができます。つまり、回路が平衡した状態のR1/R2の値にL1の値を掛けたものがLxとなります。
この回路で予備実験を行ったところ、うまく動作しませんでした。図1の(1)式には周波数のパラメータが入っていないため、使用する周波数を考えずMHz台と高くしたのが原因と思われます。また可変抵抗器R1、R2の高周波特性が悪かったこともあると思います。fを低い周波数にするとR1、R2周波数特性は無視できそうですが、その後の実験は行っていません。
図2は、LC共振回路を用いる方法です。Lx、Cの並列共振回路が交流信号fに対して共振すると共振回路のインピーダンスは非常に高くなり、電流は共振回路には流れず、大半が負荷R側に流れます。このため、負荷と直列に接続された電流計(A)の振れが最大となります。このようなLC並列共振回路は送信機や受信機等の高周波回路で多々見ることができ、比較的製作も簡単そうであることから今回はこの原理を利用してインダクタンスメータを製作します。
図2 LC共振回路を用いる方法
図3は、LC並列共振回路を用いた簡易インダクタンスメータのブロック図です。大きくは、下に示す4つのブロックで構成します。
(1)発振回路
(2)同調回路
(3)メータドライブ回路
(4)表示回路
図3 インダクタンスメータのブロック図
図3におけるLxは、これから測定しようとする被測定インダクタンス(コイル)です。このコイルと並列に可変容量コンデンサ(バリコン)を接続して同調回路(並列共振回路)を作ります。並列共振回路は、LxとCの値で固有の共振周波数 (f0)を持ちます。この共振周波数(f0)における並列回路のインピーダンスは、図4に示すように非常に高く最大となりますが、共振周波数以外の周波数では低いインピーダンス示します。つまり高いインピーダンスのときは電流が流れにくく、低いインピーダンスのときは電流がよく流れる特性を利用します。
図4 並列共振回路の周波数とインピーダンスの関係
図3の発振回路で作った交流信号を同調回路に加えます。その信号の周波数に回路が共振していない場合は、同調回路のインピーダンスは低く交流信号はLx、Cを通してグランドに流れ込みます。
Cはバリコンであることから容量を可変すると、LxとCの同調回路の共振周波数が変化します。Cの容量を可変して回路の共振周波数を交流信号の周波数に合わせます。このとき、回路のインピーダンスは非常に高くなり、回路は信号周波数に対して共振しているといいます。回路のインピーダンスが高くなることから、交流信号はLx、Cを通してグランドには流れ込まず、ダイオードで構成した整流回路を通してメータドライブ回路に流れ込みます。ドライブ回路では信号を増幅してメータを振らせます。
このメータが最大に振れたときのバリコンのキャパシタンスCの値が何らかの方法で分かれば図5の(1)式より、コイルのインダクタンスを求めることができます。
図5の(1)式は、アマチュア無線の国家試験でおなじみの共振周波数を求める公式です。共振周波数(f0)は、LとCの値が分かれば、それぞれの値を代入すれば簡単に求めることができます。図5の(1)式よりインダクタンス(L)を求める式に変形したものが図5の(4)式です。
図5の(4)式よりCとLは反比例の関係にあることが分かります。また、周波数の2乗に反比例することも分かります。ここで発振周波数f0=10MHz、バリコンの可変範囲をC=10~250pFとして、それぞれの値を図5の(4)式に代入すると測定できるインダクタンスは1µH~25µHと算出することができます。これでは測定範囲は狭すぎます。インダクタンスの測定範囲をµHからmHまで広げるには、バリコンの容量Cをもっと下げるか、あるいは発振周波数f0をもっと下げるかのいずれかであることも図5の(4)式で分かります。
図5 共振周波数を求める公式
製作するインダクタンスメータの測定範囲をµH~mHまでとします。前述したように発振周波数f0=10MHz、Cの可変範囲を10pF~250pFとすると図5の(4)式より1µH~25µHとなることを先の計算で求めました。Cの可変は汎用のポリバリコンで行うことから、さらに低い値のバリコンとすることは部品の入手の観点から困難です。そこで、発振周波数をもっと低くして対応します。手持ちに10MHzの水晶がありましたので、それをD-FF(フリップフロップ)を使ったロジック回路(月刊FB NEWS 2022年8月 FBのトレビア参照)で1/2分周を3回繰り返して1.25MHzを作ります。こうすることで、計算値では1600µH(=1.6mH)まで測定することが可能となります。
図6は、発振周波数に対するバリコンの容量と測定できるインダクタンスの関係です。これをもとに次回は製作に臨みます。
図6 発振周波数、バリコンの容量に対するインダクタンスの測定範囲の計算値
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