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日本全国・移動運用記

第95回 浜松市の消滅予定区移動(その2)

JO2ASQ 清水祐樹

2023年8月1日掲載

浜松市には現在7つの区があり、2024年1月1日に3つの区に再編されるため、6つの区が消滅することを、2023年5月号(第92回)の本記事で紹介しました。その後、5月から7月のEスポシーズンに、HF帯のハイバンドでの交信を狙って、8週連続で浜松市での移動運用を実施しました。

バンドチェンジの戦略

筆者宅から浜松市の最も近い場所には、車で2時間弱かかります。日帰り運用の場合は、午前4時に出発して、6時30分頃から運用を始め、1か所当たり3時間程度で3か所での運用の後、日没が近くなる18時30分頃に終了しました(図1)。

バンドチェンジの基本は、7MHz帯から50MHz帯まで順にQSYして、それを1か所当たり2~3回繰り返しました。ただし、必ずしもこの通りでは無く、例えば10MHz帯は夕方になると国内向けのコンディションが悪くなるので、3か所目の最初に10MHz帯を運用するなどの工夫をしています。この日程では、夜間に電離層反射が使える1.9MHz帯での交信が厳しくなるため、可能な場合は終了時間を延長して対応しました。

144MHz帯と430MHz帯のCWは、サテライト通信と同じアンテナを使っているため、サテライトの後に各10分ほど運用しました。ただし、最近は使える衛星が少なくなり、特に11~15時頃はCW/SSBで使える衛星がほとんど無いため、図1のB区では144MHz帯と430MHz帯を運用しないことが多くなりました。


図1 バンドチェンジの概念図

狭い場所では、釣竿以上、ダイポール以下の、逆L型アンテナを使用

浜松市は、天竜川河川敷以外には広い平地が少なく、アンテナの設置に苦労する場所もあります。釣竿ホイップアンテナであれば、車1台分のスペースで運用できますが、Eスポで近距離伝搬のコンディションが格別に良い時や、1.9MHz帯では力不足を感じます。

ダイポールアンテナは性能が良いものの、設置スペースとして、昼間用の7~50MHz対応バージョンでは直線で20m、夜間用の1.9~50MHz対応バージョンでは直線で80m程度を必要とします。長さ80mのアンテナを人が通る可能性のある場所に設置すると、先端付近で何が起こるか不安なので、人が絶対に通らない長さ80mの直線状の柵があると理想です。しかし、そのような場所は容易に見つかりません。特に、猛暑の時期は、除草が間に合っていないため広い場所に入れなかったり、危険な昆虫が出現したりします。

そこで、逆L型アンテナにオートアンテナチューナーでチューニングする方法を主に使いました(図2)。もともと、この逆L型アンテナは、2013年10月号にあるように、アンテナチューナーを使わなくても1.9MHz帯と3.5MHz帯に同調するよう製作したものです。3.5MHz帯に同調した長さ約20mの逆L型のビニル線を使って、給電部分をオートアンテナチューナーと容量結合アースに置き換えました。これで、オートアンテナチューナーAH-4を使った場合には3.5~50MHz帯に対応できます。1.9MHz帯に対応するには、ビニル線を30m以上に延長するか、20mのビニル線の根元に40μH程度の補助コイルを接続します。ビニル線は、夜間の撤収時に目立ちやすくするため、黄色にしてみました。

このアンテナはバンドチェンジで車外に出る必要が無いため、猛暑や大雨での運用においては大変助かりました。



図2 浜松市移動で使用することが多い逆L型アンテナ(上図)と、伸縮ポール先端の固定の様子(下写真)

逆L型アンテナの使用上の注意について、一言申し添えておきます。撤収時には、ロープを下向きに引っ張りながら、ゆっくりと伸縮ポールを縮めるようにします。伸縮ポールを急に縮めると、塩ビ管止水キャップが外れて落下し、車にキズを付けたり、頭に当たってケガをする危険があります。

各区のハイライト

運用日ごとの記録を、いつもの記事のように記載すると膨大な量になり、また、特筆すべき点が無かった日もあるので、以下では、各区のハイライトを紹介します。

●中区: 運用場所が狭く、大きなアンテナが設置できないため、最大の難関
中区は、浜松市の7区で最も運用場所の確保が困難です。運動公園などは、天気が良いと満車になることが多いので、イベントで満車になることが少ない公園を利用しています(写真1)。ちなみに、政令指定都市に移行した2007年4月1日午前0時に、私が移動運用していた場所には、現在では工場が建っています。


写真1 浜松市中区の運用場所の様子(2023年2月に撮影)

●東区: 広い天竜川河川敷で、どのバンドも好調
東区は天竜川の河川敷で広い場所が複数あるので、他の利用者と競合しなければ、HF帯の運用場所の確保は容易です(2023年5月号の写真1)。ここでは、6月4日の午前に50MHz帯で20QSOできるなど、伝搬のコンディションに恵まれました。

●西区: 浜名湖周辺は混雑する上、駐車場所の確保が難しい
西区の浜名湖周辺は、天気が良いと潮干狩り、釣り、マリンスポーツなどの利用客でとても混雑して、駐車料金が高額になります。そこで、西区の西の外れにある、海岸の駐車場に行ってみました(写真2)。他の区からは離れていることが難点であるものの、運用場所としてはまずまずでした。


写真2 浜松市西区の運用場所の様子

●南区: 海岸近くは意外に運用場所が無い。天竜川河川敷へ
南区は海に面しており、当初は海岸の近くで運用することを考えていました。ところが、海岸付近には高い防潮堤があるため、駐車スペースは限られており、地面が砂浜で車の乗り入れには適していませんでした。結局、東区との境界付近の天竜川河川敷で運用することが多くなりました(2023年5月号の写真3)。

6月18日に、南区で静岡県西部ハムの祭典が開催され、その前に会場近くの公園で運用しました。ところが、6月17日、18日の運用ともに伝搬のコンディションが悪く、南区でのQSO数は少ないままに終わりました。

●北区: 広い平地が少ない。アクセスも考えて、市街地の公園で運用
北区は北西部の広い面積を占めています。しかし、広い平地がある場所は限られており、浜名湖に面した場所でも、全方向に開けている場所は無いので、運用場所探しは意外に難しいと感じました。

交通のアクセスを考え、西区や中区に近い住宅地の公園を利用したものの、住民からは良い印象を持たれなかったようでした。夜間に閉鎖される公園も多いことから、結局は2023年5月号の写真2の場所を多く利用しています。

●浜北区: 広い天竜川河川敷で運用、山が近いためV/UHF帯は少し難しい
浜北区は広い天竜川河川敷で、運用できる場所が複数あります(写真3)。ただし、天竜川の対岸に山があり、東京方面のV/UHF帯は少し難しくなります。アンテナを振りながら、山の間を電波が抜けていくポイントを探していきます。


写真3 浜松市浜北区での運用の様子

●天竜区: 大部分が山地。浜北区との境界付近の河川敷で運用
天竜区は大部分が山地で、広い平地はほとんどありません。浜北区との境界付近の天竜川河川敷に、サッカー場1面分ほどの空きスペースがあります(2023年5月号の写真4参照)。ただし、雨が降ると路面状況が悪くなります。天竜区は今回の区の再編では消滅しないので、運用の優先順位が低く、QSO数ともに少なめになっています。

この場所で東京都の某局と144/430MHz帯のCWにチャレンジしたところ、1回目は144MHz帯で聞こえて430MHz帯はNG。日を変えて2回目のチャレンジで430MHz帯でもQSOできました。

結果

2023年は、本記事の執筆時まで、浜松市で8週連続を含む11回(12日間)運用しました。QSO数の集計を表1に示します。区別のQSO数を見ると、Eスポの当たり外れによってQSO数に差があります。6つの区が消滅する2023年12月31日までに、少しでも多くのQSOをしておきたいものです。



表1 QSO数の集計。2023年2~4月のQSO数は2023年5月号で掲載済みのため、5月~7月9日までの運用について集計した。1.9~430MHzはCW/RTTY、サテライトはCW/SSB。

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