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おきらくゴク楽自己くんれん

その30 2023年 モバイルシャックで初めての夏
やっぱり暑さに弱かった

JF3LCH 永井博雄

2023年10月2日掲載

皆さん、こんにちは。昨年秋から移動運用に使い出した軽トラモバイルシャックですが初めての夏を過ごしました。先月レポートしたフィールドデーコンテストでは移動地が山の上だったこともありますが、悪天候で寒いくらいの気候でした。しかしその後の移動運用は暑くて大変でした。


JARL奈良県支部 V・UHFコンテストでの移動運用

1. JARL奈良県支部 V・UHFコンテスト

愛媛県で初めての移動運用を実現したフィールドデーコンテストから帰って次の週末(8月12日-13日)は、JARL奈良県支部 V・UHFコンテストでした。遠征の疲れが残っていましたが地元開催のコンテストでもあるので移動で参加してきました。山の上での参加ですし2日目は13時で終了するコンテストですが、朝から晴天でシャック内温度はぐんぐん上昇し、コンテスト終了後シャック内は35℃を超えとてもじっとしていられる環境ではありませんでした。


コンテスト終了後の温度

いくら断熱材(スタイロフォーム)で覆っていてもこの暑さを防ぐには全く不十分であることを思い知りました。このままでは暑い時のシャック活用がままならないので、何か対策を考えなければならないと感じました。

2. 発泡クーラーボックス冷却装置の製作

ネットでキャンピングカー紹介の動画などを見ると、家庭用クーラーを取付けている方を見かけますが、快適さの為に発電機を使わないといけないような電力を使うことはあまりエコではなくいまいちなように感じています。太陽光パネルを電源にしている場合もありますがそれにはかなりの費用が掛かります。

そんな時見つけたのが100均で売られている発泡スチロールで出来た簡易クーラーボックスに氷を入れて作る冷風装置みたいなものをみてコレだ! とマネをさせてもらうことにしました。

早速100均で日本製発泡クーラーボックスロング(330円税込み)という製品を購入しました。大きさは307mm×183mm×284mmの物です。



発泡スチロールなので加工は容易

クーラーボックス側面に10mmの丸穴を10個あけて、フタにおきらくゴク楽自己くんれんその27で紹介した換気扇に使っているファンの予備機を使い穴あけ加工をしました。



100均の鳥よけネットを切って氷の底上げに使用

中に鳥よけネットと呼ばれるプラスチックのトゲがあるネットをクーラーボックスの大きさに合わせてカットし、逆さまにして敷いて解けた水が下に溜まり氷を沈ませない工夫をします。

3. ハムフェアもモバイルシャックで

今年のハムフェア(8月26日-27日)はせっかく動くシャック兼寝室を持っているのだから東京の高くなった宿泊代を払うことなくハムフェアに参加したいと思い、軽トラモバイルシャックで行くことに決めていました。ついでに移動運用も楽しもうということで。金曜の夕方出発してその日は東名高速の足柄SAで一泊することにしました。ここはお風呂もあり大変気持ちよく過ごすことができます。夜の暑さも心配でした。比較的標高あるので平地よりは幾分かましだろうと考えていました。


合計2.2kgの氷を投入


ファンを載せて運転開始

ここ足柄SAの気温は27℃前後で換気扇を使えば寝ることができる気温でしたが、せっかく作った装置を持ってきたので使ってみることにしました。サービスエリアのコンビニで氷を調達しました。1.1kgで268円(税込み)2袋を購入し合計で2.2㎏をボックスに投入しました。しかし一回500円以上もかかるとは思っていませんでした。ファンを回すと涼しい風が体に当たり快適になります。しかし当然ですが時間と共に冷え具合は悪くなっていくのですが、氷が融けてなくなっても扇風機に当たっているのと同じ状態となるので寝苦しくなることありませんでした。この日の睡眠の敵は隣に停まったトレーラーのエンジン音でした。耳栓をして対応していましたが、こちらは「エンジンに頼ることなく工夫して寝ようとしている」のにと考えるとなんだか熟睡することが難しくなってしまいました。しかし作ったクーラーの試運転としては上々の結果となりました。


わざわざ隣に来てエンジンをかけ続けられました(泣

翌日は6時過ぎに出発し、9時までにはビッグサイトに到着できました。昨年はモバイルシャック製作途中の状態でビッグサイトに来たのですが、昨年と同じ屋外駐車場に停めさせられました。ここは海の近くでハムフェア会場からは無茶苦茶遠く、今年も会場に着くまで20分近く歩き続けました。お年寄りや障害がある方の車は大きな車両も多いので大変な負担となっているではないでしょうか。これは何とかならないものかと思います。


東京ビッグサイトの屋外駐車場

ハムフェアでは狙いの品物もゲット出来て、各地の方々と久しぶりのアイボールも楽しむことができました。お相手いただいた皆さんありがとうございました。まだまだ楽しみたいので翌日も参加しようと思い、あまり遠くない場所で土曜夜の宿泊する場所を考えます。

標高の低い所では昨日の夜と同じわけにはいかないと考えていました。そこで思い浮かんだのは、海に囲まれた海ほたるなら都会より少しは低い気温で氷クーラーの力を借りれば寝ることができるのではないか? と言う事でした。と言うことで海ほたるに行くことに決めました。あとでわかるのですがこれは大変甘い考えでありました。

4. ハムフェア一日目終了後「海ほたる」で移動運用

1日目終了後、海ほたるに向かいます。途中都内でお風呂と夕食を購入して走ります。


千葉県木更津市海ほたる移動

海ほたるに到着すると入口に立っていた警備員さんがモバイルシャックの高さを見て、立体駐車場ではなく大型車の駐車場に停めるよう案内されました。あとで調べると海ほたるの立体駐車場の高さ制限は2.5m以下で、約2.3mのモバイルシャックは入ることができたのですが、警備員さんとしては安全を見て大型車駐車場に案内されたのだと思います。ここなら天井がありませんし広いペースが確保できるのでアンテナを上げる都合がいい場所でした。

都内のスーパーで購入した夕食を食べた後、施設内のコンビニで氷を買ってクーラーボックスに入れて可動させながら「千葉県木更津市移動運用」を楽しみました。しかし昨日に比べ冷えが悪い上、氷の消耗が早いので気温を計ると室内室外ともに30℃をはるかに超える気温でした。海の上と言ってもそれほど気温は低くないようです。この状態では暑くて寝ることは出来そうにありません。

それに分かっていたことですが、この場所はうるさい改造車が集まり騒がしいところです。この大型車駐車場のそばを通っていきます。耳栓すればよいと考えていたのですが、時折あまりにもうるさい車が来るので今晩ここで寝ることはあきらめました。寝るためにはどこか標高のある静かな場所に行かなくてなりません。結局この日は中央自動車道の談合坂SAまで走り、寝ることができました。もうここまで来てしまったのでハムフェア2日目参加はあきらめ帰途につくことにしました。

5. 発泡クーラーボックス改造冷却の実力は?

これまでの試験的実使用? で冷却するという点でいろいろ課題がありました。そもそも氷では冷却能力が足りないことはある程度予想していたことです。しかしその他の点で効率よく冷やすことができるよう改造をしてみました。

とりあえず吹き出し口の形状を改造することにしました。吹き出し口上部にある10mm穴の4つを連結し広げました。素人考えですが広くした部分と10mmの部分から吹き出す空気に速度差をつくり、広い口から吹き出す空気がより遠くまで届かせることができるのではないかと考えました。吹き出す空気の量が増えることによる冷却効果の増強も期待しましたが、それにより氷の持続時間が短くなるかもしれないことは考えないことにしました(笑


吹き出し口改造加工

実際に吹き出した空気が想像していたように出ているのか、空気の流れを確かめるのは難しいのであえてしないことにしておきます。

6. 冷却能力の計測実験

改造を施した発泡クーラーボックス冷却装置の実力を計測してみました。氷にはこれまで使用した小さく割れたものと板状のロックアイスがあり、持続時間はロックアイスの方が有利なように感じていましたので両方を試してみることにしました。初めて使った時は1.1kgを2袋で合計2.2kg使用しました。1時間ほどは良く冷えていたように思いましたが、その後だんだん冷えが悪くなっていたように感じました。さて実測値はどうなるのでしょうか。今回も2.2kgの割れ氷を使って運転し、吹き出し口の温度を計測しました。

まずは割れ氷を使っての計測です。実験場所は標高の高い所ではありますが炎天下のモバイルシャック内です。ファンに吸い込まれる空気の温度は終始約32℃の状態での計測となりました。


70分を過ぎるとほぼ冷えなくなる

やはり60分を過ぎると急に吹き出し温度が上り、70分後には30℃を超えてしまいほとんど冷やすことができなくなってしまいました。実験開始してしばらくすると融けた氷が崩れていく音が聞こえていたのですが、40分経過した頃に中の氷が崩落する大きな音が聞こえていましたので、この崩落で氷が水に浸かってしまい空気が冷やすことが出来なくなった為に吹き出し温度が上がったのだと思われます。全ての氷が融けた水に浮かんだ状態になるとその上にいくら空気を当てても冷えた風が出てこない状態になってしまいます。

これらの事からファンから押し込まれた空気が冷たい部分に当たり温度差で冷えるのではなく、氷が融けることにより発生する融解熱が空気の熱を奪っているのだという確認ができました。

次に板状の氷の塊ロックアイスを使っての実験です。1.7kgのものを購入してきました。買ってきた状態では長くて収まらないため、クーラーボックスのフタが出来ずのこぎりで切断したものを並べてようやく収めることができました。


1.7kgのブロックアイスを切断して納める


緩やかな温度変化を確認

ブロックアイスを使った計測結果です。氷の量は1.7kgと先の実験より少なかったのですが、1時間30分(90分間)程冷やすことができました。大きな塊の状態の方が効率よく空気の熱を奪い緩やかに融けていくのでしょう。しかし90分を過ぎると冷えが悪くなり中を見ると氷塊が完全に融け、水の浮かぶ状態とっていました。こうなると吹き出す温度は下がらなくなります。

二つの実験の間、室内の温度はほぼ32℃から変化することはなくこのクーラーでは室内の温度を下げるほどの冷却は出来ないことがわかりました。部屋の温度を下げたい場合は最低でもこのクーラーが2台はないといけないことになります。

7. クーラーボックス氷冷房のまとめ

当初は吹き出す空気は吸い込む空気より10℃くらい下がって出てくれるのではと期待していましたが、それは使い始めだけですぐに温度が上がりこの装置1台では吹き出す風が体に当たる部分で涼を感じくらいで汗が出るのを抑える程度の冷やす能力しかないことがわかりました。

モバイルシャック内を冷房するということは出来そうにありません。そうしたい場合は複数台の同装置を並列で運転する必要があります。しかしながらあるとないでは大違いなので小遣いで作ることができるこの装置はアリだと思っております。

来シーズンにはもう1台作って使いたいと考えています。先に氷の値段が高い事についても触れていましたがコンビニで氷を購入するのはコスパが悪すぎます。安売りで有名なスーパーでまとめて購入することをお勧めします。初めて使った割れ氷1.1kgはコンビニでは268円もしましたが、安売り店では同じ量の袋を102円で買うことができました。まとめて大量に買い大きい食品用のクーラーボックスに詰めて運べば相当な時間氷の状態で保管できるのではないかと考えています。コンビニで買うのは最終手段くらいに考えた方がいいようです。

結論としては「安い氷を大量に買ってバンバン使えば実用になる」ということとなりました。後日ですがあるスーパーで3.3kgの割れ氷が250円くらいで売られているのを見つけました。これなら入替えの手間はありますがコスパよく長時間涼しく過ごすことができそうですね。

以上、移動運用以外でも夏のアウトドアで活躍するエコな試みとしての実験報告をさせていただきます。年を追うごとに暑さが増す環境下でもアウトドアを楽しむ皆さんの来シーズンの参考にでもなれば幸いです。それでは。

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