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テクニカルコーナー

My Project/第13回 【ワイヤレス】 腕時計型ハンディー機リモコン

JP3DOI 正木潤一

今月からMy Projectが再スタート。今後は季刊となります。その分、内容はパワーアップ。3月号、6月号、9月号、12月号の公開です。

スマートウォッチやスマートブレスレットなどのウェアラブル端末が一般的になってきました。“ウェアラブル(Wearable)”という言葉は近未来的な魅力を感じるフレーズです。アマチュア無線の世界でも、ウェアラブルな製品が発売されないでしょうか?例えば、腕時計のような端末でハンディー機を操作できたら楽しそうです。

「リグをスマートに操作したい」
アイコムのオプションマイク”HM-75A/HM-75LS”にはリモコン機能があり、[△]、[▽]、[A]、[B]の4つのキーに機能を割り当てることができます。これにより、ある程度の操作が本体のキーを触れずにおこなえます。HM-75はID-51/ID-31/PLUS、ID-92、IC-T90などに対応しています。


HM-75A/HM-75LSに割り当てられる機能の例 (ID-31PLUSの取説より)

HM-75のリモコン機能を、スマートウォッチのように手元で操作できないか検討してみました。端末を手首に取り付け、操作できたらカッコよさそうです。しかも、HM-75以外のスピーカーマイクでもリモコン機能を使えます。

手持ちのHM-75を分解してみると、リグに繋がる制御ラインに対して並列に4つの抵抗器が入っており、スイッチを押すと制御ライン(Control line)の電圧が分圧されるようになっています。つまり、押したスイッチに応じて制御ラインの電圧が変化することで、どのキーが押されたかを無線機が認識するようになっています。


HM-75A/HM-75LSの内部回路

使用周波数
312~315.25MHzはテレメーター用、テレコントロール用及びデータ伝送用に割り当てられており、総務省のバンドプランにも“タイヤ空気圧モニター、キーレスエントリー等”とあります。多くの自動車のキーレスエントリーには315MHz帯が使われているようです。

この周波数を使用した微弱電波通信モジュールは秋葉原や日本橋で手に入りますが、今回は小型化と低電圧動作を実現させるため、市販品を使わずに自作します。


秋葉原『aitendo』で販売されている315MHz帯微弱電波通信モジュール
(左:受信ユニット 右:送信ユニット)

315MHzの発振には『表面弾性波: Surface Acoustic Wave(SAW)共振子』が多く使われています。上の送信ユニットの写真の円形の金属パーツがSAW共振子です。このデバイスは圧電体上の表面弾性波を利用して共振を起こすもので、UHF帯の無線端末などのフィルターやデュプレクサーに使用されています。一般的にUHFの信号は水晶発振子で基本波を発振させ、てい倍して所望の周波数を得ますが、このデバイスは直接発振させることができます。IoT (Internet Of Things)といった近距離通信機器の拡がりとともに、個人でも比較的入手し易くなりました。


315MHz SAW共振子(表面実装用) epcos社製“B39321R2704”

コントローラーの概要


無線機とスピーカーマイクの間に受信ユニットを挿入する

・操作ユニット(腕時計型)
操作回路(マイコン基板と発振回路基板)を収める筐体として、百円ショップ『ダイソー』で売られている腕時計を使いました。


スポーツウォッチ風の腕時計(¥150)

分解して内部の機構を取り除くと、基板を収められるスペースができます。”スマート感”を醸し出すため、操作スイッチはタッチ・スイッチにしました。側面に付いている4つの時刻設定用のボタンを取り除き、M3ネジを収めます。腕に付けた状態でネジの頭、つまりスイッチに指で触れると、時計裏面の金属カバーと人体を介して導通して入力が検知されます。


側面の穴にM3ネジを収めてタッチ・スイッチにする


「コ」の字型に組んだ基板をバッテリーとともに時計の中に組み込む

時計の上面に付いている飾りのリング “ベゼル”を外し、内側に細いリードを這わせてアンテナとし、内部の発振回路に接続します。1周させても8cm弱(※)なので315MHzの1/12波長しかありませんが、たった1mほどの“超”至近距離通信なので十分です。
※微弱電波の規定に収まるくらい短くしてください。


時計の外周にアンテナ線を這わせる

好きなデザインを印刷して直径26.5mmに切り取った紙を文字盤にセットして中の基板が見えないようにしています。


コールサインなどを印刷してオシャレに

腕時計には大抵ボタン型の1次電池が使われますが、この回路は時計よりも待機電流が多いので充電池を使ったほうが経済的です。今回は小型のリチウムイオンバッテリー(40mA/h)を使いました。1回の充電で3日間くらい使えます。

・受信ユニット
制御電波から制御データを取り出し、マイコンがトランジスタスイッチを制御してボタン押下信号を無線機に出力します。こうして無線機はリモコンマイクのボタンが押されたことを認識します。受信ユニットを作る上で拘った点は、バッテリーを使わずに無線機から電源を供給することです。無線機から供給できる電源は、スピーカーマイクに付いているLEDを光らせるためのものなので、ほんの僅かな電力しか取り出せません。無負荷で3.3Vですが、短絡しても7mAしか流れません。そこで、My Project 2017年3月号で紹介した、消費電流の極めて少ない『超再生検波方式』が活躍します。受信ユニット全体の待機電流を2.5mA(*)以下に抑えています。
*検波回路0.5mA、AFアンプ0.3mA、オペアンプ1mA、マイコン0.3mA

また、ハンディー機に接続して使うものですから、極力小さくなるように心がけました。タカチ製の小型プラスチックケース『SW-30』(20×18×30mm)に受信回路と制御回路を収めます。無線機とスピーカーマイクとは、アイコムのオプションケーブル『OPC-2144』を真ん中で切断して回路と接続(※)します。基板を2枚に分け、マイコンを中心に「コ」の字型に組むことで、1枚の基板で組むよりもコンパクトになります。(マイコンの足は基板のホールに挿入しません)
※製造ロットによって内部線材の色が異なるようです。テスターで導通を調べて結線を確認してください。


制御回路(左)を「コ」の字型に実装

<参考: 回路の低電圧動作>
回路を低電圧で動作させる場合は電源ラインの電圧降下に注意します。この回路の場合、トランジスタスイッチがONしてコレクタ電流が流れると、電源ラインに電圧降下が生じます。My Project 9月号『ラーメンタイマー』では0.5ミリ秒間の電圧降下を22uFのコンデンサで吸収させていますが、今回の場合はトランジスタがONしている時間が100ミリ秒以上あります。その間の電圧降下を吸収させるには1000uF以上の電解コンデンサが必要になりますが、小型化に向いていません。そのため、降下時の電圧がマイコンの動作電圧(2V)を下回らないように回路を工夫しました。


電源電圧が約100ミリ秒間、88mVほど下がっている

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