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テクニカルコーナー

My Project/第14回 簡易アンテナローテーター

JP3DOI 正木潤一

指向性アンテナを、手元にある方向を決めるダイヤルで回転させることができる、小型のローテーターを製作します。移動運用で軽量な指向性アンテナを使うことを想定して設計しました。タワー用の本格的なローテーターのような使い方はできませんが、少ない部品で簡単に作れます。

今回は、歯車やネジを使った、機械工作ものです。いつも回路製作に使っているユニバーサル基板のちょっと変わった使い方も紹介します。

サーボを使う:
「回転」を得るためのモーターに対して、任意の指向角度を得るために「旋回」させるのがサーボ(サーボ・モーター)です。本格的なラジコンカーやラジコン飛行機の操舵制御に使われており、ダイヤルの回転に連動した指向角度を得られます。「回す・止める」だけのモーターとは異なり、サーボに内蔵されたモーターにはフィードバックが掛かっており、外部から力が加えられても、それを打ち消す方向に回転しようとするため、設定した指向角度を維持します。

モーターの回転をギアボックスで減速させて所望の向きで停止させるのが最も簡単な方法ですが、ダイヤルとアンテナの動きを連動させられるサーボを使えば、アンテナの向きを視認する必要がありません。また、サーボに使われているモーターは小型なので、発生するノイズが一般的なモーターより小さい点でも無線通信に向いています。

サーボの制御:
サーボは、パルスの幅によって指向角度が決まるPWM (Pulse Width Modulation)方式で制御されます。よって、ダイヤル(可変抵抗器)を回転させることでパルス幅が変化する回路が必要です。マイコンを使ってパルス信号を作ることもできますが、定番のタイマーIC『NE555(またはLMC555)』を使ってもっと手軽にパルスを発生させることにしました。


小型サーボの例(サーボ・ホーンを取り付けたところ)
(赤:VCC、橙:制御、茶:GND)

サーボの回転(旋回)出力は、『サーボ・ホーン』を介して取り出します。ダイヤル(可変抵抗器)の回転と連動してサーボ・ホーンの向きが変わります。サーボには常に制御信号が掛かっているので、外部から力が加わっても設定された指向角度を維持します。

ローテーター機構:


サーボを取り付けたギアボックス

たいていのサーボの旋回範囲は0~60度です。もっと広い旋回角度を得るにはテコの原理を応用します。具体的には、サーボ・ホーンと旋回させる対象とを繋ぐ『リンケージ』の組み合わせで広い旋回範囲を得ます。

しかし、今回はローテーターをできるだけコンパクトに仕上げるため、歯車(ギア)を使うことにしました。歯の数の比率(ギア比)が3:1となる2枚のギアを使います。歯の多い(大きい)ギアをサーボ・ホーンに、歯の少ない(小さい)ギアを、ローテーターの軸にする樹脂製のM6ボルトに取り付けます。これにより、60度の3倍、180度の最大旋回角度を得ます。ただし、回転角度が3倍になると、トルクは1/3になりますので、このことを考慮してサーボを選定します。今回の製作例では、トルクが3kgのサーボを使っています。


サーボ・ホーンにギア(大きいほう)を取り付けたところ


ローテーターの軸となるM6ボルト(樹脂製)にギア(小さいほう)を取り付けたところ
(ボルトを取り付けるため、2段ギアを使用)

ギアボックスを自作する際には、ギア同士の勘合精度が非常に重要です。少し離れていると空回りしがちで、近すぎると回転負荷が大きくなってスムーズに回りません。ギアを固定するシャフトの位置を正確に定める必要があります。

そこで、強度もあって加工しやすいガラエポ製のユニバーサル基板を利用します。規則正しく空いた穴の中からギア同士の勘合の良い位置を選び、穴を拡げてシャフトを通します。これをギアボックスの台座にすることで100%の再現性が確保できます。


ユニバーサル基板上でギアを組み合わせみて、シャフト穴の位置を探る
(シャフトにはM2のネジを使用)

回路:


タイマーICを使ったPWM信号生成回路
※回路中のダイオードはスイッチングダイオードなど任意のダイオード(1S1588など)

可変抵抗器を回すと、タイマーIC(NE555/LMC555)の“OUT”端子から出力されるパルス信号のデューティー比が変わります。可変抵抗器は、ダイヤルの回転と抵抗値が比例する“B特性”のものを使います。可変抵抗器とICを繋ぐラインは極力短くします。このラインに外来ノイズが重畳すると、制御信号のパルス幅に影響を与えます。

ローテーターとダイヤル(リグ側)の接続には、ローテーター(サーボ)と制御回路の結線(3本のライン)を伸ばします。タイマーICからサーボへの制御信号であるパルスは電源電圧-GND間レベルなので、このラインにノイズが載っても影響は生じません。ただし、出力によっては送信波の周り込みが影響を与える可能性もあるので、バイパスコンデンサを入れて高周波成分をGNDに落としています。それでも誤作動を起こすようであれば、サーボの根元にフェライトコアを取り付けます。

回路とサーボの電源には、移動運用を想定してモバイルバッテリー(5V)を使います。
※使用するサーボの最大消費電流を確認して、必ずそれに見合った電源を使用してください。


ケースに収めた回路との配線

製作:


組立図

このローテーターは、本誌My Project 2016年10月号の『極めて軽い430MHzの6エレ八木アンテナ』を取り付けて使用することを想定しているので、小型のサーボを使った比較的簡単な旋回機構になっています。使用するアンテナによっては、トルクの強い大型のサーボや金属製のギアを使った、より強固な旋回機構が必要になります。


ケースに収めたところ

アンテナの取り付け:

ローテーターへのアンテナの取り付けには少々工夫が必要です。回転軸、つまりM6ボルトにアンテナのブームを取り付けますが、負荷が掛かりすぎると回りません。当初は、八木アンテナの持ち手の部分を取り付けるつもりでしたが、重みで回転軸に偏った負荷がかかり、回転しづらくなってしまいました。そのため、上図のようにマストを介してブームの中央で固定するようにしました。こうすればアンテナの重みは垂直に伝わり、回転軸の中心に掛かるようになります。
また、同軸ケーブルをマストにゆるく巻きつけるようにすると、回転負荷が軽くなります。


ケースに組み込んでアンテナマストを付けた例

カメラの三脚に取り付けられるように、ケースの底面に1/4インチのネジ穴を切ります。


ケース底部にネジ穴を切ってカメラ三脚に取り付け

使用感:
アンテナを目視せずに、受信信号の明瞭度や強度を元にダイヤルを回してアンテナを振ります。運用場所や天候の制約を受けにくいので、暑い日にはタープの下で、寒い日にはテントの中から運用できます。指向性アンテナをポールなどの高所に取り付けた場合には特に威力を発揮すると思います。

注意:
使用形態に応じて防水処置を施してください。また、アンテナの落下やポールの倒壊に気をつけてください。モバイルバッテリーを水に濡らすと大変危険です。バッテリーやUSBコネクタを絶対に濡らさないよう気をつけてください。なお、この製作物は自己責任で使用してください。

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