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テクニカルコーナー

My Project/第6回 【不思議な回路】超再生検波方式FMラジオの製作

JP3DOI 正木潤一

AMラジオ番組をFMバンドで送信する「FM補完放送(愛称:ワイドFM)」が全国的に拡がってきました。AMラジオ番組が高音質のFMラジオで聴ける時代です。
ところで、AM波とFM波の両方を復調できる『超再生検波回路』をご存知でしょうか?

超再生検波回路は、少ない部品でラジオが作れるユニークな復調回路です。この技術は無線通信の黎明期から使われていて、現在でもおもちゃのラジコンの受信回路など簡易的な受信装置などで見ることができます。この回路に関連する特許出願は今でも見られ、UHFやGHz帯でのデータ通信の分野で新たな活用方法が見出されているようです。今回は、超再生検波を利用したFMラジオの製作を紹介します。

不思議な超再生検波回路:
トランジスタ1つと同調回路という極めてシンプルな回路ながら、FMもAMも復調できます。発振寸前までゲインを上げた増幅回路はQが非常に大きくなるため、同調回路の選択度が高くなります。信号の振幅利得が周波数によって直線的に変化する、いわゆるスロープ特性によって周波数の変化が振幅の変化(=AM波)に変換され、トランジスタのベース-エミッタ間でAM検波されます。

一方で、AM波も復調できるということは、ノイズに弱いということを意味します。また、FM受信機が本来持っている振幅制限回路が無いため、入力信号の電界強度によって復調音量が変化します。さらに、アンテナ入力部に同調回路が無いため、周波数選択度は同調回路に依存しています。このように、近接波やノイズに弱いという欠点も持っています。

<参考:増幅回路の発振と非発振を繰り返す“クエンチング”>
増幅した信号を入力に帰還させて大きな利得を得る受信方式が「再生検波」です。増幅回路のゲインを異常発振が起きる寸前に設定しますが、周囲温度の変化や電源電圧の変動により発振寸前の状態を保つのが難しいため、可変抵抗で頻繁にゲインを調整する必要があります。この欠点を補うため、断続的に発振状態を起こしてゲインが最大となる点(=発振状態)を繰り返し通過させること(=クエンチング)で感度と安定動作を両立させるのが「“超”再生検波」です。回路はクエンチングの周期に合わせて受信周波数で発振(再生発振)します。クエンチング発振は可聴域より遥かに高い周波数(数10kHz)なので、復調音声は連続して聞こえます。部品点数が少ないですが、動作理論は複雑なので詳しくは書籍などを参照してください。


クエンチング発振波形(青)と再生発振波形(赤)
(クエンチングの立下り付近で再生発振が始まり、すぐに止まっている)

FM放送波:
私の家で受信できるFM局は全部で7局です。AMラジオ放送をFMバンドで送信する「FM補完放送」を入れると、今回製作するラジオの受信帯域は76MHz~94MHzになります。18MHzをチューニングダイアルの1回転でカバーさせます。


FMバンドの周波数分布
(ベランダの430MHzバンドアンテナを使用して受信)

回路の設計:
回路はベース接地型の発振回路に似ています。コレクタのコイルとバリキャップダイオードで受信周波数に同調させます。アンテナからの信号は結合コンデンサを介して回路に入力されます。コンデンサの値を大きくしてアンテナとの結合を密にするほど感度は上がりますが、再生発振が不安定になってしまいます。今回は取り付けませんでしたが、RFアンプを取り付けると結合コンデンサによる損失分を補えます。


回路図

<電気仕様>

  • 電源電圧:3V
  • 消費電流:5~40mA(受信信号レベルによって変わる)
  • 受信周波数:76~94MHz

<検波>
同調コイルにはチップインダクタを使用して再現性を高めています。小型化のため、チューニングにはFMラジオ用ポリバリコンでなくバリキャップダイオードを使っています。電源電圧を可変抵抗器で分圧してバリキャップダイオードに加え、容量を変化させてチューニングします。18MHzも同調周波数を変化させるとクエンチング発振が停止してしまうことがあります。書籍やインターネットで見かける回路には、選局するたびにクエンチング動作を調整するための可変抵抗器が付いています。今回は試行錯誤を重ねてバイアス抵抗を選定し、トランジスタの動作点を固定させました。チューニングするたびにバイアスを調整する必要はありません。2.2kΩの抵抗と4700pのコンデンサで構成するLPFと2200pによるフィードバックによって、検波信号に含まれるクエンチング成分を取り除いています。

<AF増幅>
AFアンプの入力や段間には、一般的に直流カットのために大きな容量の電解コンデンサが使われます。今回は、簡素化と小型化のためDC直結の電流増幅型にしました。消費電流が多いですが、2石の簡単な増幅回路でマグネチックイヤホンを鳴らせる出力が得られます。部品点数を減らすため、音量ボリュームは省略しました。なお、AFアンプICを使えばスピーカーを鳴らせるほどの出力が得られ、消費電流も抑えられます。


回路図(AFアンプICを使用する場合)

<参考:バリキャップダイオード>
今回、チューニングに使用したのは、印加する逆電圧によって端子間容量を変えられるバリキャップダイオードです。印加する電圧が高いほど容量が小さくなります。回路の電源より高い電圧を別に用意すれば、受信周波数の上限を引き上げられます。1SV223のデータシートによると、1Vのときの容量は約20pFで、3Vだと約13pFになります。

部品表:


部品表

<参考:チップ部品の入手先>:
※取り扱い品目は変更されることがあります。

・『秋月電子通商』*
http://akizukidenshi.com/catalog/top.aspx
・『鈴商』(ネット販売のみ)*、**
http://suzushoweb.shop-pro.jp/
・『マルツ』*
http://www.marutsu.co.jp/
・『シリコンハウス』
http://eleshop.jp/shop/

*チップトランジスタも取り扱いあり
**チップインダクタも取り扱いあり

部品の実装:
ほとんどチップ部品を使っているので、図の通りに実装すれば仕様通りの受信周波数範囲になると思います。(実装方法については、My Project/第2回を参照してください)


実装図


実装したところ

電源を入れると、「ジャーー」という音が聞こえます。クエンチング発振が起きている音です。可変抵抗器をゆっくり回して電波を探します。出来るだけノイズが少なくなる位置に合わせます。1回転で18MHzの帯域をカバーしているので、微妙な加減が必要です。信号強度が十分あればクリアに聞こえます。


プラスチックケース(55mm×40mm×20mm)への組み込み例

基板がとても小さいので、単5電池とともに小型のプラスチックケースに収めることが出来ます。

使用感:
FMラジオ放送は数kWから10kWの高出力で放送されているため、屋外ではクリアに受信できます。信号が強ければ少々離調していても受信できますし、場所によってはむしろ強すぎて復調音が歪むくらいです。FM補完放送はチャンネルスペースが狭いため、信号強度が強過ぎると混信する可能性があります。屋内での受信では、イマイチ感度が足りません。もっとアンテナを伸ばしたいところですが、アンテナを共振回路に直接繋いでいるため、長くすると同調点が下がったりクエンチング発振が不安定になったりします。

最後に:
超再生検波方式はVHF以上の周波数での動作も良好で、私はこれまでに315MHz、433MHz、916MHzの受信回路を作ってきました。どれも同調部分のコイルとコンデンサの定数変更によって周波数展開できました。今回、FMラジオの受信ということで低い周波数にチャレンジしましたが、同調部を変えるだけでは動作せず、結局バイアスから検討し直すことになりました。超再生検波方式はシンプルに見えてとても奥が深く、不思議な魅力と可能性を感じます。

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