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第七回 V/UHF帯3バンドアンテナ解体新書


Dr. FB

今月も144/430/1200MHzトリプルバンドトランシーバー、IC-9700に関連して144/430/1200MHzの3バンドを一本のアンテナがカバーする3バンドアンテナについて特集します。記事中のデータや資料の一部は第一電波工業株式会社から提供を受けました。

1. 3バンドアンテナのスペック

今回、3バンドアンテナを取り上げることになった理由は、下の図1に掲載しました1アマの国家試験の問題がきっかけです。


図1 2019年4月期1アマ国家試験工学問題(日本無線協会ホームページより引用)

上の試験問題にある1/4波長垂直接地アンテナとは、中波ラジオのアンテナに見る地面から垂直に立てられたアンテナのことです。我々がアマチュア無線の運用によく使うグランドプレーンアンテナも地面が空中に持ち上がりラジアルとなり、それが垂直接地アンテナと同様の仕組みで動いているといえば身近に感じると思います。

さて、図1の問題、これは解答者に1/4波長接地アンテナあるいはグランドプレーンアンテナの給電点インピーダンスを知っているか否を問う問題です。その給電点インピーダンス36Ωを知らなければ解けませんが、知っておればオームの法則で簡単に解けます。(答えは末尾に記載します)

図2を見てください。これは第一電波工業のVX4000という3バンドアンテナのスペックの一部です。インピーダンスは、50Ωとの記載があります。掲載の写真をよく見るとラジアルが付いていません。これは接地アンテナと同等の動作をしているグランドプレーンアンテナではないということです。ここで気が付くことは、このアンテナは電圧給電タイプかということです。それでもアンテナのコネクター端は、同軸ケーブルで給電できるようになっています。


図2 VX4000のスペック(第一電波株式会社のHPより引用)

2. 電流給電と電圧給電

先にも記述したようにこのVX4000は、グランドプレーンのようにラジアルがありません。通常ノンラジアルアンテナと呼ばれています。ラジアルがなくてもマッチングが取れるように内部のマッチング回路で工夫されています。

アンテナを考えるとき給電の種類で分ける方法があります。一つは「電流給電」、もう一つが「電圧給電」です。素人考えでは、電流給電のアンテナにはラジアルがある。ラジアルがある分、少しじゃまになるときもある。エレメント長が電圧給電に比べて半分の長さで済む。また、自作するときも比較的簡単。一方ノンラジアルタイプは電圧給電です。取り付け部のアースを考える必要はないので便利。エレメント長は、基本はλ/2であり、前者のアンテナと比較すると長いです。どちらも一長一短があります。

(1) 電流給電
λ/4垂直ホイップアンテナを車に取り付けるとき、同軸ケーブルの網線部分は車体に確実に接続しておく必要があります。この車体アースは、λ/4垂直接地アンテナの地面つまりグランド部分となり、中波のアンテナのように接地するアンテナと同様の動作となるため大変重要です。

λ/4垂直接地アンテナの電流分布を表したものが図3です。根元の部分で電流分布が最大になります。この部分から給電することで「電流給電」と呼ばれています。


図3 λ/4接地アンテナ(左)、λ/2ツエップアンテナの電流分布(右)
(2016年7月号のJA3FMP局の記事より引用)

(2) 電圧給電
もう一つはダイポールの片方のエレメントがない形状のツエップアンテナがこの「電圧給電」です。

図4はλ/2のツエップアンテナのエレメント上に定在する電流と電圧分布を表したものです。


図4 λ/2ツエップアンテナに定在する電流・電圧分布

図4の黒色の破線で示したものがアンテナに定在する電流分布です。給電点で最少となっています。これではエレメントで受信した信号を電力としては取り出せません。λ/4のアンテナとは対照的です。赤色の破線で示したものが電圧分布であり、給電点で最大となっています。アンテナと給電線のマッチングを取れば電圧給電できます。

電圧給電のインピーダンス変換については、2016年7月号にJA3FMP局が本FB NEWSでうまく説明されていますので、そちらをご参照願います。下にそのURLを掲載します。 http://www.fbnews.jp/201607/rensai/ja3fmp_electronics_workshop_38_01.html

3. VX4000を分解してみた

さて本題のVX4000の解体を始めます。アンテナのベース部分のねじを緩め、N型コネクター部を引っ張ると中から写真のようなエレメントが出てきます。(図5写真中央)エレメントにはスポンジが緩衝材として取り付けられていますが、今回それを外して写真撮影を行いました。(図5写真下段)


図5 VX4000の中身

各部品をイラストで描いたものが図7です。このイラストは、第一電波工業から提供していただきました。構造が大変複雑ですので、Dr. FBでは理解しがたいところもあり、各部品の役割も含めて第一電波工業に問い合わせました。

使用する周波数が高いため、構造は思った以上に複雑です。これをコピーして3バンド全てでバッチリ、インピーダンスが50Ωになるかは疑問です。正直、買った方が早そうです。キーポイントは、ベース部分のマッチング部にあるようですが、これも大変複雑です。


図6 VX4000のマッチング部分

マッチング部の黒いプラスチックのカバーを外して、その中を撮影したものが図7に掲載しています。冒頭にこのアンテナは、電圧給電なのでノンラジアルの構造になっていると記載しました。黒いカバーで覆われたその下にあるスリーブアンテナのような形状の部分がフィルターとして動作し、アンテナが電圧給電とならないようにしているとの説明を第一電波工業から受けました。このシュペルトップの特性を少し掘り下げて下に説明します。



図7 VX4000の中身をイラスト化した図

4. 電波の乗り方

下の図8は、エレメントに定在する電波の状況を各バンド毎に表したものです。


図8 VX4000のアンテナに定在する電圧分布

図9に示した図は垂直に立てたアンテナを地面に立った方向から見た各バンド別指向性特性です。FBDX


図9 VX4000の垂直面の指向特性


1アマ国家試験の解答:3番 3A

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次号は 2月3日(月) に公開予定

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