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今月のハム

JH3DMQ 水谷宗弘さん

大阪府柏原市に在住の水谷さんは、「Team7043(全国アマチュア無線非常通信ボランティア団体)」を立ち上げ、会長として日頃から災害発生時などに備えている。アマチュア無線との出会いは中学時代で、CB運用のために友人たちと山に登った時にアマチュア無線を楽しんでいるグループに出会い興味を持ったそうだ。

将来はアマチュア無線をやりたいという思いが強かったので、高校生になると周りでアマチュア無線の免許を取る友人が少しずつ増えてきたことから、いよいよ水谷さんも免許を取ろうと思い、高校2年の1970年に養成課程講習会を受講してライセンスを取得した。その後すぐに開局申請を行い、7、21、50MHzの3バンドで局免許を取得、50MHz AMでJH3DMQの第一声を発射したという。

アンテナは父親が自作してくれたルーフタワーに乗せた50MHz 5エレ八木。7MHzは自作のダイポール、21MHzは自作のZLスペシャルを使用した。開局後しばらくしてから、21MHzでCQを出していたチリの局をコールしたところ応答があった。10Wでは届かないだろうと思ってコールしたのに応答があり感激すると共に、「これがますますアマチュア無線に熱中していくきっかけとなりました」、と話す。

大学生となり、日々アマチュア無線を楽しんでいたが、1975年8月5日の朝6時頃、その日は朝からEスポが発生していたため、水谷さんは21MHzで8エリアに向けてCQを出していた。すると、ある局からSOSと呼ばれた。一瞬どうしたら良いか解らなかったが、無視するわけにもいかず、とりあえず応答したところ、岩手県金華山沖約700kmの太平洋上でマストが折れて遭難していたドラム缶筏の艦長だった。

コンディションの関係で定時連絡していたサポート仲間と連絡が取れなくなった状況で、CQを出し続けていた水谷さんをコールしてきたのだった。遭難中の艦長からは、名古屋の自宅に連絡を取るように頼まれ、水谷さんは必死で電話番号をコピーした。コンディションが不安定だったので、1度復唱した時点でEスポが消え、その局の信号はその後2度と聞こえて来なかった。水谷さんは足が震えたと話すがご実家に電話連絡を行い、奥さんに内容を伝えることができたことに自分でも感激したという。

しばらくすると、神戸海上保安部から間違いの無い情報か照会するための電話が水谷さんにかかってきた。「巡視艇やヘリを出動させるのでもし間違っていたら大変なことになりますよ」と言われたが、水谷さんは「もちろん間違いありません」と返答。後に10時頃には新潟県の高校生アマチュア無線家が同じ内容の通信を行っていたと聞いたそうだ。その日の16時頃には、遭難したドラム缶筏の近くを航行中の漁船に艦長が救助され、水谷さんは「助かるまでは胃が痛かったです」と話す。なお、そのときの内容は某全国紙で報道された。

時は流れ、1996年から近畿地方アマチュア非常無線通信コンテストが4年間開催されたが、水谷さんはそのうち50MHz部門で2回優勝している。非常通信の訓練そのものに興味があった訳ではないが、「面白そうだなと思って参加しました」と話す。そのコンテストに参加することで和文通話表を正確に使うことの必要性を強く感じたという。


優勝者に授与されたメダル

2011年3月11日14:46、東日本大震災が発生した。この時は大阪でも揺れを感じ、すぐにテレビをつけた水谷さんは東北、関東地方でものすごい被害が発生したことを知った。夕方までテレビのワッチを続けたが、孤立している人がいるかも知れないと思うと、いてもたってもいられなくなり、アマチュア無線を使って何かできることはないかと、19:14頃から7043kHzで電波を出し、「情報をください」と発信し続けたそうだ。

これは水谷さん自身が被災者ではないため非常通信ではなく、あくまでも被災地からの情報を収集するためだった。翌日12日、翌々日13日も毎朝5時頃から7043kHzで電波を出して情報収集を行ったそうだが、「当初は妨害も多かったですが、協力してくれる局もだんだん増えていき、交代しながら電波を出し続けました」と話す。


MBS毎日放送 Voice 頼りになるアマチュア無線
https://www.youtube.com/watch?v=CHejkGieAwM


そのときの様子は、後日、テレビで放送された。


上記写真2点はMBS毎日放送Voice提供

13日の朝には、停電のため車のバッテリーを使ってオンエアしてきた岩手県上閉伊郡大槌町赤浜地区のJA7CUR斎藤さんとつながり「自分の住む地区が孤立しており食料が無い旨を関係機関に連絡して欲しい」と頼まれた。協力局経由でその旨を大阪府警に連絡し、最終的には大槌町赤浜地区に食料が無事に届けられたという。

13日には非常通信周波数の7030kHzでJARL本部局JA1RLによる運用がスタートし、水谷さんらは、その後運用周波数を7030kHzに移行して6時から9時まで(JA1RLが9時に開局するまで)情報収集活動を行った。これは19日にJA1RLがインフラの回復を伝えて閉局宣言するまで続けた。

実は水谷さんは、この地震発生の数ヶ月前に7MHzのロータリーダイポールをあげたばかりだった。これも何かの縁と考え、これをきっかけに水谷さんはその年2011年の暮れ、「Team7043」を立ち上げた。「賛同して下さる局長さん達がいたお陰です」と話す。


2016年ハムフェア(東京)にて


2017年ハムフェア(東京)にて

Team7043では、毎月第一水曜日の20時から約1時間半、ロールコールを行っている。当初は7MHz SSB(7050kHz)と430MHz FM(JR3VK 439.11MHz)で行っていたが、諸事情で周波数を7123kHzに移行した。その後D-STAR(個人局指定)もはじめ、さらにその後は、Wires-X EMG-ROOM/D-GF #20740、そしてCW(7013&3513kHz コンディションや状況で+/-あり)を使ったロールコール※も行っている。 ※開始時間、エリア別交信リスト等は、下記Team7043ブログ参照


使用無線機はIC-7300MとIC-9700

また、諸事情で電波が出せない局のために、毎月1日には電波を発射しない「LINE-WEBロールコール」と称した電文伝達訓練も行っている。それ以外にも、Team7043が決めた日にWEBロールコールを行っている。これはEメールやLINE、FACEBOOK-Team7043グループを使い、文字情報だけでなく画像の伝達も行っている。大阪880万人訓練にも2013年から参加されているという。そして最大行事として、年2回、3月と9月に全国規模で他バンド他モードによる一斉通信訓練を行っている。

Team7043ブログURL: http://team7043.blog.fc2.com/


2019年関西アマチュア無線フェスティバルにて

水谷さんは、来年2020年に開局50周年になる。アマチュア無線をやってきて良かったこととして、「大学生の時に非常通信を経験し、人命救助ができたことが布石となって、2011年にボランティア組織「Team7043」を立ち上げることができた」ことを真っ先に上げる。本年2019年3月末付けで「Team7043(全国アマチュア無線非常通信ボランティア団体)」の代表を、JI2SSP平岡さんに交代したが、水谷さんは、今なお会長として会を支えている。

水谷さんの現在のアンテナ構成は、50MHzの8エレ八木、7/10MHzのロータリーダイポール、21/24/28Mの3ハンド4エレキュビカルクワッドである。ロータリーダイポールには18MHzが上手く乗ると話す。そして、タワートップには落雷抑制装置PDCEが乗る。このPDCEを取り付けて4年くらい経過したが、その間一度も落雷は受けていない。水谷さんが設置したタイプのPDCEは設置した高さ×5倍の半径に雷が落ちないと言われ、例えば、20m高に設置した場合は、約半径100mは安全地帯とのことだ。


水谷さんのアンテナ群。マスト先端にPDCEを設置

水谷さんが「Team7043」の活動以外で力を入れていることは、コンテストである。特にQRPでの参加にこだわっている。すでに、国内外のコンテストにQRPで数多く優勝/入賞しており、獲得した賞状の一部はシャックの壁に掲示してある。世界一位にも何度か輝いている。サイクル23の頃には、連日コンディションが良かったため、毎日QRPで大声張り上げて運用を続けていたら気管支炎になり、最終的に肺炎になってしまったそうだ。


水谷さんが受賞した賞状の一部

怒鳴っても一緒とは頭では解っていても、ただでさえJH3DMQのラストレターのQが相手に取ってもらいにくい。これがQRPだとさらに厳しく、相手からは「アゲイン」、「アゲイン」の繰り返しになるため、ついつい怒鳴ってしまうからだと説明する。「Small power, Great pleasure」(小さなパワーで大きな喜び)、これが水谷さんのQRPの原動力という。

コンテストには、個人コールのJH3DMQか、自宅が常置場所となっているTeam7043の社団局JF3YYEで出ている。水谷さんはなるべく入賞を狙いやすい部門を探してエントリーし、2019年の入賞率がなんと5割まで達したと話す。当面の目標として、コンテスト賞状でのADJの完成を挙げる。すでに、1 2 3 4 7 8の各エリアで開催のコンテストでの賞状は確保できており、残りあと4つのエリアとなっている。「残りのエリアが特に難しいと思います」と話す。

そのほかの目標として、リモートシャックの構築や、QRP DXCCの獲得を挙げる。「QRPで100エンティティと交信するのは非常に難しいです。上がりなど想像もできません。だから長続きするのです」と話す。


サイクル23の時、50MHz QRPで交信したQSLカード


水谷さんにとって50MHzバンドで初めての欧州局と北米局のカード。
先輩局から「いきなりQRPで呼ぶか!」と驚かれたとこのと。

最後に水谷さんは、「Team7043には現在約350人が登録しています。電波法が変わって今は7043kHzに電話モードでは出られませんが、チーム名を変えるつもりはありません。このロゴマークは私がデザインしました。ウエーブは波を表し、白地に赤は日本の国旗を表しています。「Total Emergency Amateur radio Mission」も私が考えました」

「Team7043では、会費は徴収しておらず寄付でまかなっています。ご興味がありましたら、代表のJI2SSP平岡さんまでぜひ連絡して下さい」と話す。



(編集者注) 現在の7MHz帯の非常通信周波数は7050kHzです。7043kHzは電信および狭帯域データに割り当てられており、電話モードでの運用は行えません。

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次号は 2月3日(月) に公開予定

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