新・エレクトロニクス工作室
2025年2月17日掲載
第32回のSG用30dBアンプは、10dBステップで30dBまでを可変できるアンプでした。これは常時SGの出力に入れて、便利に使っています。SGの最大出力が-12dBmですので、この30dBアンプで+18dBmの出力が得られます。しかし、リニアアンプの実験等を行おうとすると、更に高いレベルが必要になります。そこで、+28dBmを出力する10dBのアンプを作製しました。写真1のような超小型アンプですが、+28dBmですので0.63Wの出力となります。これでSGの用途が更に広がりました。
写真1 このように作製した+28dBmまでを出力するアンプ
もちろんですが、出力として+28dBm(0.63W)出すためには、+18dBmの入力レベルが必要になります。それ以下のレベルで+28dBmが得られるわけではありません。ゲインが10dBですので、それは当然の事です。+28dBmといえば、普段私が作成するQRPトランシーバのような出力になります。結構このようなアンプにも興味を持っています。
図1のような回路としました。RD06HHF1を12Vで動作させ、NFBをかけてほぼ平坦なゲインとしています。効率は悪いのですが、それは仕方ありません。電力的には、まだ多少の余裕はありそうです。
入出力の両方にアッテネータを入れてゲインの調整をしています。ゲインを10dBにするという目的と、出力のSWRが悪化した時の安定動作を考えています。更に最大の出力がどこまで出せるかという、トータルのバランスになります。結果的に、どちらも3dBのアッテネータになりました。しかし、実際にこれで良いのかは良く解っていません。一応ですが、出力をオープンにしてしまっても特に問題にはなっていません。SGシリーズのひとつとして使うのですから、そのような安定さが無いと使い難くなってしまいます。結果的に入力側で抵抗がパラになってしまいました。後から見ると実験の延長のようで、良く考えてない事が解ります。51Ωは撤去し、もう少し減衰量を大きくする方がスマートなのでしょう。
最初の実験は写真2のように、バラックで組み立てて行いました。アッテネータの部分は外部に付けています。このようにして問題なく動作する事を確認しました。
写真2 生基板上で動作の確認を行った
基板のサイズを考え、ケースにタカチ電機工業のYM-65を使う事にしました。写真3のように基板の配置を考え、ランドを貼り付けました。基板には高放熱片面銅張基板(エクール)を使って、熱をケースとヒートシンクに伝えようという作戦です。もちろん放熱としては基板とケースに穴を開けて、直接ヒートシンクにネジ止めするべきです。まあ、それほどの熱ではありません。
写真3 YM-65を使う事として生基板上にランドを貼り付け
今回は写真4のように先にケースの穴あけを行いました。もちろん写真1のようなヒートシンクを付ける事を考えての事です。少々大げさなヒートシンクと思いますが、手持ちが他に無かった結果です。まあ、小さ過ぎるより良いのでしょう。普段の工作の順番と異なりますが、このようにケースありきの工作になりました。
写真4 先にケースの穴明けを実施
そのまま写真5のように配線を行いました。反対側にあるヒートシンクが、少しだけ見えます。手前側に偏って配置しているように見えますが、ケースの下側にはDCジャックや電源スイッチがあります。あまり余裕はありません。
写真5 配線を行った様子
調整はアイドリングを500mA程度になるように半固定VRを回すだけです。これが最適なのかは良く解っていません。もう少し研究する必要がありそうです。
入出力の特性を50MHzで測定したのが測定結果1になります。このように、ほぼ直線で45度になりました。+28dBmまで問題なく出力できました。これ以上の試験ができず、出力が飽和するところまで測定できませんでした。これからは、もう10dB高く測れる事になります。
測定結果1 入出力の特性 +28dBm出力まで直線となった
周波数特性を測ったところ測定結果2のように、ほぼ平坦になりました。入力は0dBmとしています。1divを2dBで設定していますので、10MHzから50MHzまでは0.2dB程度の範囲に入っています。ただ、7MHzではゲインが低下してしまいます。これは今後の課題でしょう。
測定結果2 NFBをかけた周波数特性 0.2dB程度の誤差に収まった
試しにNFBを外すと測定結果3のようになりました。同様に0dBmの入力で測っています。入出力のアッテネータはそのままですので、アンプとしては22dB程度のゲインとなります。入出力のアッテネータを外せば28dBのゲインとなります。このまま20dB程度のアンプにしても良いのですが、ゲインがあり過ぎても使い難くなります。また、もう少し50MHzでのゲイン低下を少なくしたかった事もあります。もちろん、これでもSG以外の使い道はありそうです。
第32回のように、これを使って0~40dBのアンプに発展させるつもりは全くありません。さすがに出力が大きくなると、一体化するのは逆に使い難くなりそうで躊躇します。例えば、受信機に過大な入力を入れてしまうなどの失敗にも繋がりそうです。恐らく、QRPのリニアアンプの実験をしたい時に持ち出す程度だと思いますし、それで良いのだと思います。
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