日本全国・移動運用記
2025年2月3日掲載
2024年から2025年の年末年始の休みは、九州地方南部で移動運用を行いました。前年は浜松市の区の消滅・新設があり、そちらを優先しました(2024年2月号の記事)。そのため、今回は久々に年末の九州地方への移動を計画しました。
1月2日の9時以降はQSOパーティが始まり、各周波数帯が混雑するため、その時間の運用は行わないことにしました。この制約を考慮して、運用日を逆算して決定しました。12月27日は宮崎県、28日と29日は熊本県、30日と31日は鹿児島県、1月1日は再び熊本県で運用する計画を立てました(図1)。なお、鹿児島県については、この連載でも紹介した通り、2024年に既に一部の場所で運用しているため、今回はまだ運用していない薩摩半島を回ることにしました。
図1 移動ルート
12月25日の午後、自宅を出発し、最初の運用予定地である宮崎県まで約1,000kmを運転しました。幸い、渋滞や天候の悪化もなく順調に進み、26日の午前中には九州に到着しました。予定より早く到着したため時間に余裕があり、大分県南部の臼杵市・津久見市・佐伯市で運用を行いました(写真1)。大分県での運用は事前に計画していませんでしたが、現地で運動公園や港を検索し、運用場所を簡単に見つけることができました。
カレンダー上では木曜日で、多くの方が仕事中だったようで、パイルアップは少なめでした。夕方には宮崎県に移動し、西臼杵郡日之影町で運用を行いました。しかし、日没後は7MHz帯の国内伝搬がスキップしてしまい、QSO数を大きく伸ばすことはできませんでした。
写真1 津久見市での運用の様子
この日は宮崎県の山間部の3町村での運用を計画しました。特に、東臼杵郡椎葉村は険しい地形に加え、運用場所の確保が難しいと聞いていたため、移動に時間がかかることを考慮し、通常1日4か所の運用を3か所に限定しました。
椎葉村では、村の中心部に近い主要国道が土砂崩れで通行止めになっており、狭い迂回路が指定されていました。その迂回路は普通自動車がギリギリで通れるほどの幅で、民家のすぐそばを通る場所もありました。また、椎葉村から熊本県に直接向かおうとすると、多くの区間で通行止めがあり、大幅な迂回を強いられることが判明したため、結果として、椎葉村での運用は昼間のみとしました。
椎葉村の集落の多くは谷底に位置し、サテライト通信の運用には適していませんでした。ヘアピンカーブや狭い林道を何度も通り抜けた末、ロケーションの良い公園を見つけ、無事に運用を行うことができました(写真2)。次に運用した東臼杵郡諸塚村では、見晴らしの良い場所がすぐに見つかり、スムーズに運用を開始できました。
一方で、この日の伝搬のコンディションは良好とは言えず、早朝に運用した西臼杵郡高千穂町では、通りかかった方から「28MHzもやっていますか?」と突然尋ねられ、「今日のコンディションでは何も聞こえないです」と答える場面もありました。夜間の山間部を移動中には、シカやタヌキなどの野生動物が次々に飛び出してくるため、慎重な運転が必要でした。また、通行止めで引き返した所もあって、諸塚村から熊本県球磨郡水上村への移動には4時間近くかかりました。
写真2 東臼杵郡椎葉村での運用の様子
熊本県球磨郡には9つの町村があり、今回は地理的に離れた五木村を除く8つの町村で運用する計画を立てました。まずは東側から運用を開始しました。
最初に訪れた水上村では広い平地が見当たらず、夜明け前からのサテライト通信のため、それなりに広さのある公園を運用地に選びました。冬季の九州では日の出の時刻が遅く、さらに小雨で視界が悪かったため、どの方向に山があるか分からない状態で運用を開始したところ、衛星からの信号をうまく捉えるまでに苦労し、慌ただしい運用になりました。日の出の時刻を過ぎると、周囲の山の形が確認でき、予想以上に高い山に囲まれていることが分かりました。
その後、湯前町、多良木町、あさぎり町へと西側に移動しました。西側に行くほど広い場所が多く、天候も回復して快適に運用できました(写真3)。この日は土曜日で、多くの方が年末休みに入っていたようで、どの町村でも長時間のパイルアップが続き、最終的には1,200QSOを超えました。
写真3 球磨郡あさぎり町での運用の様子
球磨郡の西側では、錦町、相良村、山江村、人吉市の順に運用を行いました。錦町では、周囲に山や建物が無い広い場所を確保でき、快適に運用できました(写真4)。一方で、相良村と山江村では広い場所が少なく、山の上にある公園を運用地として選びました。
この日の朝は天候に恵まれたものの、冷え込みが厳しく、地面は凍結していました。運用中は、電力供給の制限やノイズ発生を避けるため暖房を使用せず、寒冷地仕様の防寒着を準備して対応しました。日の出から時間が経つにつれて、外気温は低いままでしたが、車内では徐々に暖かさを感じるようになり、運用に集中することができました。
写真4 球磨郡錦町での運用の様子
鹿児島県での最初の運用は姶良市で開始しました。2010年に市政施行された際に移動運用を行っており、付近の状況は把握済みです。今回は、高速道路のインターチェンジに近く、海に面した公園を選んで運用を開始しました。その後、鹿児島市の海岸付近を経由し、南九州市に移動して運用を続け、最後に指宿市に向かいました(写真5)。
昼過ぎに、南九州市で7MHz帯の状況を確認したところ、運用局の気配が全く無く、最初は無線機の故障やアンテナの断線を疑いました。しかし、送信の点検では異常が見つからず、電離層のデータを確認したところ、デリンジャー現象が発生したと分かりました。この現象は、電離層にHF帯の電波が吸収される異常伝搬の一種で、特に悪影響を及ぼします。7MHz帯は厳しい状況が続きましたが、10MHz帯に出てみると数10分後に回復の兆候が見られました。さらに時間が経つと、7MHz帯も弱いながら聞こえるようになりました。
夕方、指宿市に移動した時には7MHz帯の伝搬は通常に戻っていましたが、日没で10MHz帯が聞こえなくなり、続いて7MHz帯も聞こえなくなりました。
写真5 指宿市での運用の様子
この日は、薩摩半島南部にある枕崎市から運用を開始しました。強風の影響で、通常使用している釣竿アンテナではSWRが安定せず、ロングワイヤーアンテナを設置してオートアンテナチューナーを活用し、HF帯の全バンドでの運用を行いました。アンテナの長さが功を奏し、早朝から1.9MHz帯で8QSOできるなど、各バンドでパイルアップが続きました。その結果、1か所の運用で451QSOに達しました。
枕崎市は水産加工業が盛んで、運用場所では鰹節の香りが立ちこめており、運用終盤の空腹時にはその香りが強く感じられ、少々堪える場面もありました。
続いて、南さつま市と日置市に移動し、それぞれ年末で人が少ない運動公園の駐車場で運用を行いました(写真6)。ここではローバンドの運用予定が無かったため、釣竿アンテナで運用しました。しかし、強風の影響で釣竿が大きく傾きながらの運用でした。
写真6 南さつま市での運用の様子
新年の初めは、熊本県の水俣市で運用を開始し、葦北郡の2町で運用した後、最後に球磨郡球磨村での運用を計画しました。
水俣市の公園では、初日の出を見に来ていると思われる人々がいました。そのため、漁港の端で邪魔にならないように運用を行いました。次に訪れた葦北郡の津奈木町と芦北町は、広い平地が少なく、山に囲まれている地域です。特に津奈木町ではサテライト通信の運用場所を見つけるのに苦労し、衛星からの信号が聞こえる時間も短かったため、十分なサービスができませんでした。
最後は球磨郡球磨村に移動しました(写真7)。ここも山間部に位置しており、運用場所の確保には時間がかかりました。元日ということもあり、各バンドで長時間のパイルアップが続き、2025年のスタートを多くの交信で迎えることができました。
写真7 球磨郡球磨村での運用の様子
QSO数を表1に示します。7日間に及ぶ運用で、1日1,000QSOを達成した日は4回ありました。28MHz帯で強力な信号が聞こえた際には、50MHz帯にもチャレンジしたものの、いわゆるシーズンオフのため電離層反射は無く、交信には至りませんでした。
表1 周波数帯、運用日、QTHごとのQSO数。1.9~28MHz帯はCW、サテライトはCWとSSB。
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