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楽しいエレクトロニクス工作

第46回 自動アンテナ切替器

JA3FMP 櫻井紀佳

アマチュア無線を長く楽しんでいると、多くのバンドにオンエアするようになることは珍しくなく、そのため複数のアンテナが必要となり、複数の同軸ケーブルをシャックに引き込むことになります。

この場合、無線機背面にあるアンテナ端子の数以上のアンテナを使用する場合は、同軸ケーブルの切り替えが必要となります。手動で切り替える同軸切替器は市販品もありますが、いちいち壁まで手を伸ばしたり、アンテナが多数になると複数の切替器を操作したりしなければならないなど、手間がかかり煩雑なので、今回はHF帯用の自動アンテナ切替器を考えてみました。

ずっと以前にはアイコムからEX-627という型番のオートマチックアンテナセレクターが販売されていましたが、現在この種のオプションは販売されていません。


今回製作した自動アンテナ切替器      アイコムのEX-627(製造完了品)

自動アンテナ切替器を作るためにはリレーを使う必要があり、リレーの高周波特性が気になります。同軸リレーは高周波特性が良く2回路の切り替えには向いていますが3回路以上の複数回路の切り替えには不向きで、またリレーの単価も高価なため採用困難です。このため一般のリレーで高周波的に良さそうなものを探すことにしました。

電流容量として計算すると、高周波切替電流は50W 50Ωで1A、200Wでは2Aですが、SWRが悪くなってインピーダンスが下がると電流が増すことになるので10A以上のものを探すことにしました。部品屋さんで実物を見ながら選び、オムロンのG2R-1-Sを見つけたので購入しました。接点はストレートでリード線はなく高周波的に良さそうに見えます。リレーの接点容量は10Aでコイルの電圧は12V、大きさは28x29x12mmです。このリレーを使って切替器を作ってみました。

今回製作するアンテナ切替器は、接続できるアンテナの数を最大6本として自動切替はもちろん、手動でも切り替えられるように考えました。手動の時は単にロータリースイッチでリレーを切り替えるだけですが、自動切替は、アイコムの無線機(IC-7300など)のアクセサリーソケット(13ピンDINコネクタ)の5番ピン※から出ている各バンドに相当するバンド電圧を利用します。
※7ピンDINコネクタのアクセサリーソケットを備えている無線機の場合は、4番ピン。

手持ちの無線機(IC-9100、IC-706MK2、IC-7300)のバンド電圧を実測してみると次のようになりました。IC-9100のバンド電圧を元に各バンドのスレッショルド電圧を決め、それに近い電圧になるよう基準の電圧を決めています。スレッショルド電圧は理想的な電圧という意味ではなく、実測した各バンド電圧の中点に近い電圧になるよう市販の抵抗値の組合せで決めたものです。


※ 10MHzはバンド電圧が0Vのため、本装置の自動切替には対応していません。(手動切替は可能)

これらの電圧を元に全体的な回路を考えてみました。手動の切替スイッチは別の小さな箱に入れ、アンテナ端子を含めた切替回路は次のようになりました。

自動切替の時、各周波数に対する制御電圧の取り出しは、それぞれのコンパレーターIC2A~IC4Bに設定したスレッショルド電圧と比較して電圧の下から順にONになっていきます。IC-9100で、例えば7MHzではバンド電圧が5.26Vでスレッショルド基準電圧が4.70VのためコンパレーターD (IC3A)がONになり、コンパレーターE (IC2B)はOFFのままです。これらの出力に繋がったEXOR4はH出力になりますが、これ以外のEXORは入力が同レベルのため全てL出力になっています。他のバンドも同様にそのバンド電圧の検出で順次ONになり、EXORの動作で後のFETをONにしてリレーを動かします。どのリレーが動作しているかを表示するため各リレーのコイルと並列にLEDを取り付けました。

3個のコンパレーターは、最初は全部8Vの電源で動かしていたのですが最大のバンド電圧の入力が7.8Vで、コンパレーターの入力最大値がVdd-1.5Vで6.5Vとなり正常に働かないことが分かり電源を12Vに上げました。それぞれのスレッショルド電圧を8Vで計算して既に配線していたので最後のコンパレーターの電源だけ変更しています。


A~Fはコンパレーター、1~6はEXORの動作       右はその基板

無線機からのバンド電圧は最大8Vのため、コンパレーター、ロジック共8V動作にしたかったのですが、8Vで使えるCMOSロジックの4000番シリーズのICが通販でも手に入らず、やむを得ずコンパレーターは8V、ロジックは5Vの電源で使うことにしました。12V電源は手元に12Vの3端子電源ICがなかったのでツェナーダイオードとトランジスターの構成にしました。もしロジックICの4000番シリーズの4030または4077が手に入ればもう少し回路をシンプルにできると思います。

リレー選択回路はバンド選択回路EXOR1~6で得られた電圧でどのリレーを動作させるかを決めるものです。例えばアンテナ1は7MHzと21MHzに使いたいという場合です。この選択は縦横マトリックスに配置した2列のピンヘッダーにショートバーで接続します。

リレーのドライバーはほとんど直流的な使い方なのでスイッチ動作が簡単なFETを使いました。ドライバーのFET Q1~Q6のBS170は手元に残っていたものを使っただけで、リレーをドライブできる50mA位以上のものならなんでもOKです。またダイオードをリレーのコイルと並列に入れて切り替え時の過渡期の電圧からFETを保護しています。

このようなリレーの切替回路では例え個々のリレーの高周波特性が良好でも、切替のコモンに繋がる複数の接点が並列に入るため高周波特性が懸念されます。

このため高周波特性を検討してみたいと思います。HF帯も計れるネットワークアナライザーがあれば良いのですが、そのようなものは持っていないためアンテナアナライザーを使って測定できないかやってみることにしました。なお、現在HF帯のネットワークアナライザーは販売されているものが極端に少なく購入するのも難しい状況です。また、このような場面でよく使用している手持ちの方向性結合器は100MHz以上でしか使えないため、今回は役に立ちませんでした。

そこで手元にあるDELICAのAntenna Analyzer AZ1HFで測定することにしました。この測定器は本連載の「第19回マルチバンドワイヤーアンテナ」での測定時にも使いましたが、抵抗分以外にCの成分もLの成分も測ることができます。

実際の回路を想定して次のような接続で試験してみました。実際の回路では接続はいつも一つだけなのでダミーロードも各端子に付け替えて測定しました。今回使った終端のダミーロードは以前の測定でリターンロスが50dB以上の2GHz位まで良好な特性をしていることが分かっています。


試験回路とアンテナアナライザー

この測定結果は予想に反して、どの端子でも、また1.8MHzでも28MHzでもほぼ50Ωの純抵抗に近く、C成分もL成分も検出されない位わずかなものでした。周波数が最高でも30MHz以下と低く、リレーや配線の寄生成分が影響しなかったものと思われます。

リレーから各M型アンテナコネクタまでの配線は、一応気を遣ってRG-58Uの50Ωの同軸を使いました。この配線で扱える通過電力は精々200Wまでです。1kWでの使用は危険ですのでお止めください。

各リレーを繋ぐコモンの接続も理想的にはどの点も50Ωにしたいところです。しかし工作的にうまい方法がなくやむを得ず単に並列に繋ぐだけにしましたが、結果的には影響ありませんでした。

アンテナ切替器本体はシャックの壁に取り付け、切替スイッチは手元に置きたいため、コントローラー部分を別のケースに収納して、ケーブルで本体と接続しました。接続する線数が多芯なため、ケーブルを探すのに苦労しましたが、ラッキーなことに、たまたま部品屋さんで25芯で1.5m長位の端数販売を見つけ購入しました。接続コネクタは回路図に記載した13ピンDINコネクタが部品屋さんに在庫が無かったため、今回は部品屋さんで入手できた別のコネクタを使用しています。


手動切替にも対応させたコントローラーと、その回路

完成後、実際に使ってみると非常に便利で、それまでアンテナを切り替える度にいちいち壁に手を伸ばし、複数の同軸切替スイッチを操作していたのが嘘のような感じになりました。是非お勧めしたい便利グッズです。


金属ケースに収納した切替器本体のパネル面


切替器本体の内部の様子

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