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ものづくりやろう!

第十二回 モールス練習機(ブザー)

JH3RGD 葭谷安正

はじめに

先日、職場の友人が3アマに合格したとの連絡をうけました。友人はモールスでオンエアしたいとのことも聞きました。電鍵やモールス練習機などは持っていないようです(と一方的に思っていました)。アマチュア無線家が減少する状況下、ぜひとも仲間としてアマチュア無線家の輪の拡散に貢献してもらいたいと思い、サプライズでモールス練習機(早い話がブザー)を製作し、古い電鍵と共に差し上げることにしました。

回路

発信回路を自分で作ろうかと思いましたが、以前自分で回路設計をして増幅器を設計してみたのですが歪んだ波形しか出ない増幅器になりました。下手に自分で設計するよりは、「確実に動く回路をネットで検索して選ぶ」、という安易な選択をおこないました。

回路はネットを検索すればすぐに何件かヒットしました。そのうちの一つが、「3D無線クラブ」の「乾電池1本 1.5Vで動作する低周波発信器の作り方」です。昔見たことのあるような回路です。今から50年以上前、電話級に合格した後で「次は電信級をとるぞ」と決意して電信の勉強をはじめました。最初はミニ電鍵を買ってきて、それにブザーをつないで練習していましたが、音量と周波数を可変できるモールス練習機を雑誌の広告で見てからはそれが欲しくてたまりませんでした。当時は手元の雑誌などを調べて回路を見つけ、それを自作しました。日本橋に部品を買いに行ったり、失敗したりで、結局高価なモールス練習機になってしまいましたが。その時の回路がこんな回路でした。さらにHPを最後まで読むと、この回路は初歩のラジオ別冊「アマチュア無線アイデア百科」(誠文堂新光社刊)を引用されておられるようです。その本、確か見たことがあります(立ち読みで)。当時「ラジオの製作」派だった私ですが、「初歩のラジオ」も立ち読みで参考にさせていただきました(隠れた「初歩のラジオ派」だったんです)。

さて、図1が今回製作したモールス練習機(ブザー)の回路図です。


図1 モールス練習機(ブザー)

回路の動作としてはNPNトランジスタ2SC1815とそのコンプリメンタリのトランジスタ2SA1015とで発振回路を構成しているようです。3D無線クラブのHPの記事にはR1を1MΩの可変抵抗器にすると発振周波数を可変できると書かれていました。発振周波数を落としてLEDの点滅回路に使用している事例もありました。電源電圧については、わずか1.5Vの電源で動くところがすごいですね。

部品数はわずか8点です。使用している2個のトランジスタのうち2SA1015が手持ちにあるのか調べてみたところ、残り1個ありました。また、発振周波数を可変するためにR1を1MΩの可変抵抗器にしたかったのですが、あいにく10kΩ程度の可変抵抗器しかありませんでしたので、470kΩの固定値としました。他のホームページを見ているとR2の値を変化させても発振周波数は変化しそうです。そのほかの部品はそろっていましたのですぐに製作開始です。

組み立て

最初は、回路をプリント基板上に組むつもりでしたが、これくらいの部品だとラグ板にハンダ付けするだけで済みそうですので、ラグ板上に部品を固定してはんだ付けすることにしました。3ピンのラグ板がたくさんありますのでこれを使いました(図2)。ラグ板は3ピンのものを3枚準備しました。


図2 ラグ板(1L3ピン)

また、ラグ板を自立させるために縦×横=10cm×10cmのMDFボードを底板に使用しました。このMDFボード上にラグ板、スピーカ、電池もすべて載せてしまおうという考えです。

あとははんだ付けするのみです。回路図に従ってラグ板上に部品をはんだ付けして組み立て作業終了です(図3)。電池の固定、スピーカの固定、電鍵用端子の接続、などが残っていますが、後日行うことにしました。

動作チェック

これで発振周波数を可変できないモールス練習機がかたちになりました。「市販のブザーでもいいじゃない」という声が聞こえてきそうです。発振周波数を可変できなければブザーで十分です。反論の余地なしです。


図3 モールス練習機(ブザー)完成品

電鍵は、図3の電池のところに見えるミノムシクリップの先に接続されています(図4)。図1の回路で言うと、スイッチに相当するところに電鍵を接続します。


図4 モールス練習機(ブザー)と電鍵を接続

動作状態ですが、電鍵をたたくと歪んだ音が聞こえてきます。また、オシロスコープで見なくても音から明らかに発振周波数が不安定であることがわかります。固定抵抗で製作したため調整箇所がなく、調整のしようがありません。酷いはんだ付けが原因かもしれません。

さて、このモールス練習機を差し上げようとしましたら、「すでに買いました」とのことでした。「電鍵は?」と聞きましたら「ベビー電鍵を買いました」との事でしたので「それよりちょっと大き目の縦ぶれ電鍵ありますよ。」と言いましたら喜んで引き取っていただけました。ということで、モールス練習機は手元に残り、何かのブザーとして使うことにします。

過去の自作複式電鍵

友人に古いパドルも差し上げようと思って探しましたがみつかりませんでした(それでよかった。もらっても迷惑だと言われる品物です)。ところが、その3日後にXYLのおかげで見つけることができました。わたしのジャンク箱(XYLから見るとゴミのオンパレード)の一つは、今回まで気づかれることなく3年ほど開封していませんでした。住んでいる町の不燃物ゴミの日にむけてXYLからガラクタの廃棄勧告をうけたため、封印されたジャンク箱の中を覗いたら6年ほど前に自作したパドルなどを見つけました。再開局の時に古い縦振れ電鍵を使いはじめましたが、パドルも使ってみたいと思い、自作したものです。このパドルで3年ほど遊んでいましたが、誕生日プレゼントに市販の複式電鍵を購入できましたので、その後は写真のパドルは使うことがなく眠っていました。見てくれは悪いのですが、タッチが軽くて打ちやすい自作パドルでした。もう一つ別の見てくれがマシな自作のパドルがあったはずなのですが、いくらなんでも図5のパドルを友人にさしあげるのはごみを引き取ってもらうようなものであり、さりとて私にとっては思い出があって捨てるのも忍びなく、結果、今回の不燃物ゴミにも認定することなくジャンク箱に戻してしまいました。


図5 自作パドル

引用文献

・3D無線クラブ 「乾電池1本 1.5Vで動作する低周波発信器の作り方」
https://www.ddd-daishin.co.jp/ddd/49-af-osc/index.htm

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