Short Break
完成したホワイトノイズジェネレータ
訂正とお詫び:
本記事において、読者の方から回路が正しくないとのご指摘をいただきました。内容を確認しましたところ、読者のご指摘の通りであったことから図2の回路図を2点変更しています。本記事をご愛読の皆様方にはご迷惑をお掛けしましたことをお詫びいたします。また、回路の説明を末尾に記載しましたのでご参考にしてください。2022.12.7
キットでオーディオアンプを製作しました。その周波数特性を測定しようと思い、簡単なホワイトノイズジェネレータを製作しました。
Hi-Fiのオーディオ機器では、増幅器の入力レベルに対して出力レベルがリニアであることは重要な要素の一つです。アマチュア無線で使っているリニアアンプも同様です。また、出力信号のレベルが周波数によって変化しないことも重要な要素です。
通常、周波数特性の測定では、入力信号のレベルを常に一定に保ちながら周波数を変化させ、そのときの出力レベルを周波数ごとにプロットします。これはひと昔前のマニュアルによる測定ですが、近年の自動計測器でも基本は同じです。
そこで、周波数によって入力信号レベルが変化しない信号発生器が求められます。例えばNPNトランジスタのベース・エミッタ間に逆方向の電圧を加えることでノイズが発生することが知られています。このノイズは限られた周波数範囲の中ではほぼ一定のレベルを出力することから、この信号を増幅することで周波数の変化にあまり影響しない一定レベルの信号を取り出すことができます。ここで一定レベルの信号と言いましたが、その一定レベルの信号とはあの「ザー」という雑音のことです。
この「ザー」という音の信号を周波数特性のグラフでみると雑音が均一に含まれており、レベルは一定の周波数範囲では平坦な特性となります。この周波数特性のグラフを光の波長に置き換えると、白色を示す周波数の特徴に一致することから、この雑音の事をホワイトノイズと呼ばれています。
ツェナーダイオードによる方法やオペアンプによる方法もあるようですが、一般によく知られているトランジスタのB-E間に逆方向の電圧を印加する方法で行いました。ネットで検索すると多くのOM諸氏がこのホワイトノイズジェネレータの製作にチャレンジされています。ノイズの発生にB-E間に逆方向電圧を印加しても、トランジスタによってはよくノイズが発生するものとそうでないものがあるようです。手元には数種類のトランジスタがありますが、とりあえずは汎用品の2SC1815でトライしました。図1がそのホワイトノイズを発生させる原理図です。
図1 ホワイトノイズ発生回路(B-E間に逆電圧を印加する)
図2のQ1がノイズを発生させる素子です。2SC1815のベースをアースに落とし、B-E間に電圧を加えています。通常の動作とは反対の電流の流れない逆方向の電圧です。ここで発生したノイズをQ2で増幅し、その信号をさらにIC1のオペアンプで増幅しています。
IC1にはLM358を使っています。このオペアンプのユニティゲイン*1はメーカーのスペックシートによると1MHzとなっています。仮にQ1でノイズが広帯域で発生していたとしても、1MHzを境として出力レベルは変化していくことになります。また、素子間のコンデンサのリアクタンス等でも周波数特性が一定でないことが分かりますが、オーディオ機器の周波数特性を測定する目的でするから、このあたりの性能は無視します。
*1 増幅器に入力された信号と出力信号の増幅率が1である事を指します。
回路はシンプルであることから8×5×3.5cmの小さな樹脂ケースに組み込みました。フロントパネルには、パイロットランプ、電源ON/OFFスイッチ、それに出力レベルを調整するボリュームを取付けました。リアパネルには、電源ジャックと出力信号を取り出すBNCコネクタを取付けました(図3)。回路を変更したときでも容易にPCBを取り外せるようにコネクタ接続としています(図4)。
図3 完成したホワイトノイズジェネレータのフロントとリアパネルのレイアウト
完成したノイズジェネレータの出力をオシロスコープで観測したのが図5です。きれいな信号を出そうと日々苦労しながら電子工作を楽しんでいるのにノイズが出たことで喜んでいるのは何か変な感じです。
図5 ホワイトノイズジェネレータの信号をオシロスコープで観測
次にノイズジェネレータの周波数特性をWaveSpectra*2測定しました。図6から分かりますように0~20kHzまでのオーディオ帯域では少なくともほぼ一定のノイズレベルであることが分かります。縦軸が信号レベルで、横軸が対数表示の周波数です。
*2 フリーのソフトウェアでefu氏が開発したオーディオスペクトラムアナライザ
図6 ノイズジェネレータの出力特性をWaveSpectraで観測
このWaveSpectraは、オーディオ帯域のスペクトラムスコープであることから、RF帯域に渡る広範囲を測定することはできません。AFからRFに至る広帯域のスペクトラムを測定しようとtinySAでも確認しましたが、ノイズジェネレータの出力レベルが低く、測定できませんでした。
今回はオーディオ機器の周波数特性を調べることを目的としてホワイトノイズジェネレータを製作しました。仮にこのノイズの出力がRF領域まで均一に延びているとすれば、例えば受信機やRFプリアンプの調整等にも使えます。
前述しましたようにこのホワイトノイズジェネレータのアンプにはオペアンプを使っていることから、周波数特性がRF領域まで延びていないことは分かっていますが、現状はどうなのかをIC-705のオーディオスコープ機能で確認しました(図7)。
中波帯ではSメータ表示は、S=9あるいはそれ以上を示しました。1.3~1.9MHzでは、概ねS=7~8でした。アマチュアバンドでは、Sメータが振るのは、7MHzまでで、それ以上の周波数帯になると、ノイズは受信していることがスピーカの音を聴くと分かりますが、Sメータを振らせるほどのレベルではありませんでした。
下のスコープ画面で[8]と[9]では、周波数は10kHzしか変化していませんが、Sメータ指示は大きく変化しているのは、IC-705のバンド切替時の感度差と思われます。これらスコープ画像によるノイズレベルは参考程度としてください。
図7 RF周波数帯域におけるノイズレベルをIC-705のオーディオスコープで観測
CL
下に示した赤色で表記した部品2点を本文中の図2の回路図に追記しました。
Q2のベースとVcc間にR9(1MΩ)を記載漏れにより追記しました。この抵抗がないとQ2にベース電流が流れず動作しません。
さらにIC1の3番ピンとGND間にR10(100kΩ)を追加しました。この抵抗がなくても最初の数分は一見正常動作をしているように見えますが、実際は徐々にその出力は低下しています(訂正回路図参照)。これは、IC1(LM358)の3番ピンとGND間に抵抗がなかったことが原因しています。3番ピンおよび2番ピンの入力端子は、ICの内部のPNPトランジスタのベースにダイレクトに接続されています。この入力信号を受けるPNPトランジスタが正常に動作するには、ベースに電流を流す必要のあることからベース-GND間に抵抗を接続する必要があります。当初の回路にはこの抵抗がありませんでした。
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