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ものづくりやろう!

第十八回 ローテーターのワイヤレスリモート制御化実験

JH3RGD 葭谷安正

1. はじめに

先月(9月)の中旬に台風が私の住む近畿地方を通過するかのような情報が流れましたので、アンテナを下して台風に備えていました。台風が通り過ぎて行ったらアンテナの整備もしようと張り切ってアンテナを分解していましたらローテーターケーブルに傷をつけてしまいました。ケーブルを新調すればいいのですが、この際ですからアンテナ切り換え装置と同様、リモート切り換えを試みることにしました。これで扉を横切るケーブルがまた一本減りそうです。

2. ローテーター

写真1、2のクリエートデザイン社製ローテーターは何年か前にヤフオクで落札したものです。落札品を受領して電源を投入したときには方位表示が動かず、配線図を見ながらテスターで触れる端子を確認し故障発見を試みました。「ポテンショメータが壊れているんだろうな」と判断し、それ以来方位表示ができないまま使い続けています。ローテーターの設置場所は北側ベランダ。私の無線機の置いてある場所から近距離ではありますがどちらを向いているのかは視認できません。方位情報のかわりにAtomというネットワークカメラとそのソフトウェアの携帯アプリを使用してモニターをしています。正確な方位はわかりませんが夜でも見えるので、ローテーターを分解修理することなくそのまま使用しています。


写真1 アンテナ本体(ローテーター)とローテーター制御器(インジケーター)


写真2 ネットワークカメラ(Atom)による方位のモニタリング

ローテーターをリモート化するにあたっては、マイコン(micro:bit)やリレーユニットの機能、設置場所などを次のように決めました。
(1) 現在室内に置いてあるインジケーター(制御器)をローテーターの近く(屋外)に移動する。
(2) インジケーターとローテーターの電源は屋外コンセントからとる。
(3) インジケーターのリモート制御のために、インジケーターにリレーユニットとマイコンを外付けする。
(4) リレーユニットとマイコンで、つぎの2点をおこなう。
 ① インジケーターとローターの電源のON/OFF
 ② ローターのCW、CCW方向の回転制御リレーのON/OFF
(5) 無線機近くのマイコンと、インジケーター近くのマイコンを無線でつなぎ、無線機近くのマイコンから、(4)の制御をおこなう。これは、
 ③ インジケーターとローテーターの電源のON/OFF制御信号をローテーター側マイコンに送る。
 ④ インジケーターのCW、CCW方向の回転制御の信号をローテーター側マイコンに送る。

図であらわすと、図3のようになります。


(a)現状


(b)無線化後
図3 リモート化機器構成

3. インジケーターまわりの改変

インジケーターが手元から離れた位置に行ってしまいますので、必然的にインジケーターのスイッチに相当する機能を手元のマイコンに持たせる必要があります。クリエートデザイン社のローテーターRC5-1のインジケーター表面には、①POWERスイッチ、②CW/CCW回転スイッチ、③回転スピードのSPEED制御ボリュームスイッチ、の3つがあります。当初、この3つを実現しようとしました。しかし、③のSPEED制御はリレーユニット以外の付加装置を追加実装しなければならず、micro:bitには荷が重いと思いました。また、のんびりと無線をやっている私にはインジケーターの回転SPEEDを変えることもほとんどありませんのでSPEEDは一定にしたままで、コントロール機能を実装しないことに決めました。(「付加回路もつけなければいけないし、面倒になるぞ」という悪魔の声も聞こえて来たことも要因ですが、Hi)

付加的な回路は極力少なく、と言っても電源のON/OFFや回転方向の切り換えという事を付加装置なしに実行することはできません。そこでまたまた登場願ったのがリレーユニットです。まだ道具箱に眠っていました。

電源のON/OFFと回転方向の制御をしなければならないので回路図で触るべき部分を確認しました。図4がインジケーターの回路図の一部です。

電源のON/OFFはS1を手動でON/OFFすることでできます。このスイッチS1に並列にマイコンで制御されたリレーをつなぎます。また、S2というスイッチでCW、CCW回転を制御しています。CW方向に倒すとS2の端子2と3がつながってCW方向にモータがまわり、CCW方向に倒すとS2の端子2と1がつながってCCW方向にモータがまわります。

これから図4の赤字のようにリレーの接点を配線すれば、適切な制御信号をマイコンから送ることで各リレーをON/OFFすることができます。


図4 付加回路の回路図(赤字部分)

図4のようにリレーはインジケーター外にリレーユニットを準備し、そのリレーを使用します。POWERの配線2本をインジケーター内に配線し、CW/CCW制御用のリレーは外部端子2と3に接続することで配線も少なくてすみます。

実際に配線したものを写真5に示します。


写真5 コントローラ背面の結線(POWER ON/OFF用リレー端子、方位用モータ切り換えリレー接続用端子付近)上部端子は後付けしたもの。
   ① 100[V]ON/OFF用リレー接続端子
② 100[V]ON/OFF用の配線出口
         ③ CW/CCW方向回転切り換え用のリレー接続端子

4. マイコンとリレーユニット

図4に付加回路の回路図を示し、赤字のリレーはリレーユニットのリレーであることも説明しました。リレーユニットは制御マイコンからの指令を受けてリレーをON/OFFします。この回路は以前使用した回路とピン配置が異なるだけでほとんど同じ回路です(図6)。


図6 マイコンとリレーユニットの配線

5. マイコンの制御シーケンス

ローテーターの制御を無線化するにあたっては、指令側マイコン(室内)と受令側マイコン(室外)のプログラムを作成しました。

制御用のマイコンとしてmicro:bitを使用したのは、アンテナ切り換え器を製作したときのソフトウェアを一部改変するだけで済むだろうと思ったからです。しかし、マイコンに持たせる機能として、
 ① インジケーターとローテーターの電源のON/OFF
 ② ローテーターのCW,CCW方向の回転制御リレーのON/OFF

という2つの機能を持たせることで頭の中がこんがらがって整理にすこし時間を要しました。micro:bitにはボタンが2つしかありませんので、この2つのボタンに「電源ON/OFF」と「モータの左右回転の切り換え」をわかりやすく割り当てるという事が整理できなかったのです。最終的に「ABボタンの同時押し」が3つ目のボタンの機能を持つことを使って解決しました。それを状態推移図で表したものが図7です。


図7 A、Bスイッチによる状態の推移

図7のように、「電源のON/OFF」と「ローターの回転」という2つの動作にわけ、この2つの状態間を移動する場合や、この2つのメイン動作の先頭状態に到達するときに「AB」両方のボタンを押すという操作を実行し、2つのメイン動作内での状態の移り変わりには「A」ボタン「B」ボタンを単独に使うようにすることにしました。

マイコンのデジタル端子にスイッチを付けるということで対応することも可能でしたがボタンを増やしたくなかったのでこのようにしました。あとはこの状態推移図をもとにプログラムを作成していきました。

6. マイコンのプログラミング

製作したプログラムは2つです。
 ① ローテーターの電源ON/OFFとローターの回転方向を指示する指令側
 ② 指令側のマイコンの指示を受信してリレーユニットに駆動コマンドを送出する受令側

それぞれのソースリストの一部を記載しておきます。なおプログラム全体はダウンロードしてご覧ください。細部説明は省略させていただきます。

【指令側プログラム】


【受令側プログラム】


ダウンロードはこちら

7. 動作試験

部品を組み立てた後、動作試験をおこなうため、写真8(a)のようにインジケーター、リレーユニット、5V電源をプラスチックの台上に置き、屋外で動作実験を行いました。雨露をさけるため写真8(b)のように上からボックスを重ねました。


(a)外観写真


(b)カバー装着時

写真8 動作試験をおこなった装置の外観写真

設置場所はわが家の北側ベランダの角の壁側に置きました。インジケーターの設置場所からローテーターまでの距離は約2m位になりましたので、短いケーブルで接続可能になりました。

屋外に置いた受令側のマイコンの位置は室内の指令側マイコンから直線距離で約6mあり、2つのマイコンの間には写真9のように壁があります。また、壁と指令側マイコンの間にはさらに木の扉がありますので、この扉も閉じて送受実験を行いました。


写真9 設置場所

操作信号を送る実験をしましたが壁にさえぎられて直接観測できないため、写真9に映っているネットワークカメラをモニターとして使用し、信号が間違いなく届いているのかを確認しました。

電源のON/OFF、ローターのCW/CCW方向への回転、いずれも無線で制御することができました。誤作動も頻度は少ないですが発生しました。規則性がありませんので原因はわかりませんが、2つのマイコン間にある壁のために電波の信号が減衰して受信エラーが発生しているのではないかと思います。


写真10 通信エラー例

受令器は指令器からのコマンドコードを受信するとそのコードをそのまま返信するようにプログラミングしてあります。指令器側では、指令のため押したボタンの番号(A、B、C)を画面に表示してコードを送信し、その後受令器側から送られてくる状態番号(数値)を受信すると表示内容を状態番号に変更するようにプログラミングしてあります。写真10のように指令器側がアルファベット(A)を送出した場合、受令側(6が表示されている)が、信号を受信できなかったために返信をしないか、または受令側が返信信号を送り返したが指令器側が受信できなかった時、両マイコン間で表示されている文字が異なり、通信エラーが発生していると判断できます。

1時間ほどの運用試験の間に通信エラーが5、6回発生していました。原因が特定できないので運用しながら状況を確認し、対応を考えていくことにしました。場合によっては元のようにケーブルを復活させようかと思っています。いずれにしても一か月は様子をみていきたいと思います。

8. これからの改善点

・雨対策・漏電対策
今まではインジケーターを室内に置いていましたが、無線化で室外に出すことにしました。電気製品ですから雨による漏電が発生しないようにしなければいけませんが、また雨や風の対策が十分ではありません。(やはりもどそうかな?)

・方位情報の取得方法
わたしのローテーターは本体内のポテンショメータが壊れていますのでインジケーターの方位表示部の針が動かず、方位が表示されていません。このため、躊躇なくインジケーターを屋外に出す決断ができました。しかし、故障もなくちゃんと動作するローテーターを持っておられる方にとっては、方位情報を捨ててまで無線化するメリットはほとんど無いと思います。ただ方位情報はポテンショメータの電圧を制御部が受取り、それを表示しているので、ローターのポテンショメータから出ている電圧情報をmicro:bitのA/D変換装置でデジタル信号に変換し室内のmicro:bitで表示することで得られます。

さて、今回の改修は誤作動が起きて不安定なものになってしまいました。
原因は?、プログラムかな?、距離に無理があるのかな?。

不具合探求はまだまだ続きそうです。

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