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FBのトレビア

第三十八回 ツイストペアケーブルのノイズ軽減は本当か?


Dr. FB

ツイストペアケーブルとノイズ対策

ツイストペアケーブルとは、2本の線材(ワイヤ)を撚り(より)合わせて1本の線にしたケーブルです。パソコンとルータ等の接続に使われているLANケーブルにはそのツイストペアケーブルが使われています。LANケーブルの外被を剥がすと図1のように2本のワイヤが対になった4組、合計8本のワイヤが見えます。2本のワイヤに撚りをかけて1組のワイヤにするのはケーブルの外から受けるノイズを軽減させるためです。シールドケーブルとは異なりワイヤに撚りをかけただけでノイズ軽減となるとのことで、実験を通してこの効果を確認してみます。


図1 TIA/EIA568-A LANケーブルの内部 (4組8本のワイヤ)

平行ケーブルとシールドケーブル

ノイズの軽減といえば、我々は無線機やオーディオ機器を自作するときに使用するシールドケーブルを思い浮かべます。シールドケーブルの中には、1本あるいは複数のワイヤがはいっており、その周りを金属の編線等で被い、シールドケーブルとしています。(図2)


図2 各種シールドケーブルと非シールドケーブル

外来ノイズは、シールドケーブルの編線に誘起された電流は、その編線を通してアースに流れ込むため、中心部の信号ラインには大きく影響を与えません。一方、2本のワイヤを平行線のまま使用するケーブルでは、外来ノイズをそのまま受けるため、入力信号に外来ノイズが重畳され、ノイズの影響が出ます。(図3)


図3 非シールドケーブルとシールドケーブルのノイズに対する影響

各ケーブルのノイズによる影響の比較実験

図3で示したシールドのない平行ケーブル(非シールドケーブル)、シールドケーブル、それにツイストペアケーブルを準備します。準備する各ケーブルの長さは約1.5mです。

準備したケーブルは、トランシーバのマイクケーブルとして使用します。実験は、図4のようにケーブルの一端を600Ωの抵抗で終端します。手持ちに600Ωの抵抗がなかったことから680Ωを使っています。ケーブルのもう一方の端をIC-9700のマイク端子に入力します。この方法でケーブルの種類によるノイズの拾う量を比較観察します。

ケーブルでノイズジェネレータのノイズを拾えば、そのノイズがIC-9700のマイク端子から無線機に入り、ノイズで変調されたRF信号がアンテナ端子から出力されます。アンテナ端子には、50Ωのダミーロードを接続していますが、その漏れRF信号をIC-705で受信し、変調信号をIC-705のFFT画面で観察します。


図4 平行ケーブルのノイズによる出力信号の影響を調べる実験

各ケーブルのノイズによる出力波形の比較

図4で行った各3種類のケーブルに対して、外部から信号線に強制的にノイズを輻射します。その影響度を波形で観察したものが図5です。ノイズは誘導ノイズや静電ノイズといったものに分類できますが、今回試したノイズは、車のエンジンの点火プラグから発生するようなスパークノイズです。

IC-9700には平行ケーブル、シールドケーブル、それにツイストペアケーブルを順番に接続します。各ケーブルを接続した状態でIC-9700を送信状態にします。ノイズジェネレータを動作させない状態でMic Gainを0%にセットしたときと、50%にしたときの受信側でのケーブルが拾うノイズの状態を確認します。(図5の左と中央の波形)

次にノイズジェネレータをオンにノイズ源に各ケーブルを近づけます。そのときマイクケーブルで拾うノイズを受信側のIC-705のAFモニタで観察します。(図5の右端の波形)


図5 3種類のケーブルのノイズによる影響

実験結果

スパークノイズに対しては、平行ケーブルはもろにそのノイズを拾い、ノイズが今回準備したケーブルからIC-9700のマイク回路を経由して搬送波に変調された形で受信側に送られていることが分かります。(図5 [3])これは予測できました。

シールドケーブルでは、ほとんどノイズは拾いませんでした。図5の[4]、[5]、[6]の波形を見れば、それぞれの状態でほとんど差のないことが見て取れます。

ツイストペアケーブルでは、ノイズをケーブルに放射すると、図5 [9]の波形から、平行ケーブルほどノイズを受けていないことが分かります。それでもペアとなるワイヤを撚ることで、両ワイヤに誘起した電流が互いに打ち消しあい、シールドケーブルに近い効果があると予想していました。これは少し予想外でスパークノイズに対しては思いのほか効果は薄かったように思います。スパークノイズ以外の静電ノイズ等には効果があるかもしれませんが、これは今後の宿題とします。

今回の実験ではノイズに対する効果を視覚的に見るだけで、数字を上げて定量的に見ることはできませんでした。これも今後の宿題とします

あまりお勧めできないスパークノイズジェネレータ

スパークノイズを発生させるため、図6に示したようなノイズジェネレータを製作しました。回路図を見てお分かりと思いますが、非常に短い時間に、電源の(+)と(-)をメカニカルリレーの接点でショートさせています。ショートさせることで、リレーの接点間にスパークを発生させています。

そのためお使いの電源のヒューズが切れたり、あるいは保護回路が働くことも考えられます。今回の実験では、30Aの電源を使いました。保護回路が動作しない程度の短時間のショートとなるようにNE555の時定数を決めています。ジェネレータを動作させるとリレーの接点間で確実にスパークしているのを見ることができます。

あまりお勧めできるような回路ではありません。製作されるようでしたら、自己責任でお願いします。


図6 スパークノイズジェネレータの回路(左)とブレッドボードに組み込んだ動作回路(右)

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