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テクニカルコーナー

My Project/第10回 【アウトドアや防災に最適】 防水・自動点灯 LEDライトの製作

JP3DOI 正木潤一

ある電子パーツ屋の片隅に、「ご自由にお持ち帰りください」と、50cm程度の透明な中空の棒がたくさん置いてありました。これらは、ICの両側面から端子が出ている“DIP (Dual Inline Package)”タイプのICを収納するためのケースです。半導体の仕入れで空のICケースが大量に発生するので、無料または格安で提供しているようです。半導体を保管するための物ですから、なかなか丈夫に出来ており静電気対策も施されています。


タダで入手したICケース

せっかく貰えるのだから「何かに使えないか?」とずっと考えていましたが、透明な点を活かしてLEDライトを作ることにしました。これだけでは芸が無いので、『暗くなると点灯して、明るくなると消える』回路も作ります。今回は、LED点灯回路と光センサーを使った電力制御回路の製作例を紹介します。

仕様:
・ライト本体
電源にはスマートフォン用のモバイルバッテリー(5V)を使います。たいていのモバイルバッテリーは2000mA(*)まで取り出せますが、余裕を見て回路の消費電流を500mA未満に設定することにします。このくらいの電流ならば、USBハブ(*)を使って複数のライトを同時に点灯させることができます。屋外でも使えるようにライト部分は防水処理します。後述のセンサースイッチを介さずに、直接モバイルバッテリーに繋いで点灯させることもできます。
*使用する前に必ず供給可能電流量を確認してください。


全長50cm。LEDを32個使用


全長13cm。LEDを10個使用

・照度センサースイッチ
周囲の明るさによってライトを自動的に制御する回路で、ライトとモバイルバッテリーの間に挿入します。ライト本体からの光がセンサーに当たらないように設置します。


ケーブルグランドを使ってUSBケーブルをしっかり固定

回路:
・ライト本体
今回は明るさを優先して普通の白色LEDを使用しましたが、暖色系の白色LEDを使うと柔らかい明りになります。LEDと抵抗器はユニバーサル基板のランドの間に実装するため、『2012』か『1608』サイズのチップタイプを使います。抵抗値は、LEDによって異なる順方向電圧と供給電流によって決まるので、データシート等を参照してください。


電流制限抵抗値の算出例

今回使用するLEDには6mAを流すので、電流制限抵抗は330Ωとなります。最大電流を500mAに決めたので、計算上83個まで接続できることになります。


ライト本体の回路

・照度センサースイッチ
明るさに応じてトランジスタのコレクタ電流が変化するシンプルな回路です。照度によって抵抗値が変化するCdSセル(光導電体あるいはフォトレジスタとも呼ばれる)とパワートランジスタを使います。


照度センサースイッチ

CdSセルと抵抗器によってバイアス点を設定します。暗くなるとCdSセルの抵抗値が大きくなり、ベース端子に加わる電圧が高くなってベース電流が増え、コレクタ電流が流れます。CdSセルの抵抗値が低くても、常にベース電流が流れますが、わずか数mAです。

トランジスタは2つをダーリントン接続して増幅度を上げています。コレクタ電流を1A以上流すことができる電力スイッチング用のトランジスタを使ってください。発熱量によってはヒートシンクを付けます。モータードライバを作ったときの『2SC3076』が手元にあったので、今回はこれを使いました。


パワートランジスタに小型のヒートシンクを貼り付けた例

バイアス抵抗には50kΩの半固定抵抗器を使います。ライトがON/OFFする照度、すなわち光センサーの感度を設定します。ベース端子に入れた2kΩにより、半固定抵抗器を回しきって抵抗値がゼロになった場合でもベース端子に過電流が流れ込まないようにしています。また、何らかの原因で回路がショートしてしまった場合に備えて、入力側に1.5Aのヒューズを入れています。


実装例

部品:

<参考:スイッチを使うと電圧が下がる>
センサースイッチを使う場合、LEDへの供給電圧はパワートランジスタのコレクタ-エミッタ間の飽和電圧分下がります。このことを考慮して、電流制限抵抗は低めに設定したほうがよいと思います。今回使った『2SC3076』の場合、飽和電圧が約0.7Vなので、実際の供給電圧は4.3Vになっています。

作りかた:
以下に大まかな手順を示しますが、詳しくは動画を参照してください。

① 大きめのユニバーサル基板を3マス幅にカットし、ジャンパー抵抗で繋いでプラスとマイナスの電源ラインを構成します。この電源ラインの間にLEDと抵抗器を、3マスあるいは4マス間隔で実装します。
チップLEDはアノード・カソード端子が分かりにくいので向きに気を付けてください。1つ実装するごとに実際に光らせて確認しながら進めたほうが良いかもしれません。

② LEDをすべて実装してUSBケーブルをハンダ付けしたら、基板の長さに合わせてICケースをカットします。

③ 筒状のICケースの両端を接着剤『スーパーX』を充填して塞ぎ防水処理します。

④ センサースイッチ基板は、CdSセルの覗き穴を空けたプラスチックケースに収めます。USB延長ケーブルを加工して、モバイルバッテリーとライト本体の間にセンサースイッチを挿入します。USB端子には4つの電極がありますが、外側の2本が電源ラインです。内側の2本はデータラインなので何も繋ぎません。

⑤ 点灯させたい暗さで光るように半固定抵抗器を調整します。

使用感:
テント泊で使ったことがありますが、2人用テント内を照らすには十分でした。複数本を点灯させれば、屋外に張ったタープ内を照らすのにも使えると思います。一般的に、LED照明は蛍光灯と比べて虫が寄り付きにくいと言われています。

また、屋内ではUSB出力のACアダプターを使って作業台を明るく照らす用途にも使えます。もちろんパソコンのUSBポートから給電することもできますが、USB3.0ポートが900mAなのに対し、旧式のUSB2.0ポートは500mAまでなので注意してください。

<参考:ライトがセンサーに当たっても消灯しない!?>
実は、LEDライトの光がセンサーに当たってもライトは消えません。これは、光を検出→ライトが消える→暗くなる→ライトが付く→光を検出・・・と、目まぐるしくループするためです。人間の目には連続して点灯しているように見えますが、デューティー比が下がるので少し暗くなります。したがって、ライト本体からの光がセンサーに当たると、自動で消灯しなくなってしまいます。

最後に:
照明や装飾用途に使うLEDといった照明関連の部品は、電子パーツ屋の売れ筋上位とのことです。これは、照明器具は用途が広いうえに工作の敷居が低いからだと思います。今回は、単に光らせるだけでなくセンサーからの入力を元に点灯を制御させてみました。周囲の明るさに応じてLEDの輝度を制御するシンプルな回路ですが、本来、電灯などにはオペアンプを使った『シュミットトリガ回路』で設定された閾値を境にライトのON/OFFを制御させます。また、マイコンを使えば、タイマー動作などをさせることもできます。

注意:
モバイルバッテリーを水に濡らすと大変危険です。屋外で使う場合は、バッテリー、USBコネクタ、そしてセンサースイッチ回路を絶対に濡らさないよう気をつけてください。なお、この回路は自己責任で使用してください。

部品の入手先:
・『秋月電子通商』*
http://akizukidenshi.com/catalog/top.aspx

・『マルツ』
http://www.marutsu.co.jp/

・『シリコンハウス』 **
http://eleshop.jp/shop/

*ICケースを数十円で販売。(通販でも対応)  **ICケースを無料配布。(店頭のみ)

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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