Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

日本全国・移動運用記

第22回 佐渡市移動

JO2ASQ 清水祐樹

新潟県佐渡市は、全域が離島で構成されています。交信した市の数を集計するJCCアワードでは、バンド・モードによっては交信が難しい市の1つとして挙げられているようです。また、JCCアワードを集めている海外局から、佐渡市の移動運用リクエストが寄せられていました。

5~6月はスポラディックE層(Eスポ)と呼ばれる特別な電離層が発生し、50MHzや144MHzで遠距離と交信できるチャンスがあります(スポラディックE層の解説の一例: 2014 年4月号)。また、Eスポが発生すると、普段は遠距離との交信が主体の28MHzで、逆に近距離と交信できるという楽しみ方もあります。そこで、Eスポの最盛期である6月に佐渡市での移動運用を計画しました。

佐渡市はどんな場所?

移動手段は、自家用車で高速カーフェリーに乗船しました。本土から佐渡島へは、島の東部にある両津港、南部にある赤泊港、南西部にある小木港の3つのルートがあります。このうち、小木港は直江津港(新潟県上越市)との航路で、直江津港は筆者宅から最も近いことから、小木港への航路を利用し、運用も宿泊も小木港周辺で行うことを計画しました。

佐渡市でV/UHFの移動運用が行われる場合、ドンデン山と呼ばれる標高900m級の山が有名なようです。この山へは両津港が最も近く、小木港からは車で片道1時間30分ほどかかります。運用時間を長時間確保したい今回の移動運用には向かないと判断しました。

多くの局と交信するには、本州が見渡せる南側または東側の海岸で、標高が高い場所が良いだろうと期待しました。しかし、事前に地図を調べたところ、小木港の周辺で標高が高く、自動車が乗り入れできる場所が見当たらなかったので、運用場所の候補をいくつか絞っておき、現地でロケを確認することにしました。

運用場所の選定

現地で運用場所を調べていると、事前調査の通り、小木港の周辺には見通しの良い場所が見当たりませんでした。また、天気予報は雨で、急斜面や未舗装道路を避けたかったこともあり、小木港の近くの海抜ほぼ0mの場所で運用することにしました。

運用場所の周辺にはコンビニエンスストアが無く、夜遅い時間に食料を調達することが困難であることも分かりました。そこで昼間のうちにスーパーマーケットで食料を確保し、日没で暗くなる前に安全な場所を確保して、運用を開始しようと考えました。しかし、最初に駐車した場所は観光客向けの駐車場が近くにあり、通行人が多くて途中で運用を断念。別の場所に移動したものの、金曜日の夜で何かの行事があるらしく、車が通らない場所を見つけて細々と運用を開始しました。

夕暮れ時にもかかわらず、早速7MHz CWでパイルアップが始まり、1時間以上も連続して呼ばれ続けました。3.5MHzと1.9MHzも需要が多そうで、1.9MHzだけでも41 局と、夏期の平日の夜としてはかなり多くの局と交信できました。

朝は大荒れの天気

翌朝、屋根に叩き付ける大粒の雨の音と、木の枝が風で揺さぶられる音、さらには電線などが風で鳴る音で目が覚めました。早朝は風雨が強く、インターネットで気象情報を見ると風速10m/sの予想とのことでした。

海岸に到着し、アンテナを立てるため伸縮ポールを伸ばそうとすると、風圧で伸縮ポールが傾いて自由に伸縮ができずに苦労しました。伝搬のコンディションに恵まれ、14~28MHzまでの各バンドでそれぞれ50局以上から呼ばれ、さらには50MHzで1エリアとの交信にも成功しました。

144MHzと430MHzの八木アンテナを設置して、遠距離通信にもチャレンジしました。V/UHFの海上伝搬は乱反射が無く、アンテナを正確に向けた時しか交信できないことが分かりました。関東地方を狙って南南東にアンテナを向けていた時に、距離的には近いはずの新潟市の局がかろうじて入感。アンテナのサイドの方向だったようです。アンテナの向きを修正するとSメーターが9まで振れました。

伝搬のコンディションは上々

午後からは風も弱まり、釣り客の姿もちらほら。邪魔にならないようにアンテナを設置しました。昼休み前後には伝搬の状態が少し下火になったものの、15時から16時頃からは再びEスポが発生。HFのどこかのバンドで1日中コールが続き、各バンドで佐渡市をサービスできました。欲を言えば50MHzでもっと強力なEスポが欲しかった、という印象です。夜になると、前日からの運用でローバンドは一通りの需要は満たしたようでパイルはやや少なめになりました。

翌朝に運用を始めた時には、Eスポの発生が無く静かでした。フェリーの時間の関係で運用時間は2時間ほどしかなく、7MHzから順に上のバンドに移って様子を見ることにしました。ところが次第にコンディションが上がって、21MHzでは大パイル。28MHzでも各局の信号が強く、50MHzでも交信できました。50MHzの近距離パスは無かったものの、このタイミングでも超レアな佐渡市28MHzを多くの局にサービスすることができました。

使用した設備

今回の移動運用は、短時間で多くの運用地点を回るスタイルではなく、1か所で長時間運用するため、それに合わせた設備を考えました。

アンテナは1.9~50MHzのギボシダイポールアンテナを基本に考えていました。しかし、あまりの強風で伸縮ポールが傾き、バンドチェンジのために給電部を上げ下ろしすることが難しくなりました。そこで、途中からは3.5MHz用の逆L型アンテナ(長さ約20m)に市販のアンテナチューナーでチューニングする方法に切り替え、この方法で10~50MHzの各バンドを運用しました。7MHzを運用する時だけは、3.5MHz用のアンテナでは原理上チューニングが難しいため、逆L型アンテナを途中で切り離し、長さ約10m(1/4波長)で使用しました。

電源は、今回の移動運用のために購入した新品のバッテリー(115Ah×2)を助手席前方のスペースに収納しました(写真2)。従来もこれと同じ品種のバッテリーを使用していましたが、長期間の使用により容量が低下しているように感じたので、新品の大容量バッテリーで長時間運用したいとの思いです。発電機は使用せず、車のバッテリーから直結でDC12VをAC100Vに変換し、充電器に電源を供給しています。実際には、50W出力の運用で、バンドチェンジや食事休憩の間に充電したことにより、バッテリー1個で1日の運用をまかなうことができました。しかし、1個24kgのバッテリーを宿に持ち帰って充電したところ、翌朝までに充電が終わらない想定外の事態も発生。翌朝は短時間の運用だったので問題ありませんでした。


写真1 運用の様子


写真2 車内の様子。長時間運用に備えて、無線機用バッテリーを115Ah×2個に増設した。

日本全国・移動運用記 バックナンバー

2017年7月号トップへ戻る

次号は 12月 1日(木) に公開予定

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.