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My Project

第29回 電子工作キットを企画してみた

JP3DOI 正木潤一


当局が毎年フリーマーケットブースを出している関西アマチュア無線フェスティバルがこの2年連続で中止になり、手元の余剰部材は増えるばかりです。今年こそ通常開催されることを願っています。

今までのように、明らかにストックが多すぎたり、もう使わなかったりする部品をそのまま売るだけでなく、特定の回路を作れる「部品セット」という形にして売るのも面白いのではないかと考えました。

今回は、「ビギナー向け電子工作キットを企画してみる」試みで、コンセプトから回路、説明書、パッケージを考えて試作品を作ってみます。


当局の持っている余剰部材の例(小型スピーカー90個)。もはや個人で使い切れる量ではない。

半田ごてを使わないお手軽キット

キッズでも作れるように、ブレッドボードを使ってパーツを挿し込むだけで回路を組めるキットにします。半田ごてを使わないので安心です。近頃はキッズたちにも親しみやすいカラフルなブレッドボードもあります。説明書にある図の通りに部品を差し込めば回路を組めます。


パステルカラーが可愛い小さなブレッドボード。

部品点数が少なくて実用的な回路

では、どんな回路にしましょうか? 初歩の電子工作でおなじみのLEDは外せないと思います。ただ、2個のLEDが交互に点滅するだけのよくある作例(マルチ非安定バイブレーター回路)は、最近のキッズには物足りないでしょう。また、前述のように大量にあるスピーカーを消費したいところです。そこで、「ある程度実用性のある光や音が出る回路」が良いのではないかと思いました。

あらかじめソフトを書き込んだマイコンを“ファンクションIC”として使うことで部品点数を減らします。しかも、マイコンには2種類のプログラムを書き込んでおき、2通りの回路を組めるようにします。

回路① 『信号機』

3つのLEDが順番に光る簡単な回路です。3色のLEDが実際の信号機のように点灯します。マイコンでLEDに電圧を供給するタイミングを制御します。GP3ポートを4.7kΩの抵抗でプルアップすることで、マイコン内部の『信号機』のプログラムを選択しています。


『信号機』の回路。

まずは練習がてらこの信号機を組んでもらいます。ブレッドボードにリード部品を挿して回路を組むことを体験してもらうことが狙いです。おそらく、ビギナーは部品を差し込む位置やLEDの極性を間違えるでしょう。正しく部品を接続できたら青黄赤のLEDが信号機のように点灯しますが、すぐに飽きてしまうと思います。そこで、もう一つの回路『3分間タイマー』にチャレンジしてもらいます。

回路② 『3分間タイマー』(カップ麺タイマー)

3分間を計るタイマーで、3分経つとアラームが鳴ります。また、LEDの点滅速度が時間の経過を表します。スイッチにはタッチセンサーを使い、待機電力はほぼゼロなので実用的です。

『信号機』よりも部品点数が多くトランジスタ・スイッチ回路を使っていることから、トランジスタの動作を学べます。『信号機』は練習用で、こちらの回路が本命です。GP3ポートをGNDに落とすことで、マイコン内部の『3分間タイマー』のプログラムを選択しています。


『3分間タイマー』の回路。トランジスタ・スイッチを使っていてやや複雑になっている。

キットの内容

電子工作をしたことが無いキッズ向けという想定で、必要な部品すべてを同梱します。なおかつ、部品コストをできるだけ抑えられるよう工夫します。材料費は¥500以内に収めました。


試作キットの中身。抵抗器は足を適度な長さに切って曲げてある。

部材:
・IC(プログラム書き込み済みPICマイコン)
・ブレッドボード・スピーカー
・LED: 3本
・トランジスタ: 2SC1815と2SA1015 各1個
・抵抗器: 6本(180Ω、470Ω、4.7kΩの3種類)
・コンデンサ: 2本
・ジャンパー線: 4本
・説明書(実体配線図+α)

基本的に実体配線図の通りに組んで完成させられると思いますが、簡単な回路動作説明も欲しいところです。しかし、「トランジスタとはなんぞや」などと個々の部品の説明から始めるのは長くなりますし、キッズがそこまで読むか分かりません。プログラミング教育も同じですが、初めは「要はこういうものだよ」といったユルい説明でよいと思います。


組み立て説明用に描いた、『信号機』(左)と『3分間タイマー』(右)の実態配線図。

余談: 初めて作った電子キット

私が初めて作ったキットは、(株)イーケイジャパン(エレキット)の『FMワイヤレスマイク』です。小さな基板にリード部品を半田付けして組みました。コイルのコアを回して発振周波数を調整するのですが、コアドライバーは付いていませんでした。眼鏡用のマイナスドライバーで回すうちに割れてしまい、キットごと買い直した覚えがあります。その後、FCZ研究所の『アクリル製コアドライバーキット』(アクリル角棒を自分で削ってコアドライバーに成形するというもの)を使いました。

なお、回路説明はありませんが、回路図に加えてブロック図が載っていたと思います。当時、私は回路図にあるGNDのマークの意味が分からなかったのでハムショップの店員さんに教えてもらいました。


当時私が作った『FMワイヤレスマイク』キット。現在でも販売されている。

キットの試作品

こうしてキットの試作品を作ってみました。同梱の製作説明書は、実際には注意事項や回路の説明を盛り込みたいところです。


キットの試作品。市販のキットに見える。


イラストソフトで描いた組み立て説明書。


開封前のパッケージ(左)と、キットを組み立てたところ(右)。

余っている部品を使って回路を改造する情報を追加しました。改造はブレッドボードを使っているからこそできます。


余った部品で増幅回路を組んだ例。回路図から部品の配置を考えるチャレンジ。

このキットの販売について

さて、このキットを『関西アマチュア無線フェスティバル(KANHAM2022)』(※)で販売したいと考えています。売値は、利益を乗せずに部品代のみとして¥500にする予定です。もっと安くしたいのですが、ブレッドボードとマイコン(PIC12F675)が高いので仕方ありません。

もちろん、手持ちの余剰品だけでは量産できないので、適宜必要なパーツを買い集める必要があります。また、説明書ももっと内容を増やして親切になるように改良するつもりです。
※今年こそ通常開催されることを願いましょう。

最後に

今回、初めて電子工作キットを考えてみましたが、難易度、コスト、説明の3つの要素の兼ね合いが難しいことが分かりました。あれこれ親切過ぎても簡単すぎてチャレンジ性が損なわれてしまいますし、逆に自分で考えたり調べたりする部分が多すぎても途中で放り出されてしまうでしょう。

昔は、欲しいけど完成品が高価だったり一般に市販されていなかったりするので、キットで買って作っていました。なので、その分「完成させたい!」というモチベーションが高かったと思います。ところが、今は画面の中で完結してしまう遊びがほとんどで、手で物を動かす遊び(ハード・トイ)が少なくなりました。こんな時代のキッズは、うまく“誘導”しないと電気・電子回路へ興味を持ってもらえないと思います。

さて、プリント基板ではなくブレッドボードを使ったキットは、半田ごてを使わず安全なことと、自分で回路を組み変える楽しみがあります。これは、私も子どもの頃にハマった『レゴ・ブロック』とちょうど同じです。最初は説明書通りに組んで遊びますが、しばらくすると自分の好きなように組み替えて遊びたくなるのです。こういう「遊びの本質」は時代で変わらないと思います。

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