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車内シャックの構築と運用

その4 無線機とパソコンの設置

月刊FB NEWS編集長 JS3CTQ 稲葉浩之

前回までは、電源系統の説明をいたしました。今回はその電源を使用する無線機とパソコンの設置について、当局の事例をご説明いたします。車内でDC13.8VとAC100Vの電源が確保できれば、あとはそれらを使って運用を楽しむだけですが、無線機とパソコンはできるだけスマートに車内設置したいものです。今回の記事が読者の皆様の多少でも参考になれば幸いです。

無線機の設置

筆者の場合、車内で使用する無線機については、その日の運用にもっとも適したものを出発時に積み込んでいきます。例えば、移動先からコンテストに参加する際には、IC-7300MとIC-9700を積み込み、1.9~1200MHzのマルチバンドに出られるようにしています。また、最近ではIC-705を積み込み、ローパワーながらお手軽に1.9~430MHzで運用できるようにしています。そのため、無線機はボルトなどで車体にガッチリ取り付けることはせず、下の写真にありますように滑り止めマットにおいた状態で運搬し、またその状態で無線機を運用しています。無線機にDCケーブルや同軸ケーブルを接続していれば、走行中に滑ってずれ落ちることはほとんどありません。


写真1 IC-7300MとIC-9700を積み込んだ例

使用する無線機がIC-705であれば、付属の充電式バッテリーパックで運用できるため、外部からのDC供給は必ずしも必要ではありませんが、それなりの容量を持った鉛バッテリー等の使用で、電池切れを心配することになく1日運用することができます。なによりもDC13.8Vを供給することにより出力が2倍の10Wになることは頼もしい性能です。


写真2 IC-705を積み込んだ例
なんと言っても消費電力が少ないのがメリット

無線機へのDC13.8Vの供給は、その3でご紹介したDC-DC昇圧コンバーターの出力端子に、無線機付属のDCケーブルを丸型圧着端子を使って接続しています。電流の少ないIC-705の場合は、丸型圧着端子ではなく、ミノムシクリップで接続しています。


写真3 DC-DC昇圧コンバーターの出力端子

なお、コンテストにシングルオペレーターでエントリーする場合、ほとんどのコンテストでは、ルールによって2波同時発射ができませんが、コンテスト前後の通常の移動運用時間帯には、筆者も2波同時発射でがっつり運用を行うことがあり、その場合は、出力50W×2波で、最大30A程度流れますので、Max.30Aを取り出せる昇圧コンバーター(EV-30C)を使用しています。

パソコンの設置

本格移動運用(コンテスト含む)には、今やパソコンは必携と言っても過言ではないでしょう。パソコンは、デジタルモードの運用にはほぼ必須ですし、電子ログの利用により紙ログと比べてQSOデータの管理やQSLカードの発行でもとても便利になります。さらにスマートフォンなどを介してインターネットに接続することで、電波の伝播状況や運用局の情報などをほぼリアルタイムで得ることが可能です。

筆者の場合、パソコンは(運用バンドには左右されず取替の必要がないため)車内常設としています。具体的にはSSDタイプのミニPCを使用し、付属のブラケットで車内壁面に取り付けています。電源は、パソコンに付属されていたACアダプターを介して、その2でご紹介した正弦波インバーターのAC100V出力に接続しています。


写真4 車内常設のパソコン

ただし、車内常設なので、万一の盗難に備え、このパソコンは無線運用専用として、個人情報や重要データは絶対に入れないようにしています。OSはWindows 10 Proです。なお、ログデータなどは、運用終了後にUSBメモリーに取り出し、パソコンの中のデータは空にしています。

なお、キーボードとマウスはワイヤレスタイプを使用しています。1個のレシーバーで、できればキーボードとマウスの両方が使用できる製品を探したのですが、キーボードの配列や、マウスのサイズなど、筆者の希望に沿う物が見つかりませんでした。そのためキーボードとマウスが別々の製品になってしまったため、レシーバーも2個必要となり、パソコンに常備の4つUSBポートのうち、2つがこれらで占有されている状況です。

パソコンモニターの設置

パソコン用モニターは21インチでフルHD解像度のタイプを使用しています。移動運用でも大型モニターを使用する理由は、多くのウインドウを同時に表示させることができ、一度に表示できる情報量が多いからです。特にコンテスト時は有利になります。21インチモニターは場所を取るため、天井から吊るして使用するようにし、使用していないときは、天井にくっつけて収納できるようにしました。天井にピッタリくっつけることで、運転中に後方の視野を妨げることがありません。


写真5 モニター設置状況
車両の天井にモニターを直接取り付けるのは困難なため、室内キャリアバーと吊り下げ金具を使用して設置しました


写真6 モニター収納時

モニターとパソコン本体もワイヤレスで接続できればベストですが、現状では困難なので、ACケーブルと一緒に引き回したHDMIケーブルで接続しています。さて、モニターを高輝度で使用すると消費電力が多くなり、場合によってはパソコン本体と同じくらいの電力30-40Wを消費することもありますので、車載バッテリーの消耗にはご注意ください。

無料Wi-Fiがつながる環境下や、スマホテザリングでも通信料を気にする必要がないといった条件の場合は、大画面のメリットを活かし、コンディションが悪いときなどには、ロギングソフトと並行してブラウザを立ち上げ、本WEBサイトやYouTubeなどを閲覧しながら運用するといったことももちろん可能です。


写真7 本WEBサイトを閲覧しながらCTESTWINで運用している例

無線機とパソコンの接続

最後に、無線機とパソコンの接続方法をご説明します。最近の無線機はUSBポートを備えているため、外部のインターフェースユニットを介することなく、市販のUSBケーブルでダイレクトに接続することが可能です。

先にパソコンにドライバーをインストールしておいた状態で、無線機とパソコンをUSBケーブルで接続し、無線機の電源を投入すると(正確には、無線機にDCを印加すると)、パソコンが無線機を認識し、仮想COMポートが生成されます。

アイコムの無線機であれば、IC-705を除いて共通のUSBドライバーとなっていますので、一旦ドライバーを入れておけば無線機を取り替えても問題ありません。ただし、IC-705だけは専用のドライバーとなっていますので、IC-705を使用する際には別途インストールが必要になります。併用する場合は、先に両方のドライバーをパソコンにインストールしておくことで、接続した無線に対応したドライバーが稼働しますので、ユーザーは特にドライバーのことを意識することなく使用できるようになります。(2020年7月末日現在)

最後に使用するソフトで無線機の設定を行えば完了です。


写真8 無線機設定の一例(CTESTWIN)

次回はアンテナの設置例についてご説明いたします。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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