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FBのトレビア

第十五回 BIRD 43はほんとうに正確か


Dr. FB

Bird Model 43 RF Wattmeter (以下Bird 43)といえば、アマチュア無線家なら誰もがあこがれ、シャックに1台は備えておきたいパワー計です。このパワー計で表示されるパワー(以下電力)は絶対的信頼を得ており、他のどんなパワー計で測定しても、最後には「Birdで測ったか」といわれるほどです。それならと思いBird 43をテストしてみることにしました。

シャックにはほかにもパワー計はあり、どれもよく似た電力値を表示しますが、どれが正確な電力値か正直なところよくわかりません。価格ではこのBird 43が一番高価です。高価なBird 43で測定した電力値が、常に安価なパワー計で測定するより正確だと思ってしまうのは、Birdという名前が持つ老舗のネームバリューかも知れません。


図1 Bird 43を使った電力測定の接続例

ほんとうにBird 43は正確か

以下に示しました実験の結果、どれくらいの値なら正確といえ、どれくらいの値なら不正確となるのか、その基準はよく分かりませんので設けていません。結論としてBird 43で測定した電力値は、中継ケーブルの長さや負荷の変動に対して10Wでおよそ0.5Wぐらいの差が出ています。通過型電力計あるいは製品によってはCM形電力計と呼ばれる場合もありますが、それらで測定する電力値は、負荷の変動で変わるというのが一般的な理解です。今回の実験で感じたことは、確かにBird 43でも負荷の変化で指示値は変わりましたが、思うほどではなかったというのがDr. FBの率直な感想です。

実験の背景

通過型電力計は、送信しながら進行波電力、反射波電力を測定することができアマチュアには大変便利な測定器です。先にも記述しましたように負荷の変化に対して指示値が変わると分かっていながら、それなら図2(a)に示すような熱電対を用いた高価な終端型電力計を使っておられるアマチュアはどれくらいおられるのでしょうか。多くのアマチュアは、図2(b)に示したような進行波と反射波の電力が分かり、またSWRの測定できる通過型電力計を用いているケースが多いと思います。そこには価格の問題は大いにあると思います。

今回実験したBird 43は通過型電力計ですが、決して安くはありません。電力計の基準器であるように多くの方々が思われている中で、負荷の変化や中継ケーブルの長さを変えて、その性能を測定してみることにしました。


図2 高周波電力測定の例

実験結果

まずは、実験結果から。図1に示しましたような接続構成でIC-9700の送信電力を測定しました。その結果、IC-9700の送信出力の条件は変えていないにもかかわらず、Bird 43の入力側に接続する中継ケーブルの長さ、あるいは出力側に接続する負荷のインピーダンスを変えるとBird 43といえども指示値は確かに変化しました。

変化はそれほど大きくありませんが、基準となる正確な電力計を持たないDr. FBにはどれが本当の電力値か正直分かりませんでした。なお、今回の記事には詳細は記載していませんが、Bird 43の代わりに図2(b)で示したようなアマチュアがよく使うSWRも測定できる通過型電力計で同様の実験も行っています。

その結果、IC-9700と電力計の接続に用いた同軸ケーブルの長さや通過型電力計の負荷のインピーダンスの変化に対し、Bird 43以上の電力差が見られました。その変化はおよそ10Wに対して2~3Wもありました。その差は、検出部の構造にあるのでしょうが、そこまで検討はしていません。

実験の準備

実験はBird 43の負荷を下の三つの条件で行い、それぞれの条件においてIC-9700とBird 43間の中継ケーブルの長さを10cm毎に増加させ、Bird 43の指示値を観測しました。周波数、モードは、それぞれ145.000MHz、RTTYで行いました。なお、各中継ケーブル(同軸ケーブル)の両端に使用したM型コネクタは同時に新品で購入した同一メーカー製のものを使用することで、コネクタでのロスはすべての中継ケーブルで可能な限り同一としています。

実験に際し、IC-9700に接続する負荷のSWRの悪化で本体のAPC(Automatic Power Control)機能が動作し、電力が低下すると正確な実験結果が得られないことから、あらかじめSWRの悪化がどのあたりまでなら電力低下がないかを調べました。その結果、SWR=2であればIC-9700のAPCが動作しないことが分かりましたので負荷として接続するSWRは最大で2として実験を進めました。

(1)実験1 50ΩダミーロードをBird 43の負荷側に直結
(2)実験2 SWR=1.5の疑似負荷を3mの3.5D-LFVを通してBird 43の負荷側に接続
(3)実験3 SWR=2.0の疑似負荷を3mの3.5D-LFVを通してBird 43の負荷側に接続

1. 実験1_50Ωダミーロードを最短で直結


図3 実験1の測定条件

1-1 準備
IC-9700とBird 43間を中継コネクタで最短に接続します。その時のBird 43の指示値が10WとなるようにIC-9700の送信電力を調整します。このときの10Wを基準とし、IC-9700の電力は以後一定とします。

1-2 測定結果
IC-9700とBird 43間の中継ケーブルの長さを10cmずつ長くし、そのときのBird 43の指示値を写真撮影したものが図4です。

Bird 43の指示値は、中継ケーブルを変える毎に若干変化しています。総じて指示値は10Wより増加することはなく、10Wより少ない値を示しています。

1-3 考察
中継ケーブルの長さを10cmからさらに10cmずつ長くし30cmとなった時点でBird 43の指示値は、1目盛り分の電力が低下しています。ところが60cm、70cmとなったときには、また指示値が若干ですがアップしています。再確認のため同じ測定を複数回繰り返しましたが結果は同じでした。何かよくわかりませんが、指示値の低下は同軸ケーブルのロスが原因している訳ではなさそうです。


図4 実験1の観測値を写真撮影(数字は中継ケーブルの長さ)

2. 実験2_SWR=1.5の疑似負荷を接続


図5 実験2の測定条件

2-1 準備
IC-9700とBird 43間を中継コネクタで最短に接続します。その時のBird 43の指示値が10WとなるようにIC-9700の送信電力を調整します。このときの10Wを基準とし、IC-9700の電力は以後一定とし、実運用に近い形を構成するためにBird 43の負荷側にはSWR=1.5の疑似負荷を接続しました。

2-2 測定結果
IC-9700とBird 43間の中継ケーブルの長さを10cmずつ長くしBird 43の指示値を観測しました。その指示値を写真撮影したものが図6です。

2-3 考察
Bird 43の指示値は、中継ケーブルを変更する毎に実験1同様若干変化しています。IC-9700とBird 43間の中継ケーブルの長さを30cm、40cm、50cmとしたときには、その指示値は若干ですが10Wを越えています。それ以外の長さでは10Wを越えていません。また、指示値の変化は実験1で観測した値ほど大きく変化していないのも不思議な点です。


図6 実験2の観測値を写真撮影(数字は中継ケーブルの長さ)

3. 実験3_SWR=2.0の疑似負荷を接続


図7 実験3の測定条件

3-1 準備
先の実験2とほぼ同様です。異なる点は、Bird 43の出力側に接続した負荷のインピーダンスです。実験3では、SWR=2.0の疑似負荷を接続しました。

3-2 測定結果
IC-9700とBird 43間の中継ケーブルの長さを10cmずつ長くし、Bird 43の指示値を観測しました。その指示値を写真撮影したものが図8です。

3-3 考察
Bird 43の指示値は、中継ケーブルの長さを変更する毎に実験1、実験2同様若干の変化が見られました。実験3の結果として、IC-9700とBird 43間の中継ケーブルの長さを10cmから300cmまで変化させても実験2の結果のようにその指示値が10Wを越えるようことはありませんでした。SWR=2.0いったマッチングのよくない条件ですから、電力の値は大きく変化するかと思いましたが意外でした。


図8 実験3の測定値を写真撮影(数字は中継ケーブルの長さ)

あとがき

Bird 43とはいえ、負荷の変化や接続に使う同軸ケーブルの長さでその指示値は大なり小なり変化の出ることが分かりました。これは、通過型電力計の宿命ともいえることですが、通過型電力計を正確な電力計として使うには、常に決まった疑似空中線(ダミーロード)と常に決まった接続用の同軸ケーブルを用い、それらをセットとして測定器を較正する機関で較正してもらうことが重要であることがわかります。

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