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ラジオ少年

第2回 アップダウンカウンタの製作(2)

2023年4月17日掲載


「ラジオ少年」第1回は、74シリーズのロジックIC 2個と少しの電子部品で1桁のアップカウンタをブレッドボードに組み込みました。クロック信号を発生させるタクトスイッチを押すとカウントアップしますが、スイッチのチャタリングが発生して、タクトスイッチの押す回数と7セグメントのLED表示の計数が予期しない動きとなりました。今回はその対策と桁数を2桁にするグレードアップを行います。

シュミットトリガ回路の追加

第1回の記事で紹介した1桁のアップカウンタの回路図を再度図1に示します。クロック信号は、SW1とR8で構成する回路で作ります。


図1 1桁アップカウンタの回路図

SW1が開いている状態では、5番ピンのレベルはR8を通してGNDにつながっているためLです。SW1を閉じることで5番ピンはLからHに変化します。このとき、SW1は1回押しているだけですが実際にはスイッチの接点間でバタつきが発生し、非常に短い時間ですが接点がオンオフを繰り返し、5番ピンには複数個のクロック信号が入力される状態が発生します。このことをスイッチの「チャタリング(Chattering)」が発生しているといいます。

このチャタリングをオシロスコープで観測したものが図2です。左の画像では、SW1を1回しか押していないにもかかわらず、立ち上がりでノイズの発生を見ることができます。これが、計数のカウントに誤動作を与えている信号です。右の画像は、SW1を離したときの立ち下がりの波形です。多くはこのようなきれいな波形ですが、時々はノイズ混じりの波形となり、スイッチを離したときもカウントアップするときがあります。


図2 チャタリングの発生をオシロスコープで観測

シュミットトリガ回路の製作

SW1を1回しか押していないにもかかわらず、不要なクロック信号が発生していることを説明しました。この不要なクロック信号を取り除く回路が図3に示すチャタリング防止回路です。別名シュミットトリガ回路とも呼びます。

このシュミットトリガ回路にはC、Rの他に74HC14、6回路シュミットインバータ(Hex Schmitt Inverter)を使います。74HCタイプでなくても74LSタイプでもOKです。このICは、基本的にはインバータですが、シュミットトリガを発生させる機能を持っています。


図3 チャタリング防止回路

シュミットトリガとは、入力に2つの異なったスレッショルドレベルを持つロジック回路です。東芝TC74HC14APのデータシートを見ると、このロジックICに印加するVccが4.5Vの時、最大で3.15Vと2.0Vにしきい値があります。

ロジック回路は、HレベルとLレベルの動作で回路が働きます。そこで何ボルト以上になるとHと認識し、何ボルト以下となるとLと認識するといったしきい値が設けられています。このTC74HC14APは、入力レベルが3.15Vを超えるまでHレベルにはなりませんが、一度Hレベルになると入力が2.0Vを下回るまでLになりません。最大で3.15Vと2.0Vにしきい値があるというのはこういう意味です。チャタリング防止回路は、この特性を用いています。

図3の中に示した波形を見ると分かりますが、シュミットトリガ回路の入力には、チャタリングの発生したノイズ混じりのクロック信号が入力されています。出力はきれいな立ち上がりのクロック信号となっていることが分かります。

シュミットトリガ回路の追加

先に説明したシュミットトリガ回路を1桁のアップカウンタに書き込んだ回路が図4です。このシュミットトリガ回路を先のブレッドボードに組み込み、タクトスイッチを押し、カウントアップの実験をしたところ、何回押しても、またどのような押し方をしてもミスカウントはありませんでした。シュミットトリガ回路の効果はバツグンでした。


図4 1桁のアップカウンタにシュミットトリガ回路を追加

2桁のカウンタにグレードアップ

1桁のカウンタができれば2桁のカウンタにグレードアップするのはそれほどむずかしくはありません。基本的に図1に示した1桁のカウンタをもう1セット製作するだけです。さらに3桁とするには、同じカウンタを3セット分用意すると完成します。

図5が2桁のアップカウンタの回路図です。1の位(1桁目)のカウンタと10の位(2桁目)のカウンタとの接続は、回路図上で示した赤色の結線を行うだけです。この赤色の結線では、1の位のLED表示が9から0になると繰り上がりの信号を10の位のカウンタに伝える役目をします。その動作的は、IC1の5番ピンにクロック信号が1個入る毎にカウントアップします。クロック信号が9個入力されるとIC1の12番ピンのレベルがHからLに変化し、さらにもう1個入ると、LからHに変化します。つまり1の位のLED表示が9から0になるとこのLからHへの立ち上がりをIC4の5番ピンは読み込み、10の位のカウントを1つアップさせます。これの繰り返しです。


図5 2桁のアップカウンタの回路図

1の位と10の位のカウンタをブレッドボードに組み込む

図5の回路図を基板に組み込む前に10の位のカウンタもブレッドボードに組み込み動作を確認します。ブレッドボードは繰り返し配線を行うことができるためレイアウトをそれほど気にすることなく作業を行うことができます。シュミットトリガ回路も組み込んでいるため、スイッチのチャタリングも皆無になると思います。

図6は2つのアップカウンタをブレッドボードに組み込んだ様子です。1の位のディスプレイを緑色、10の位のディスプレイに赤色のLEDをそれぞれ使用して実験を行っています。


図6 2桁のアップカウンタをブレッドボードに組み込み事前の動作確認

まとめ

アップダウンカウンタの製作(1)では、74HC192と74HC4511を使った1桁のアップカウンタをブレッドボードに組み込み動作を確認しました。1桁のアップカウンタはできましたが、クロックを発生させるスイッチのチャタリングで、スイッチの動きとカウンタの数字のアップが一致しない動きとなりました。

今回のアップダウンカウンタの製作(2)では、上記チャタリングの発生をシュミットトリガ回路の追加による対策と10の位の桁を追加してアップグレードを図りました。これでスイッチを押すことで0~99まで誤動作なしにカウントできます。

次回アップダウンカウンタの製作(3)では、今回製作した2桁のアップカウンタをグレードアップさせます。

CU

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