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Short Break

簡易電界強度計の製作

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先月号に掲載したQRPパワー計を使って簡易電界強度計を製作します。QRPパワー計の入力端子に広帯域の高周波アンプを挿入し、微弱な信号をこのQRPパワー計で読み取るのが狙いです。電界強度計としていますがV/m(ボルト・パー・メートル)のような正確な電界強度が測定できるものではなく、あくまでも電界強度の相対値が分かる簡易電界強度計です。アンテナの調整やARDFあるいはフォックスハンティングにも応用できるのではないかと思っています。

簡易電界強度計の概要

QRPパワー計単体の感度は1mWの入力でメーターが右いっぱいに振れるものでした。このQRPパワー計の入力端子に外部アンテナを接続しても空中の電波を拾ってメーターが振れるほど感度はよくありません。そこで、入力端子の前段に約20dBの広帯域アンプを取り付け、感度アップを図ります。その構成図を図1に示します。


図1 20dBの広帯域アンプを接続して感度アップを図る

入力感度の計算

製作する広帯域アンプに何mWの電力を入力すればQRPパワー計のメーターが一番右端まで振れるか計算します。広帯域アンプなしでQRPパワー計単体であればメーターが右端まで振れるには1mW(=0dBm)の強さの信号が必要でした。つまりXmWを広帯域アンプに入力して20dBの増幅を行うと1mWが出力されると仮定してこのXmWを求めます。式で示すと(1)式のようになります。


図2 広帯域アンプの増幅度


log10=1、log100=2ですから(2)式よりlogの右側の1/Xは100と分かります。これより、XmWを求めると(4)式、(5)式のようになり、広帯域アンプに10µWを入力すると20dBのアンプで増幅され、1mWが出力されることになります。


広帯域アンプの製作

図3が今回製作した回路図です。キーパーツは、uPC1651Gです。ネット検索するとこのICのスペックを見ることができます。ICはすでに廃版になっていますが市場では流通在庫があるようで大手通販ショップで入手が可能です。もし入手ができなければ形状は異なりますがuPC1676Gでも問題ありません。このICのデータシートによると数点のパーツを取り付けるだけで最大19dBのゲインが取れると記載があり、とてもスグレモノです。データシートによるとこのICは1200MHzまでカバーするようです。


図3 広帯域アンプの回路図

uPC1651Gをネット検索すると多くの回路図ではC1~C4に0.001µF(102)が使用されています。今回、この簡易電界強度計をHF帯でも使用することを目的としていますので、0.01µFとしました。D1、D2は過入力信号に対する保護用です。0.7V以上の信号が入らないようにしています。D3は電源電圧を下げるために挿入しています。データシートによると最大電圧は5Vとなっています。単4電池4本の直列では、5V以上の電圧となることからダイオードを挿入して接合電位差分の約0.7Vを強制的に降下させICに印加する最大電圧を5V以下に抑えています。電源をオンしたときに点灯するダイオードにはできるだけ省エネ設計とするため、5Vに対して2.7kΩの抵抗を挿入して約2mA以下としています。

広帯域アンプの検証

図4(左)が完成した基板に電池を接続し、アルミケースに組み込んだところです。図4(右)がその基板です。入力端子に信号を加え、出力にはどれくらいの信号が出ているか確認してみます。


図4 広帯域アンプの内部

10MHz、5mV p-pの信号を入力端子に入力すると出力には約30.5mV p-pの信号が出てきました。これをデシベルで計算すると15.7dBです。uPC1651Gのデータシートに記載の19dBのゲインには至りませんが、それなりの増幅がなされていることが分かります。

広帯域アンプの応用

図5が今回製作した広帯域アンプと前回製作したQRPパワー計の使用例です。QRPパワー計だけでは送信電波を受信しても、メーターはほんの少し振るだけですが、広帯域アンプで15dB増幅すると増幅の効果がありけっこう使いものになることが分かります。ところで今回使ったキーパーツのICは1200MHzまで増幅できるとの記述ですが、元のQRPパワー計は整流するダイオードの特性もあり、50MHzまでの動作が精いっぱいと思います。


図5 広帯域アンプを使った簡易電界強度計

CL

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