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第三十回 Back to Backアンテナ、その後の検証


Dr. FB

月刊FB NEWS 2020年12月号で「Back to Backアンテナの実用の可能性」と題して電源不要のパッシブレピーターの実験を行いました。その記事の冒頭にも触れていますが、実験はアマチュア精神を発揮していきなりフィールド実験としました。結果としては思ったように行きませんでした。その後、アマチュア精神は少し横に置いて、机上の考察を行いましたので結果をここで報告いたします。

結論から述べますと前回の実験の条件では、送信側~中継地点~受信側の経路においてトータルで約20dBのゲインが不足している事がわかりました。パッシブレピーターとして中継を行うには送信~中継(送受)~受信の経路において、もっとゲインのあるアンテナ、あるいは送信パワーが必要であるということです。

今回は、論理的な考察といっても大地や山の反射などの諸条件を厳密に組み入れることはできていませんので自由空間における計算としています。通常、電波の空間ロスを計算するには下に示しましたように「フリスの伝達公式」を使います。

フリスの伝達公式


なお、アンテナの利得は等方性アンテナを“1”とする絶対利得を用います。この式を扱いやすいようにdBで求めるようにすると、以下の式になります。ここでは、Pr/Ptをアンテナ間の空間ロスとしてdBで表し、アンテナの利得をdBiとします。


計算結果は、-xx dBというようにマイナスで算出されます。そのため、計算結果はGain(dB)とすべきでしょうが、ここではLossとしています。また今回の計算では前回の実験の条件を再現します。なお計算で使う周波数を435MHz帯として求めてみます。


図1 前回の実験の条件

A地点、B地点ともに、中継地点まで仰角がありますが、その影響は極小なので直線距離として計算しています。

まずA地点から中継地点までの空間ロスを先の式にて計算すると、112dBのロスとなります。これに送信アンテナゲイン(5.5dBi)と中継地点の受信アンテナのゲイン(13dBi)を加算すると18.5dBiの利得となり、A地点から中継地点までの総合ロスは約93.5dBとなります。

送信出力が5W(37dBm)である事から、中継地点の受信アンテナでは-56.5dBmの電力を受け取る事になります。これは50Ωでは50.6dBµVとなり、この信号であれば中継地点ではトランシーバーで受信すると十分な強さで受信できます。

次に中継地点から受信側B地点までのロスを計算します。同様にアンテナのゲインを加味したロスは約83dBです。これも中継地点から5Wで送信すると、B地点では約-46dBm(61dBµV)となり、やはり相当な強さで受信できます。

しかし中継地点の再輻射電力は中継地点で受け取った受信電力のため、約-56.5dBmと5Wに比べると相当に小さな電力となります。したがって、B地点の受信機に届く電力は-56.5dBm-83dB≒-139.5dBmとなり、50Ω時の電圧に換算すると-32.5dBµVとなります。通常のFMトランシーバーの場合、受信感度は-10~-15dBµV位ですから、-32.5dBµVは受信感度より20dB程度レベルが低いことになります。つまり冒頭に述べたように20dB程度のゲイン不足となり、これでは全く受信できないことが分かります。

それではアンテナなどはそのままで、もう少し中継地点に近づくとどうなるでしょうか?中継地点までの距離が遠いA地点を中継地点に近づけ、B地点と中間地点までの距離と同じ6.5kmまで近づいたとします。A地点から中継地点までの距離は当初のおよそ1/3になります。この場合、空間ロスは中継地点とB地点までと同じになるので、約83dBとなり、93dBから10dB改善されます。しかし、まだ10dB程度不足です。

以上から、各地点のアンテナの大型化、つまりゲインアップは避けられないようです。A地点、B地点の送信パワーを最大のパワー50Wにして、10dBアップという方法もあります。

実際の運用では周囲の山/大地/物体による反射の影響(フレネルゾーンの問題等)が出たりしますので、計算結果からはズレると思います。これらのシミュレーションによる結果からフィールドテストを再度トライするには機材の見直し、主にアンテナの大型化が重要なファクターとなりますのでお気軽に再度実験というわけには行かないようです。

以上が計算結果ですが、フリスの伝達公式はよく見ると割とシンプルな式で、以下のことが分かります。
・波長が短くなる、つまり周波数が高くなると空間ロスが増える。
・距離の2乗でロスが増える。
・アンテナのゲインは空間のロスを補う。

短波や中長波では、大地や電離層などの反射の影響が大きいので計算の結果がなかなか実際の状況に合わないと思いますが、UHF帯以上ではフリスの伝達公式は伝搬実験などを行う際の良き指針になると思います。

FBDX

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