Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

Short Break

オペアンプ実験用正負両電源の製作

2023年3月15日掲載


完成した正負両電源

2023年3月1日公開の月刊FBニュースに「単電源から正負両電源を作る」と題したFBのトレビアの記事が掲載されています。正負両電源は、78シリーズと79シリーズの三端子レギュレータを組み合わせると部品点数も少なく、簡単に製作できるメリットはありますが、出力電圧を可変することはできません。そこで、記事に掲載のトランジスタとオペアンプを使い、出力電圧が可変できる正負両電源を製作しましたのでご紹介します。

製作した正負両電源の回路図

図1が今回製作した回路図です。特に入手困難な部品の使用はありません。回路図の右端には針式のメータを用いた電圧計の回路図が示されていますが、これは特に必要としませんので、使用用途に応じて付加してください。


図1 オペアンプとトランジスタを使った正負両電源の回路図

部品の説明

(1) IC1(LM358)
多くのオペアンプは正負両電源で動作するものが多い中で、このLM358は正の電圧(プラス電圧)だけで動作します。8ピンのICパッケージの中には2つのオペアンプが組み込まれていますが(図2)、今回は1つしか使いません。オペアンプといっていますが、この回路では(+)端子と(-)端子の電圧を比較してコンパレータとして使っています。

3番ピンの電圧が2番ピンの電圧より高ければ、1番ピンの出力端子は正電源(Vcc)のレベルになります。また、3番ピンの電圧が2番ピンより低いときは出力端子0Vとなります。IC1はこれを連続的に繰り返していることになります。


図2 LM358のピン配置図

(2) Q1、Q2
Q1(2SC1815)とQ2(2SA1015)は市場に出回っている小信号用の汎用トランジスタです。このトランジスタはNPNとPNPの違いはありますが、規格はほぼ同一です。通常このような規格の揃ったNPNとPNPのトランジスタの組み合わせをコンプリメンタリ・トランジスタと呼んでいます。

今回は手持ちのコンプリメンタリ・トランジスタとしてはこの組み合わせのトランジスタしかありませんでした。また、オペアンプの実験用電源ということもあり、それほどの電流容量を必要としないことから、この組み合わせで進めます。

(3) R3(5kΩ可変抵抗器)
オペアンプの3番ピンには入力の電圧の1/2の電圧を加えます。この電圧を作るために同じ値の抵抗を電源に接続し、その中点の電圧をオペアンプの(+)端子に加えて基準電圧としています。ここで作る1/2の電圧が正負の電源出力として現れます。今回使用したQ1とQ2は、規格がほぼ同じコンプリメンタリ・トランジスタですが正負両電源の出力に現れる電圧の調整用にこの可変抵抗器を付加しました。絶対に必要なものではないので省略しても大きな問題にはなりません。

(4) M1(電圧計)
出力電圧を常に確認したいことから、メータを取付けました。メータは、受信機やFMチューナに取付けられているプラスチックケースに入った簡易的なものです。使用したメータはフルスケールで50mAの電流計です。内部抵抗等は分かりませんが、R8、R9で構成される倍率器を取付け、実験をしたところ5Vの電圧計とするためには100kΩ程度の抵抗を取付けるとよいことが分かりました。入力電圧に対してフルスケールを調整する必要のあることからR8: 50kΩの可変抵抗器とR9: 100kΩの固定抵抗を直列に接続して倍率器としました(図3)。


図3 フルスケール50mAの電流計に倍率器を取付けて電圧計に変更する

メータの文字盤はWordで作成したものをプリンタで縮小印刷して、それをパネルに貼り付けて使います。メータの調整は回路図に示したR8(50kΩ)で行います。

(5) S1(スライドスイッチ)
正の電圧と負の電圧を常時確認したいことから、出力電圧を2回路2接点(6P)のスライドスイッチで切換えます。このスイッチや先に説明した電圧計も特に必要なものではないため、必要に応じて省略することもできます。

(6) J2、J3、J4(出力端子)
出力端子のグランド(VGND)は、入力電源のグランド(GND)とは異なるため、注意が必要です。これまで単電源で製作してきた電子工作のグランドは、例えば金属シャーシを入出力の共用のグランドとしてきました。この正負両電源の出力グランドは、一般的に仮想グランドと呼ばれています。英語ではVirtual groundと呼ぶことから回路図ではVGNDと表示しています。

DC入力のグランドと正負両電源の出力グランドとは切り離す必要があります。その出力端子に使用するターミナルは、金属シャーシに組み込むのであれば図4(b)のように、シャーシと端子は絶縁されている必要があります。この電源回路を樹脂のような絶縁物のケースに組み込む場合は、(a)でも(b)でもどちらでも使用できます。


図4 金属のケースに組み込むときに使用する出力端子のターミナル

製作

正負の出力電圧をメータで読むことを仕様の一つとしていたため、シャーシにはメータの取付けの穴を空けています(図5)。


図5 シャーシ加工

出力端子のターミナルを取付けるとき、その間隔を18mmとすると図6(b)に示したバナナチップとBNC-Jの変換コネクタを取付けることができるので便利です。


図6 出力端子(ターミナル)の取付けのアイデア

内部写真

内部PCBの写真を図7に示します。リアパネルに取り付けた可変抵抗器は回路図で示すR3(5kΩ)です。


図7 完成した正負両電源の内部

本正負両電源には電源をON/OFFする電源スイッチは取り付けていません。リアパネルにDC電源を接続すると電源がONになります。

CL

Short Break バックナンバー

2023年3月号トップへ戻る

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.