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新・エレクトロニクス工作室

第11回 Si5351Aを使ったVFO実験ボード2

JE1UCI 冨川寿夫

2023年3月15日掲載

第6回では「Si5351Aを使ったVFOの実験ボード」を作製し、このICの使い方やクセの実験をしました。これでトランシーバに使えるかと思ったのですが、更に大きな難関がありそうでした。

作ろうとしたトランシーバですが、50MHzのAMを小型で作ろうという計画です。小型をイメージしていますので大型のLCDは使い難く、どうしても小型になります。そこで、写真1のAQM0802A-RN-GBWを使ったLCDのモジュールを使おうとしました。Si5351Aと同じI2Cの制御ですが、更にクセが強そうです。簡単には動きそうもない「超悪い」予感がありました。


写真1 使おうとしたAQM0802A-RN-GBWを使ったLCDモジュール

このLCDモジュールは第9回の「定電流Ni-MHチャージャー」でも使用した、秋月電子のモジュールです。一度電圧表示は行ったのですが、周波数表示はしていません。そこで新たに、Si5351AとAQM0802A-RN-GBWを使ったVFOの実験ボードを再度写真2のように作製しました。


写真2 作製したVFOの実験ボード

回路

図1のような回路で、Si5351AとAVR、それにLCDを用いました。これらは全て秋月電子の通販で仕入れたものです。今回はCPU、LCDとSi5351Aは3.3Vで動作させました。このようにCPUとその周辺を全て3.3Vで統一させると、回路がずっと簡単になります。簡単になりますが、もちろん良し悪しはあります。


図1 回路図

DC12Vの入力にはDCジャックの他にピン入力を設けました。これは最初の段階では付けていませんでした。しかし、他のIF部、AF部&電源部などと組み合わせてみると、ここにジャンプワイヤーで12Vが入力できないと不便だと気が付きました。他のボードを含めた全体のバランスが取れないのです。そこで後から追加する事にしました。もちろん、このVFOだけで動かすのであればDCジャックだけで充分でしょう。

REは1回転24パルスのロータリーエンコーダです。メカニック式の2相ですが、実はクリック付きのクリックを外して使っています。最初からクリックなしを使っても良いのですが、回転が渋く好きになれません。我儘な事情です。4倍速で使いますので、1kHzステップだと一回転で96kHzとなります。AMですので、まずまずと思います。

また、4回路のDIPスイッチを付けていますが、これは先々の制御を考えたものです。受信から送信に切り替えた時の周波数設定の変更等をイメージしています。同様にLEDをCPUから点灯させていますが、受信時か送信時かの表示を考えています。

作製

図2のような実装図を作製し、これを元にハンダ付けを行いました。実装図のハンダ面が図3になります。使用したのは秋月電子の普通のユニバーサル基板で、サイズはB基板になります。シールドの付いた基板ではなく、一般的な基板です。良くある事ですが、実際にハンダ付けをしようとすると不合理な接続に気が付く事があります。そのような場合は、その都度回路図や実装図を修正しています。

出力には秋月電子で購入したSMAコネクタを使っています。詳細不明品という事で30円のものですが、このような用途には最適でしょう。実装図だけでは解りませんが、銅のテープをアース側に貼っています。まあ気休め程度とは思います。


図2 実装図


図3 実装図のハンダ面

基板を作製したのが写真3になります。ハンダ面が写真4になります。最初にICを入れずに導通の確認を行います。電源の地絡や短絡が無い事も確認します。そして電源を接続し、各部の電圧が正しい事を確認します。一旦電源を切って、ICを入れて動作確認を行います。今回の場合はソフトがありますので、これで単純に終わりません。


写真3 基板を作製したところ


写真4 基板のハンダ面

なお、LCDにはソケットを使用している事もあり、間違って上から力が加わると問題がありそうです。そのため、写真5のような高さ11mmの貼付けボスASR-11を付けて、下から支えています。このネジ穴は使っていません。普通の樹脂製のカラーを基板にネジ止めしても良いのですが、基板裏面の配線を考えて止めました。


写真5 下側を11mmの貼付けボスで補強

また、写真6のようにB基板用のアクリル板をネジ止めしています。第10回と同様ですが、写真7のように追加した電源入力には赤の分割ロングピンソケット(メス)を使用し、アース側に黒印をしています。


写真6 B基板用のアクリル板をネジ止め


写真7 赤の分割ロングピンソケット(メス)で電源を入力(黒丸はアース側を示す)

ソフト

今回はソフトが絡みます。実はここからが問題で、ソフトとの格闘になりました。前回作ったソフトをベースに作りますので、Si5351Aの方は問題なく動作しました。予想どおりだったのですが、LCDの制御はとても解り難く、難しいものでした。特に高い部品ではないのですが、最近では数十ページもあるようなデータシートを読まないと使えません。何回も失敗しながらですが、何とか動かす事ができました。これは第6回でワンステップを踏んでいた事も大きかったと思います。

作ったソフトですが、BASCOM-AVRを使っています。間違いなく下手なソフトです。50MHzのAMトランシーバを目指して作ったもので、まだ送信周波数しか表示できない状態です。一応は動くというレベルですが、ここに置きますので参考にして下さい。一式をZipにしてありますのでHEXファイルを書き込むだけでも動作可能ですし、BASファイルから修正や作り直しをする事も可能です。BASファイルは拡張子をTXTに書き換えると、ワードやメモ帳で読む事ができます。
ソフトのダウンロード

使用感

写真8のように無事に動作させる事ができました。今回はこれで終わりではなくスタートなのですが、ハードとしては完成です。最近はこのようなケースが多いのですが、スタートだけで終わらないようにしないと・・・。


写真8 このように動作しました

2回も作るなんで効率が悪いと思われるかもしれません。確かに良いとは思えません。しかし、実際にこのような実験をしてみたところ、Si5351AとAQM0802A-RN-GBWの両方でつまずくと立ち直れなかったかもしれません。これは私にとっては両方共に強敵でした。これは本人でないと解らない感覚的なものでしょう。今回はLCDだけに集中できましたので何とかなりました。但しSi5351Aの設定については、今でもどのような設定がベストなのか良く解っていません。このICは便利なのですが、クセツヨと思います。

これでこの次のRF部の製作に入る事ができそうです。このように半歩でも確実に進める積み重ねが、自作のコツなのでしょう。

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