おきらくゴク楽自己くんれん
2024年7月1日掲載
毎週のように移動運用行脚を繰り返していますと、あっという間にALL JAコンテストの時期になってしまいました。今年はどのように参加するか考えましたが、好きなバンドで昔から良く参加している50MHz電信電話部門に自作のポケットダイポールだけを使ってどれくらいの局数ができるか挑戦してみることにしました。
昨年のこのコンテスト結果を見てみると50MHz電信電話部門に本格的な移動運用で参加していた局は1局だけでした。今年も参加局が少なくて運が良ければ下位での入賞も狙えるのではないかと思っていました。ただ懸念していたのはアンテナがプアだとコンディションが良くならないと、暇で退屈なコンテストになるのではないかという心配でした。
18時頃に奈良県吉野郡上北山村の予定していた場所に到着しました。早速ポケットダイポールアンテナを6mの伸縮ポールであげてアンテナの準備は完了。これ以上はないくらいなお手軽設備ですのですぐに終わります。すぐにシャック内の準備にとりかかります。
はたしてポケットDPだけでどれだけのスコアが・・・
一通りの準備が終わり50MHzバンドをワッチしてまわります。IC-7300Mのリアルタイムスペクトラムスコープのあちらこちらで山があり、バンド内は賑やかな様子です。そのうちの強い信号に合わせてみます。
「CQ こちらはJR7・・・」ここまで聞いて、ああこの7エリア局は近くまで遠征してこられているのだなと思いました。しかし最後に「ポータブルセブン」と言っているではありませんか! なんと福島県の移動局でした。あまりに信号が強いので近くの局かと思っていたのですが、まぎれもなく7エリアからの信号でした。慌てて呼びますと向こうも3エリアから呼ばれるとは思っていなかったのでしょう、少し驚いていたようです。好コンディションに喜んでおられるのを感じながらお互いエールを送って交信を終了しました。
この場所からEスポ以外の伝搬では、6エレなどの大きなヤギアンテナを使っても7エリアの信号が入ってくるのはタイミングがかなり良くないと無理なので、ダイポールでこれができたなら楽しいコンテストになりそうだと期待が膨らんでいきました。
21時となりコンテストがスタートしました。弱小な設備ですので呼んで回りながらバンド内の状況を探っていきます。まずは最近このバンドの部門で良く入賞されている方々をあいさつ代わりに呼んでいきます。
中には少し気まずい? 空気を感じる反応もありました(あなたもこの部門に参戦していたのですか? 的な)が、でも安心して下さい。こちらは弱小設備の限界に挑戦しています。貴局の入賞を脅かすつもりはありません(笑)。この時点でこのバンドには昨年よりも多い本格移動参戦の局がいることが判明。入賞の夢は泡となって消えてしまいました(笑)
一通り挨拶交信を終えた後、こちらからCQを出してみました。アンテナがプアなのであまり呼ばれないかもと考えていましたが、その心配には及ばなかったようでそこそこ呼ばれました。しばらくしてバンド内をまたサーチしているといつものこの場所でこのバンドではありえないことが起きていました。開始30分を過ぎると9エリアや1エリアの局がSメーターを大きく振って入ってきます。良いコンディションが続いているみたいです。呼んでみるとあっさり返事があり難なく交信終了。21時台だけで千葉県(12)や山梨県(17)、石川県(30)などのマルチがゲットできるなんてこのコンテストの50MHzバンドでは過去にない経験です。
深夜になって1エリアの半分ほどのマルチをゲットすることができました。1エリアの局から呼んでくれるという、いつもの年なら絶対にないことも多々ありました。今回マルチはどこまで伸びるのでしょうワクワクしてきました。日が変わり遅くなっていつもなら全く局がいなくなる1時を過ぎても何局かと交信することができました。
この時点で交信数は87で獲得マルチは22を超えました。ダイポールだけですから交信数は今一つですが、マルチは当初の予想をはるかに超えるレベルです。
休みをとって明るくなった頃に目が覚めました。5時台から活動開始。昨夜に続き1エリアからの信号が強く入ってきます。いつもの5エレや7エレのアンテナではなくただのダイポールでこれですから、もう少しいいアンテナであればどれだけ楽しむことができたでしょうか。今日の注目点はEスポが出てくれるかが最大の注目点となるでしょう。
本日はお天気がいいみたいです。しばらくすると何度もモバイルシャックの近くに通りがかりの車が停まります。初めはなぜかわからなかったのですが、後で外に出るとここから見下ろす谷が見事な雲海に包まれていることがわかりました。しばし美しい景色を眺めながらさわやかな気分を味わうことができました。
夜が明けると見事な雲海が広がっていました
モバイルシャックに戻ってコンテストを続けます。これだけコンディションがいいとかなり局数も増やすことができそうなものですが、あまり順調に局数が伸びるようなことはありませんでした。プアなアンテナが原因なのか局数が少ないのか定かでなないのですが、感覚的に参加局数は多くない感じがしていました。
いつものALL JAコンテストでの50MHz部門の2日目はEスポが出てこないと修行の時間です。バンド内はほぼ交信済の局ですが、たまに見つかるパートタイム参加局を漏らさず探すのが重要です。もちろん定期的にCQを出す必要もあるので気が抜けませんが、交信数・マルチは全然伸びません。しかし今年は様子が違いました。短い時間帯でしたが10時台に沖縄県(47)が聞こえてきましたので何とか交信。後で8・7エリアも開いてくれるでしょうか。お昼過ぎにはスキャッターでしょう、めったにここからつながることがない新潟県(08)マルチをゲットし思わず「よーし!」叫んでしまいました。
夜まで好天が続いてくれました
しかしやっぱりその後、修行の時間帯になりました。夕方のコンディションになるまで我慢が続きますが、昨日同様のコンディションであればまだ新しいマルチ獲得が期待できます。15時までの交信数は168、獲得マルチは29となりました。
毎年夕方の時間帯は1つマルチが獲得できれば運がいいという感じなのですが今年は違いました。いつもと違うのはほとんどの時間帯で多くの1エリア局が聞こえているという事です。未だ埼玉県(13)と交信ができていませんでしたので、バンド内を隈なく探して13のマルチを送っている局を探します。やっと見つけたと思ったらCQ局を呼んで回っている局だったり、呼ぶタイミングを待っていたら運用を止めてしまったりしてなかなか苦労し半分あきらめていましたが、18時台に何とかゲットできました。また同時間帯に5・6エリアにパスができたみたいで、高知県(39)と福岡県(40)もゲットできました。交信数はデュープ込みですが200、マルチは32を数えることが出来ました。本格的なEスポとは出会えませんでしたが、ダイポールアンテナだけでもこれほど良好な伝搬に出会えるとは思ってもいませんでした。最後の瞬間まで運用を続け21時に終了。片付けも簡単に終わりますので、その日のうちに帰宅してゆっくり過ごすことができました。
夢見た入賞はかないそうにありませんが、沢山のマルチを獲得できたワクワクする楽しいコンテスト移動となりました。交信していただいた皆さん、ありがとうございました。
今回のコンテストで使用したアンテナは、本連載その1で紹介した塩ビ管材料で作るポケットダイポールアンテナと同じです。大変好評をいただき、追製作された方が多いと聞いています。
当時製作したものでは重量のあるM型レセプタクルを3個使いロッドアンテナにもM型コネクタを取り付けるという手間のかかる作り方をしていました。ロッドにコネクタを取り付ける方法が接着剤頼りになっており、文字通り頼りないものになっていたので作り方を改めたものを使用しました。
昔ミズホ通信から発売されていたポケットダイポールは給電部から出るネジにロッドアンテナを回転させて取り付けるという簡単確実な方法で組立てできるようになっています。前回使用したロッドアンテナも下部コネクタ部分を外せばネジで取り付けることが可能になります。これを活用しない手はありません。
上: 旧タイプ 下: 軽量な改良タイプ
製作に使用した部材
VP13のキャップは平らな物を選択
半分程度を水に浸けて頂部のみを加熱
キャップを加熱することにより6.5mmの穴にM4ナットがハマるようにします。キャップ全体を温めてしまうと下の接合部まで変形してしまうので、キャップの半分程度を水に浸けてヒートガンで加熱します。
長いネジでM4ナットを埋め込みます
長めのネジの先にナットを付けて、熱により柔らかくなった穴にグリグリしながらナットを埋め込みます。熱によりやわらかくなった6.5mmの穴は、M4ナットによって広げられナットと同じ六角の形に変形しますので冷えて、固くなればしっかり固定され外れなくなります。
反対側からネジを突き出す
ナットが埋まりキャップが十分冷えたら、長さ10mmのM4ネジを内側から回して突き出します。ネジでナットがキャップに締め付けられるのでナットが外れることがなくなります。
キャップの加工が終わったらT字管の加工です。キャップを使うことでT字の幅が広がってくるので少しでも緩和するためにT字管の幅を短く加工します。私はパイプカッターを使い切りましたが肉厚があるので少し苦労しました。
T字管の両端部分を切り短く加工
あとの給電部分の加工は前回と同じです。キャップとの接続のためにVP13パイプを短くしたものを使います。管の接合には通常の塩化ビニル用接着剤を使いました。これを使うと分解が不能になりますが接触不良などが起こった場合はあきらめることにします。
リード線先の圧着端子をキャップのネジに締め込み導通させる
組み立てが終了したらSWRアナライザーで特性を確認します。写真のように非常に帯域の広いFBな特性となりました。
完成した新しい給電部により、アンテナ全体の重さを約60g軽くすることができました。軽さは正義? 担ぎ上げて山岳移動運用などで細めのポールに取り付けて上げる時にも、喜んでもらえるのではないでしょうか。
VSWR特性を確認して完成
今回はコンテストで使用して素晴らしい結果を得ることができましたがこれは本来の使い方ではありませんね。しかしハードな使用にも十分耐えることができることが確かめられ、これからも安心して色々な場面で活躍してくれそうです。軽量になったことでもあり、SOTAなど担ぎ上げによる移動運用にも活躍できるものだと思います。いろいろ試してみてください。
それではまた。
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