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【激レア】旧西ドイツ製無線機を徹底分析【1974年製】

JP3DOI 正木潤一

西ドイツ軍が1974年から使用していたハンディートランシーバー“SEM52A”。オリーブドラブ色に塗装された頑強な筐体の軍事用無線機は、用途の特殊性からその中身が非常に気になる。北大西洋条約機構vsワルシャワ条約機構という対立構造の緊張の中で使われていたこの無線機を、技術的見地から今と昔の違い、民生品と軍用品の違いを比べながら調べてみたいと思う。

軍用無線機の仕様

“SEM52A”は、50MHz帯、送信出力0.3W、6チャンネルの水晶発振方式FMトランシーバー。筐体は完全防水のダイキャスト製。分厚いシャーシで非常に頑丈にできている。マイクとスピーカーは内蔵していないため、ヘッドセットかスピーカーマイク(ハンドセット)を接続して使用する。モデル名の最初のアルファベット“SEM”は “Sender/Empfänger, Mobil” の略で、ドイツ語で「携帯送受信機」を意味する。メーカーはドイツ『Standard Elektrik Lorenz社』だが、現存していない。

電気仕様(Wikipediaおよびインターネット上の情報も含む)
運用周波数:47.0~56.975 MHz (このうち6波)
電源:DC 7.2~9V (単3電池6本)
消費電流:33mA (受信音量最小)~94mA (受信音量最大)、250mA (送信時)
受信感度:0.4uV~0.5uV (20dB SINAD時)
中間周波数:1st=20MHz、2nd=455kHz
電波型式:FM
送信出力:0.3W (0.2Wという情報もあり。ちなみに手元の物は0.5W出ている。)
寸法:180mm×85mm×36mm (縦×横×厚み)
重量:650g (アンテナ・電池除く)


無骨なボディー。とにかく頑丈にできている。


側面の銘板にはモデル名とシリアルナンバー。右側の銘板にはチャンネル“Kanal”と記載がある。


シャーシやバッテリー収納部のカバーはシーリングによって防水性が確保されている。製造年を示す”74”の刻印が見える。(右)


バッテリー収納部内には校正証とみられるシールが貼られている。赤線の箇所に“86” “89” “92”とあることから、3年に1度校正がおこなわれていたようだ。

とにかくシンプルな操作性と機能

・アンテナ端子
BNCやSMAではなく、独自機構。ただし、BNCとは互換性があり、同軸ケーブルや他のアンテナを接続できる。ちなみに、現在の軍用無線に多いのはTNCである。


中心にBNCコネクタ。その周りのアウターリングによって物理的強度を確保している。

・ヘッドセット/スピーカーマイク端子
ドイツ軍独自のピン配列。アンテナ端子と同様にキャップが付いているが、むき出し状態でも防水構造である。


AFコネクターのピン配列。マイクはダイナミックマイクに対応している。

・電源スイッチ
電源OFF、電源ON(スケルチOFF)、電源ON(スケルチON)の状態が選択できる。スケルチが閉じている間、受信回路は間欠動作、いわゆるパワーセーブモードとなる。弱い信号を待ち受ける時にはスケルチ機能をOFF、つまりスケルチを強制オープンできる。


"AUS"(=OFF) 、"EIN" (=ONスケルチ無し)、"RSP. (RauschSPerre)"-(=スケルチあり)

・音量調整ダイヤル
AFアンプICへの入力レベルを調節して音声出力を変える。93kΩ(実測値)の可変抵抗器が使われている。


・チャンネル選択ダイヤル
運用周波数を切り替えるダイヤル。内部にはダイヤルの目盛り1つ1つに水晶基板がセットされている。ダイヤルを回すと水晶基板が回転し、接点を通じて発振回路基板と物理的に導通する。リボルバー式拳銃と似た仕組みだ。水晶基板には水晶発振子とコンデンサ、分圧用の抵抗器が実装されている。

送受信周波数 (水晶周波数から20MHzを減じた周波数)は、この回路の定数で決まる。水晶基板を交換することで、400チャンネルの中から6チャンネルが選択可能。ちなみに、初期状態では5チャンネルと6チャンネルは、それぞれ47.8 MHzと55.5 MHzが設定されていて、部隊間で通信するための共通チャンネルだったらしい。いわば「コールチャンネル」といったところか。


水晶基板と発振回路は、オルゴールの櫛歯のような接点を介して導通する。


交換用の水晶発振子は、予備のヒューズやヒューズ交換用チューブと共に専用ケースに入っていた。


小さな基板上に水晶発振子と2つの分圧抵抗、コンデンサが実装されている

・ヒューズ
本体側面(チャンネル選択ダイヤルの下)には、0.6Aのヒューズが格納されている。ヒューズは円筒形の金属缶入りで、2本のリードを差し込むタイプになっている。入手元によると、ファイナルアンプ保護のため、高SWRでの送信時に切れるようになっているらしい。ちなみに、私が所有するもう1台のほうに内蔵されていたヒューズは、細いリード線で端子間がショートされていた。今となっては入手できないタイプのヒューズなので、元の持ち主による苦肉の策だろう。


ヒューズは奥まったところに入っている。付属の白い樹脂チューブをヒューズにはめて引っ張り出す。

・電池収納部
両サイドのバックルを開放してカバーを開けると、黒い樹脂製のバッテリーケースが姿を現す。この中に単3乾電池またはニッカド電池6本をセットする。


バッテリー収納部のカバーは左右のバックルによって確実にロックされる。


単3電池6本を電池ケースに収める。頑丈に造り込まれた筐体とは対照的に、電池ケースは簡素な造りだ。

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