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熊野古道みちくさ記

第47回 「南高梅」誕生の地(みなべ町)

熱田親憙

みなべ町は和歌山の代表的な地域ブランド「南高梅」が誕生した地だ。この地域の梅づくりは、2015年12月に「みなべ・田辺の梅システム」として世界農業遺産に認定されて自然環境的価値が加わったことを知り同町の千里梅林を訪ねた。

高速道路のみなべインターを降り、まず南部湾を一望するため猪野山公園へ。沖に三つの鍋の形をした鹿島が浮かんでいた。猪野山を下り、梅林とウミガメで有名な千里海岸を目指す途中に、JR南部駅近くに南高梅の名前の由来となった県立南部高校がある。

明治時代に上南部村(現みなべ町)で高田貞楠が近所の人から購入した60本の梅の中に、豊産で実が大きく美しい紅のかかる梅(高田梅)を見つけ、育てた。その「高田梅」が昭和20年代、地域で栽培されている梅の中で最も梅干しに適しているとされた。この選定に大きく貢献した南部高の愛称「南高」に因んで「南高梅」と名付けられたのだ。

海岸線から熊野街道に入り、高台に登った。眼下に千里海岸が見え、足元から広がる斜面の梅林は潮風を吸って赤い新芽を出している。昨年の2月に訪ねた時の梅林は真っ白な花を付けて海岸線まで伸びており、その合間を紀勢本線の列車が走っていた。眺望は、みなべ町の自然の豊かさを象徴しており、風景を写真に収めようと、列車を待つカメラマンが数多く訪れていた。

この豊かさの源は何なのか。梅システムとの関係が知りたくなった。

千里王子を横切って小道に入ると間もなく、ぱっと視界が明るくなり、右手には紀勢本線、左手には梅林が広がり、梅の根が急斜面の裾をしっかり固めていた。近くの農家の人に話かけてみると「みなべ町は、町あげて南高梅に賭けています。何しろ条例にしているくらいだから」とアピールされた。2014年施行の「紀州南高梅使用のおにぎりと梅干しの普及に関する条例」のことである。

みなべ町うめ課に梅システムの内容を尋ねた。

みなべから田辺にかけての地域は礫(れき)質土壌で急傾斜が多いので、田畑としての利用は難しいこともあり、梅栽培が始まった。梅林の周辺や急斜面の尾根に薪炭林(ウバメガシなどの雑木)を残して水源涵養(かんよう)や養分補給、斜面の崩落防止等の機能を持たせ、梅の生産を支える。梅林は草を生やして表土を保護し、刈り取った草は肥料として利用する。薪炭林に生息するミツバチが梅の受粉を助け、梅の花はミツバチの蜜源となる。共生関係ができており、これらをつなぐのが薪炭林である。

この循環で支えられた梅生産は梅加工と製炭業、観光業を創出し、雇用を促進している。これまで工学的技術を駆使して生産性を上げてきた産業は資源枯渇という問題に直面してきたが、自然の生態系を利用した梅システムはローコストで持続可能な仕組みである。

賢い人間の智恵に出合った気がした。世界農業遺産に認定されただけの価値があり、未来を先取りしていることに感服した。


スケッチ;千里梅林(日高郡みなべ町)

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