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【激レア】旧西ドイツ製無線機を徹底分析【1974年製】

JP3DOI 正木潤一

標準構成品

この無線機は、携帯用ケース、ヘッドセット、アンテナと共に支給されていた。


なにしろ年代物なので、ヘッドセットのバンドやコードはかなり劣化が進んでいる。

・携帯用ケース
肩に掛けて携行するための携帯用ケース(ハーネス)。側面にはヘッドセットのPTTボックスが内蔵されている。底部には予備のバッテリーケース1個を収納可能。


厚手のグローブをはめていても押しやすそうな、大きなPTTスイッチ(左)と、底部に収納された予備のバッテリーケース(右)。

・ヘッドセット
本体にはマイクやスピーカーが内蔵されていないので、ヘッドセットが標準で付属する。耳に当てて、バンドで頭に固定するタイプだ。骨伝導マイクを内蔵しており、頬骨のあたりから声を拾うようになっている。車両のエンジン音や銃の射撃音を拾いにくい骨伝導マイクは、現代の軍用無線機でも使用されている。PTTスイッチは、同じく標準装備の携帯用ケース内に内蔵されている。


骨伝導マイクを内蔵しているため、耳掛け式イヤホンを大きくしたような、奇妙な形状になっている。


ヘッドセットを装着した様子。劣化によりケーブルの被覆が剥がれ、内部のリードが露わになっているが、動作は良好だ。

・アンテナ

任意の箇所で折り曲げられる“ブレードアンテナ”。全長90cm(コネクタ基部含む)。写真のように基部を曲げられるので、本体の向きに関係なくエレメントを垂直に保てる。小さく折り畳んで、携帯ケース内に収納可能。低出力ということもあり、まっすぐに伸ばした状態での通信距離は3~5km程度だったらしい。


樹脂で分厚くコーティングされた幅広のエレメント。長さが邪魔になる状況では折りたたむ。


アンテナ基部は自在に曲げられる“グースネック”構造。エレメントは基部と分離できるので破損しても交換可能。


アウターリングで本体にしっかり固定できる独自のコネクタ機構。


47~53MHz (左)と~600MHz(右)のSWR。基部に内蔵されているマッチング回路により、運用周波数範囲内でほぼ整合が取れている。

内部

本体の4隅にあるネジを外してシャーシのカバーを取り外すと内部が露わになる。基板同士をリードや同軸で繋ぐという、年代を感じさせる造りだ。基板は、「受信回路」、「送信回路」、「発振回路」、「電源回路」に分けられている。送信回路基板と受信回路基板はほぼ同じ大きさで、背中合わせでシャーシにネジ留めされている。


シャーシの中には基板や部品が隙間なく詰め込められている。

シールド板上には、調整用の半固定抵抗器やトリマーコンデンサの在り処を示す“R”や“C”などの表記がある。また、随所に見られる小文字のアルファベット表記は、その穴の中に信号の測定ポイントがあることを示している。


基板上の調整ポイントと測定ポイント

年代を感じる部品群

では、基板全体を覆うシールドカバーを取りはずして、まずは使われている部品を見ていこう。
私の第一印象は、「部品点数が少ない」。現代の無線機は、機能の多くがICに取り込まれているとはいえ、CPUを中心にロジック回路が組まれ、トランジスタスイッチをON/OFFしたりICを制御したりする制御信号パターンが各回路に伸びていて、基板上は部品で賑わっている。しかし、このモデルではそういったものは見当たらない。後述するが、各回路は供給電源の切り替えだけで制御されているのだ。

混合や復調にはICが使われているが、それに加えて、いくつかのモジュールが使われている。こういったモジュール以外はリード部品が基板に植え付けられている。もちろん、チップ部品は一切見当たらない。今では見られない形状のディスクリートタイプの抵抗器やコンデンサがほとんどだ。最も目につくのが、水色のコンデンサ。0.022uFなど、その値からほとんどがバイパスコンデンサのようだ。黒い四角の部品は、様々な大きさの物があるので、比較的容量の大きいコンデンサとみられる。


受信回路基板。抵抗器よりもコンデンサが目立つ。

西ドイツ製の無線機だけあってシーメンス社やSGS社などドイツ製のICが多いが、フランス、アメリカ、そして日本製の部品も使われている。今ではもう金属パッケージのICは使われていないが、同じ型番でDIP品(樹脂モールド品)は現存している。


AFパワーアンプIC “TAA611”(左の金属缶)と、ミキサーIC “S042”(右の金属缶)。どちらもドイツ製。

いくつかの回路ブロックは塗り固められてモジュール化されており、その中身を知ることはできない。このモジュールに軍用ならではの秘密があるのかもしれない。モジュール化のメリットの一つとして、将来モジュールを交換することで無線機の性能を改善することができる。例えば、より低ノイズの増幅素子が開発されたら、増幅回路をモジュール単位で交換するだけで受信性能を高めることができる。このアプローチは現代の戦車の装甲技術に対する考え方と同じだ。


赤茶色に塗り固められたモジュールの1つ。表面実装ICのような端子のシルエットが浮き出ているが、これは現代の表面実装ICとは異なり、“フラット・パック”と呼ばれる小型ICの初期の形態である。

基板の片面しかパターンが無い。ジャンパー線も1か所しか無い。これは、部品がスペースのムダなく配置されていることを示している。

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