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テクニカルコーナー

145MHz 4エレキュビカルクワッドアンテナの製作

Kyouji.SATO

数十年前まで、技術としてアマチュア無線を楽しむには無線機の製作がありました。残念ながら今や無線機は技術的にも法的にもメーカー製品を使う以外に手が出ないレベルに来ています。残された道はアンテナの世界で、HFもVHFも自作のアンテナで交信をされている方が多くおられます。

145MHzのアンテナは移動運用にも固定にもちょうど良い大きさをしています。八木アンテナは今でも多くのメーカーが販売していますが、キュビカルクワッドアンテナは数十年前に持てはやされたきり今ではメーカー製は影を潜めてしまいした。クワッドアンテナは設計・調整が難しいのですが、最近はアンテナシミュレーターソフトやアナライザーといった「道具」が高精度になり、設計した通りに作れば期待の性能が高精度で得られます。

ホームセンターで購入できる部材をできる限り利用して個性的で高性能??なアンテナを作ってみました。完成イメージを頭に焼き付けてから、いざ!材料集めから。


完成した4エレクワッドアンテナ
軽く風圧を受けにくいので細めのマストでも十分設置できる

私が選んだ材料を下の表にまとめました。「スプレッダー」に使う絶縁棒は農園作業に使う「ダンプラ」という太さ5.5mmの繊維質プラスチック棒です。この太さに合わせた十字を作れる「クロスマウント」を入手できましたので綺麗な十字ができました。この大きさのアンテナでしたらブームのアルミパイプに直接貫通穴を開けて十字を形作っても十分な強度が得られます。ただし直接穴を開ける時は細心の注意が必要で、適当に開けますと見た目の悪い十字に成ってしまいます。

部品を整理して不足が無いか確認します。要領の解っている人は部品を作りながら組み立てしていけます。

製作過程は、材料の加工、組み立て、調整の順で紹介します。集めた材料は下の「設計図」のように組み上がるように切断などの加工をしてゆきます。ブームのアルミパイプは1mの物が入手できればそのまま切断しないで使います。


設計図


マストクランプの一例
テレビアンテナ設置用で各社から売られている
このタイプだとブームに穴を開ける必要がある
ブームもマストも両方挟めるタイプが使いやすい
ホームセンターで購入できない場合はネットで検索し入手する
大手アンテナメーカーではエレメントクランプとして販売しているところもある

エレメントは太さ0.9mmの銅線を使いますが、細くても十分な強度で加工しやすく進められます。エレメントに1.6mm程の太いものを試したのですが銅線がスプレッダーに勝ってしまい作業が大変で閉口しました。スプレッダーは先端までの寸法を計算して必要な長さに切ります。


「ダンプラ」プラスチック棒の切断
結構硬いので金ノコで切ると良い

エレメントは一辺がおよそ50cmの正方形にしますのでそれを保持するスプレッダーの寸法は√2倍になります。ブームに直接貫通させる場合はそのまま1.4倍程度の70cm程度になる計算です。ここではちょっと特殊なクロスマウントを使い中心部の挿し込み部分の寸法を考慮し、細かい寸法になりました。


クロスマウント
4方向からスプレッダーを差し込むと綺麗に十字ができる
スプレッダーをブームに通す様に穴を貫通させても良い
ブームを丸パイプでなく角パイプにすれば貫通穴の加工は容易

ダンプラ棒を必用な長さに切断したら一度十字に組んでみてイメージを確認します。4エレのアンテナですので、十字が4つに綺麗に揃えば完成が見えてきます。苦労したのはエレメントの銅線をいかにしてスプレッダーに固定するかですが、HF帯のクワッドでは皆さん固定に苦労しておりここをしっかり考えないといけません。

幸い周波数が高く小型なループですのでスプレッダーの先端に直接穴を開けても、ひもや金属線で縛っても何とか強度は保てそうです。思考錯誤の結果、スプレッダーの先端にエレメントを貫通させた太さ10mm(内径6mm)のプラスチックパイプを被せる事にしました。


エレメントホルダーに使うプラスチックパイプを切断する
パイプカッターで切断すると綺麗に切れる。長さ30mm程度に15本切断する


エレメントホルダーに穴あけ
穴に通すエレメント銅線より少し大きめの穴をドリルで開ける
穴はホルダーの中心ではなく一方に寄って開ける


スプレッダーとエレメントホルダー
エレメントホルダーに銅線を通して十字を作ってゆく


スプレッダーをエレメントホルダーに差し込む

スプレッダー・エレメント・クロスマウントの組み合わせ方

クロスマウントを使わない組み合わせ方

このプラスチックパイプを使うことにより作業は増えますが、組上げや収納が多少やり易くなると思います。加工が大変なのは給電部ですが3D2V等の同軸ケーブルの先端を直接エレメント銅線に接続させています。私は電工用のリングのような部品を使い強度を保つように作りました。同軸ケーブルとエレメント銅線の接続はスプレッダーの上で行い、同軸ケーブルをスプレッダーに縛りつけるなりして固定します。


給電部の加工
スプレッダー上でエレメントと同軸ケーブルを接続固定
結束バンドなどを使いしっかりと固定
最終的には接着剤やテープで防水処理すると良い

RAD(ラジエター)製作図

図面を見てエレメントの加工やスプレッダーへの取り付けをしていきます。私は4枚のエレメントの中で、導波器(DIR)を二枚同一寸法にして加工での面倒を減らしました。シミュレーションでは2枚は大きさが違うのが当然なのでしょうが、これらの2枚をブーム上での位置を調整することにより大差ない性能が得られましたので良しとしています。PCを眺めながら細かい寸法調整で最大の性能を追求するのも良いでしょう。

反射器(REF)と給電器(RAD)も組み上げて4枚の十字(正方形)を作ります。それらを図面上の位置に取り付けて完成になります。無線機に接続する場合はSWR計を通して希望の特性が得られるか確認して下さい。


完成したアンテナのSWR特性
ほぼ希望の周波数に収まっている
SWRが高かったり全く下がらない場合は接続を確認
特に同軸ケーブルの引き回しで特性が変る
同軸ケーブルはスプレッダーやブームにピッタリと固定するのではなくSWR計を見ながら円弧を描き最良点を探ると良い

どうしてもSWRが下がり切らない時はエレメントの寸法やブーム上の位置を確認してください。REF, RAD, DIR-1, DIR-2のそれぞれの位置関係を間違えるととんでもない特性になりますので注意です。

調整・運用はマストに取り付けて行ないます。エレメントでは給電部の位置により電波の「偏波」が変ります。給電部(同軸ケーブルが接続されている)位置により、垂直(下方向)の場合は「水平偏波」に成ります。位置を水平(横方向)にすると「垂直偏波」になります。モービルなどの垂直に突き立ったアンテナは「垂直偏波」ですので給電部を横にして設置したほうが「電波の相性」が良くなります。特に145MHz以上の周波数では垂直偏波が多用されているようです。

近くのモービルの混信から逃れて遠距離通信を目的にしたり月面反射や衛星通信を試みる場合は水平偏波を使う事もあるようですが、いずれにせよ相手とのマッチングが目的ですので皆さん苦労されているようです。このアンテナを垂直偏波から水平偏波にぐるっと90度廻すと相手の信号が極端に弱くなった経験がありました。

クワッドアンテナは通常フェージングに強い、偏波の「乱れ」に強いという事ですが、まあ、そうかな?というレベルでした。八木アンテナに比べてクワッドアンテナは様々な「優位性」があるといわれています。その中には都市伝説のように、?の付くような話も有りましたが、最近の解析ソフトのシミュレーションで有る程度の違いは解ってきました。その中で、私見を含めて、
1. 八木に対する優位性は・・・ゲインが高い! 4エレクワッドは4エレ八木に比べて1dBほど高利得のようです。
2. ノイズに強い・・・ループですので空気中の電位(ノイズ源)を避けられるので? 空電等のノイズに強い?
3. 反対に劣位性は・・・工作が大変。4エレなのに8エレ八木を作るくらい手間がかかる。
4. 壊れやすい・・・2次元の八木では無い3次元のクワッドはそれなりの強度が必要です。
5. 見た目が?・・・一般人から見ると「くもの巣」に見えるこのアンテナも考えようによってはアマチュア的でその独特な「味」もかえって良いのでは?

さらに上のバンドの430MHzや下のバンドの50MHzも設計して試しましたがそれなりに面白い特性が得られました。色々試してみては如何でしょうか?

折角色々と設計・テストを繰り返しましたので、これを配布するホームページを作りました。材料加工済みのキットですのでドライバーやペンチなどの簡単な工具だけで組上げられます。興味のある方はご覧下さい。
http://www4.tokai.or.jp/CQCQCQ/

アマチュア無線工作で遊ぶにはアンテナの工夫が最適です。VHF/UHFはおこづかい程度で遊べるアンテナが色々有りますので楽しんでみては如何でしょうか?

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