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テクニカルコーナー

IC-7610でFT8モードを運用する
(その2) 交信チャンスを2倍に広げる2バンド同時受信

月刊FBニュース編集部

前号の記事はご覧いただきましたでしょうか。前号の記事をご覧いただき、すぐに変更申請(届)を提出された方は、もう実運用を始めておられることと思います。

さて、今回は、IC-7610の大きな特長のひとつである2バンド同時受信機能を活かして、FT8モードのデュアルワッチをテストしてみました。この2バンド同時受信機能は、上級機にしか搭載されていないものですが、参考までにご参照いただけましたら幸いです。

使用ソフト

つい最近にJTDXが評価版(Evaluation versions)ながらFT8に対応しました。ただ現時点(2017年12月中旬)ではまだ正式リリース版になっていないため、今回もWSJT-X ver.1.8.0を使用することにします。

当初、1台のPC内で別々のフォルダにWSJT-Xをインストールし、2本同時に立ち上げようと試みましたが、(別ソフトのWSJTなら上手く立ち上がるものの)、WSJT-Xでは上手く立ち上がらなかったため、PCを2台に分けることにしました。こちらのやり方が悪かったのかも知れませんが、もし1台のPCで2本同時に立ち上げることができても、1台のモニターだと表示スペースの関係で、2本同時に見ることは難しいので、最終的にデスクトップ型のサブPC(PC2)にもWSJT-Xをインストールし、前号で使用したノートPCをメインPC(PC1)として使用することにしました。

接続

前号の記事では、7610とPCをUSBケーブルで接続する方法をご紹介しました。1台目のPC(PC1)は、そのままその配線を使用することにします。2台目のPC(PC2)との接続は、ACCジャックとREMOTEジャックを経由する従来のアナログインターフェースで接続することにします。

具体的には、まずリグコントロールラインは、7610背面のREMOTEジャックからレベルコンバーター(CT-17)経由して、PC2のCOMポートに接続。次に、AF入出力とスタンバイラインは、7610背面のACC1ジャックから自作インターフェースを経由して、PC2の別COMポートおよび、サウンド入出力ジャックに接続します。


レベルコンバーター CT-17

これで、7610と2台のPCがつながりました。

IC-7610の設定

まず、PC1側に対応させる7610の設定については、前号をご参照ください。USBケーブル1本で、リグコントロール、AF入出力、スタンバイコントロールを行う様に設定します。
・WSJT-XがIC-7610にまだ対応していないため、一時的にIC-7851のアドレスを借ります。(8Eh)
・推奨ボーレートは19200bps。


セットモード → 外部端子 → CI-Vと進んで設定する

次に、PC2側に対応させる設定を行います。
PC2には、サブ側VFOを担当させるため、ACC1ジャックのAF出力ピンから、サブAFを出力させる設定が必要となります。

セットモード → 外部端子 → ACC AF/IF出力 と進み、「AF/SQL出力選択」の項目を「サブ」に変更する。

それから、PC2からも送信できる様にするため、ACC1ジャックからの変調入力がかかる様になっているか確認します。

セットモード → 外部端子 → 変調入力 と進み、変調入力(DATA1)がACCになっていることを確認します。すぐ下の変調入力(DATA2)がUSBになっていることもついでに確認します。


DATA1がACC、DATA2がUSBになっていることを確認。

これにより、DATA1を選んだVFO側(今回はサブ側)からはACCジャックから変調がかかり、DATA2を選んだVFO側(今回はメイン側)からはUSBポートから変調がかかることになります。

以上で7610の設定は完了です。

PC1の設定

PC1側のWSJT-X設定についても前号をご参照ください。


右下の「Test CAT」を押してボタンが緑色に変わること、
「Test PTT」を押してボタンが赤色に変わること(および7610が送信状態になること)を確認


SoundcardのInput、Outputがそれぞれ「USB Audio CODEC」になっていることを確認

PC2の設定

つぎにPC2側のWSJT-Xの設定を行います。PC2側はCOMポートが2つ必要です。1つはCI-Vでのリグコントロール用、もう1つはスタンバイコントロール用です。

下記は、COM5とCOM1の2つ使い、COM5をCI-Vでのリグコントロール用、COM1をスタンバイコントロール用に設定した一例です。(実際にご使用になるパソコンとインターフェースに併せて設定を行ってください)


CAT Controlの「Serial Port」を「COM5」に設定。
Serial Port Parametersの「Baud Rate」を「19200」に設定。
PTT Methodを「RTS」、「Port:COM1」に設定。

設定完了後は、PC1の設定と同様に、右下の「Test CAT」を押してボタンが緑色に変わること、「Test PTT」を押してボタンが赤色に変わること(および7610が送信状態になること)を確認します。

Soundcardの設定は、ご使用の音源を選択します。


これは、PC2に外付けした「Sound Blaster USB」を選択した一例。

運用方法

事前にPCの内蔵時計の誤差が、それぞれ1秒以内であることを確認し、もし誤差が大きい場合は、先に校正しておきます。

1. IC-7610の電源を入れてから、PC1側でWSJT-Xを立ち上げます。
(注意)上記の順番が逆になると、WSJT-Xにエラーが表示されることがありますのでご注意ください。先に無線機の電源を入れて、COMポートをオープンしておくとエラーは出ません。

2. PC2側でもWSJT-Xを立ち上げます。
「Rig Control Error」という窓が表示されることがあります(現時点で原因不明)が、OKをクリックして先に進めます。

3. 7610で周波数とモードの設定を行います。
下の画像は、メイン側を3.5MHz、サブ側を7MHzに設定した例です。運用モードについては、メイン側はPC1で運用するため「USB-D2」(USBからの変調入力)、サブ側はPC2で運用するため、「USB-D1」(ACCからの変調入力)を選択します。その後、「DUALWATCH」をオンにします。


メイン側を3.573/USB-D2、サブ側を7.074/USB-D1に設定し、DUALWATCHをオンにした例。

この設定により、PC1側のWSJT-Xで3.5MHz側をデコード、PC2側のWSJT-Xで7MHzのデコードが同時に動作します。

注意1
この場合、PC2側の表示周波数がPC1側と同じ3.573になってしまいますが、現状では、WJST-XがサブVFOの周波数を読めないため、これは回避できない様です。PC2側の表示周波数は3.573ですが、実際には7.074で受信した信号をデコードしていますので、大きな問題はありません。

注意2
テストに使用したPCの相性問題かも知れませんが、今回のテスト中に、PC1、PC2ともに、「Rig Control Error」という窓がしばしば表示されました。これはリグコントロールが効いていないことを知らせてくれるものですが、受信には関係しませんので、受信だけなら無視しておいても問題はありません。
・ただし、送信する際は、これを解消する必要があるため、下で説明します。


Rig Control Errorの窓

送信するには

上の画像の「Rig Control Error」が表示されている状態では、受信ができても送信ができないため、送信しようとした際にこれが表示されていた場合、解消する必要があります。まずは、「OK」をクリックします。すると次には「Settings」窓が立ち上がってきますので、ここでも「OK」をクリックします。

この操作によって、周波数表示(例 3.573.000)の左側にある赤丸(リグコントロールが効いていない状態を示す)が緑色に変わり、リグコントロールが有効となって、送信も可能となります。(もし赤丸が緑丸にならない場合は、他に原因があると思われます)

PC1側で送信(QSO)するには、前号に記載した手順に沿うことで、問題なく送信できます。

PC2側で送信(QSO)するには、
1. 7610のSPLIT機能をオンにする。(「SPLIT」ボタンを短押し)
2. コントロールVFOをサブ側にする。(「MAIN/SUB」ボタンを短押し)


SPLIT機能をオンにし、コントロールVFOをサブ側に設定した例。
この状態でPC2側からの7MHzでの送信が可能になる。

なお、上記2.の操作については必須ではありませんが、コントロールVFOをサブ側に持ってこないと、PC2側のWSJT-Xは、3.5MHzでの送信と誤認してしまいますので、できるだけ2.も操作されることをおすすめします。


左がPC1で3.573MHzを受信中。右がPC2で7.074MHzを受信中
両バンド同時に、受信信号を次々にデコードできる

お手元のリグに2バンド同時受信機能が装備されていても、通常運用ではあまり使用されない方もいらっしゃると思います。せっかく付いている機能を有効に使わない手はありませんので、今回は2バンド同時受信機能の活用例を紹介させていただきました。

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