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テクニカルコーナー

D-STARレピータリストの更新方法

JK3AZL 高岡奈瑞

DR機能が登場し、誰でも簡単にDVモードで交信できるようになりました。これからD-STARを始める方や、D-STARのおさらいをする方のために、DR機能のしくみと、SDカードを使ってDR機能に不可欠なレピータリストを更新する方法をご紹介します。


IC-9700のDR機能表示。DR機能の登場でD-STARの交信が簡単になった。

DR機能とは?

電波の飛ぶ方向を変えるには、アナログモードでは指向性アンテナの向きを変えるなど「物理的」な変更を行います。

ネットワークの世界では、宛先IPアドレスなどを指定し、転送先を決定します。D-STARシステムでは、IPアドレスの代わりに次の4つのコールサインを組み合わせて通信経路を指定するしくみになっています。

  自局コールサイン(MY)
  相手局コールサイン(YOUR/UR)
  送り元中継コールサイン(RPT1/R1)
  送り先中継コールサイン(RPT2/R2)

D-STARレピータを使って交信するには、レピータの周波数やモードの他、これら4つのコールサインを無線機に正しく設定する必要があります。D-STARの黎明期には「D-STARで交信するには修行が必要」などと言われていたほどで、私もコールサイン入力ミスなどで通信が成立せず、焦った経験があります。

最近の機種に搭載されているDR(D-STAR Repeater)機能は、レピータの周波数やコールサインの組み合わせを意識することなく、誰でも簡単にD-STARレピータを使って交信できるよう編み出された操作仕様です。その後、FMレピータやシンプレックスの周波数もDR機能で設定できるよう進化したため、今では「D-STAR Repeater機能」ではなく「簡単設定機能」と呼ばれることも多くなっています。


D-STAR基本ルールとDR機能の違い。
従来機では面倒だったレピータの設定が、DR機能ではTOとFROMの2つの設定だけで交信できるようになった。

DR機能のしくみ

DR機能は、従来機では面倒だった無線機の設定を、[TO](相手先)と[FROM](アクセスレピータ)の2つを選択するだけで、無線機が必要な設定を自動的に行ってくれます。実際に[TO]と[FROM]に設定した内容が無線機内部でどう設定されるのか?は、下記をご覧下さい。


DR機能で[TO]と[FROM]を設定すると、無線機は「レピータリスト」から必要な情報を取り出し、自動的に設定してくれるしくみになっています。レピータリストの中には、[TO]や[FROM]で選択する「レピータ名」の他、レピータの周波数やDUP情報、レピータコールサイン、ゲートウェイコールサイン、さらに「最寄レピータ」検索に必要なレピータ局の位置情報(※1)も登録されています。

※1 ID-80/880,IC-9100のレピータリストには位置情報は含まれていません。


レピータリストの一例

便利なDR機能ですが、D-STARレピータは増え続けており、無線機内部のレピータリストを更新しないと、新しいレピータに簡単にアクセスできません。

これから、DR機能に不可欠なレピータリストの更新方法についてご紹介いたします。

SDカードを使ってレピータリストを更新する

◎レピータリストをダウンロードする

アイコム製品は、D-STAR サイトにアクセスすると便利です。アイコムのTOPページ[キーワード検索]欄に「D-STAR」と入れて検索ボタンをクリックすると、D-STARサイトにアクセスできます。レピータリストをよくダウンロードされる方は、D-STARサイトをブックマークに登録しておくと便利です。


アイコムTOPページ[キーワード検索]欄に「D-STAR」と入れて検索すると、D-STARサイトにアクセスしやすい。


アイコムD-STARサイトhttps://www.icom.co.jp/personal/d-star/
よくアクセスする方は、ブックマークに登録しておくと便利。

ダウンロードしたいレピータリストをクリックするとダウンロードページが開き、「同意する」にチェックした後、ダウンロードできるようになります。


「同意する」にチェックすると、ダウンロードできる。

アイコムのレピータリストは圧縮形式のファイルがダウンロードされます。ダウンロード先を指定して「保存」する際、保存先のフォルダがドコなのか忘れないようにしましょう。


Internet Explorerのメッセージ例。

◎ダウンロードファイル(圧縮形式)を解凍する

圧縮ファイルを右クリックし[すべて展開]をクリックします。通常は圧縮ファイルが保存されていたフォルダに、圧縮ファイルと同じ名前のフォルダが作成されます。


ID-31のレピータリストを解凍したフォルダの中には、icf形式とcsv形式のファイルがある。

◎SDカードにファイルをコピーする

所定のフォルダにレピータリストをコピーしますが、機種によってレピータリスト更新に使うファイル形式とフォルダ名が異なります。

■ID-31,ID-51,IC-7100の場合(csvファイル非対応機)
icf 形式のファイルをSettingフォルダ内にコピーします。


icf形式のファイルを[Setting]フォルダの中にコピーする。

■ID-51PLUS/PLUS2,ID-31PLUS,ID-4100,ID-5100,IC-9700,IC-705の場合
csv形式のファイルをCsvフォルダ内のRptListフォルダの中にコピーします。


Csv形式のレピータリストは[Csv]-[RptList]フォルダの中にコピーする。

◎無線機にSDカードを挿入し、電源ON

無線機に別のSDカードが挿入されている場合は、電源OFFまたはアンマウント操作を行ってから取り外してください。

◎無線機でレピータリストを読み込む

■ID-31,ID-51,IC-7100の場合(csvファイル非対応機)
無線機の[MENU]から
→[SDカード]
→[設定ロード]でファイル名を選択
→「レピータリストのみ」を選択
→「はい」 (SKIP 設定・「いいえ」でも可)
→「はい」 (インポート)


ID-31でレピータリストを「ロード」する場合。

ファイルロード画面では「全て」「自局設定以外」「レピータリストのみ」の3つから選択できますが、「レピータリストのみ」以外を選択してしまうと、受信履歴や自分で登録した相手局コールサインなどが消えるので、注意してください。

■ID-51PLUS/PLUS2,ID-31PLUS,ID-4100,ID-5100,IC-9700,IC-705の場合
無線機の[MENU]から
→[SDカード]
→[インポート/エクスポート]
→[インポート]
→[レピータリスト]でファイル名を選択
→「はい」(SKIP 設定・「いいえ」でも可)
→「はい」 (インポート)


ID-31PLUSでレピータリストを「インポート」する場合。

KENWOOD製無線機の場合

TH-D74にも「DRモード」が搭載されており、メーカーサイトから最新のレピータリスト(tsv形式)がダウンロードできます。


TH-D74のDRモード画面。

TH-D74はパソコンとUSBケーブルで接続することで、無線機内のSDカードにファイルをコピーできるのが便利です。


メーカーのサポートサイトから最新レピータリストがダウンロードできる。

・microSDカードを入れたTH-D74とパソコンをmicro USBケーブルで接続。
・TH-D74の[MENU]キーを押し、テンキーから「980」を入力し「マストストレージ」に設定。
→PCからSDカードの中が確認できるようになります。
・SDカード内の [KENWOOD]-[TH-D74]-[SETTING]-[RPT_LIST] フォルダに、ダウンロードしたtsv形式のファイルをコピー。
・ファイルコピー後、TH-D74の電源を一旦OFF。USBケーブルを外し、TH-D74の電源ON。
・[MENU]キーを押し、テンキーから「812」を入力。
・ファイルを選択し[ENT]キー。
・仕向け(地域)選択画面で「日本向けデータ」を選択し、[ENT]キー。


TH-D74を「USB機能選択>マストストレージ」設定(980)にすると、パソコンから無線機内のmicroSDカードにアクセスできる。

その他、便利なツールを利用する

◎レピータリスト書込済みSDカード販売

SDカードに最新レピータリストを書き込んでくれるサービスもあります。ちなみにコンビニ店舗で売っているSDカードの価格が約1,100円~1,600円程度なので、この価格でこのサービスはお得ではないでしょうか。


希望の機種を選ぶと、SDカードにレピータリストを入れて販売してくれる。
http://www.digiham.jp/SHOP/gh-sdmrhcg4gb.html

ちなみに、ID-31シリーズやIC-9700などの無線機では容量が2GBまでのSDカードおよび32GBまでのSDHCカードに対応していますが、4GBあれば十分遊べます。


4GBのmicroSDカードをID-31PLUSに入れた状態。69時間も録音が可能。

◎ダイレクト入力(RPT)を利用する

「とにかく今すぐ新しいレピータにCQを出したい」場合は、[TO]の[ダイレクト入力(RPT)]にレピータコールサインを設定することで、レピータリストに登録されていないレピータに信号を送ることができます。

[ダイレクト入力(RPT)]には「JR5WG  A」や「JP5YCO B」など、識別符号までを含むレピータコールサインを入力しますが、無線機内部では自動的に「/」を付けたエリアCQのコールサインに変換され、正しく通信できる状態になります。


(左) [TO]選択で「ダイレクト入力(RPT)」を選択。
(中) 「徳島北430」のコールサイン「JR5WG  A」を設定した様子。
(右) CS(コールサイン)画面ではエリアCQの「/JR5WG A」になっているのがわかる。

◎RS-MS1A/MS1Iを利用する

ID-31PLUSやID-51PLUS/PLUS2,ID-4100やID-5100の場合は、画像伝送などが楽しめるアプリを介して、最新レピータを利用することが可能です。


「徳島北430」レピータが入っていないID-31PLUS。

D-STARの拡張機能をスマートに楽しめるAndroid/iOS端末専用アプリのRS-MS1A/MS1Iにも「DR機能」(※2)があり、アプリ内で最新レピータリストを簡単にインポートできるようになっています。

※2 RS-MS1AのDR機能でコントロールできない無線機もあります。

RS-MS1A/IのMENUから
・[インポート]を選択
・[レピータリスト]を選択
・[レピータリストの更新]で「インターネットからダウンロード」を選択
・[ICOMウェブサイト]を選択
・[レピータのインポート方法]で「すべて上書き」を選択

RS-MS1A/Iと無線機を接続すると、アプリ側でインポートした新レピータリストを使って無線機をコントロールすることができます。


RS-MS1A/Iは、アプリ内でレピータリストがダウンロードできる。
ID-31PLUSにアプリを接続すれば、「徳島北430」レピータも利用できる、

FAQ

Q: icf 形式とは?
A: 無線機の設定情報全てが保存される、クローニング用のファイル形式。

Q: 圧縮とは?解凍とは?
A: 容量の大きいデータを小さくしたり、複数データを1つのデータにまとめたりすることを「圧縮」と呼び、「圧縮」を元に戻すことを「解凍(展開)」と呼びます。

Q: zip形式とは?
A: 圧縮形式のひとつで、Windowsが標準でサポートしている圧縮形式。

Q: icf 形式のファイルが無線機で読み込めない。
A: 異なるモデルのファイルを読み込もうとしている。(例:ID-51用データをID-51PLUS)
A: Settingフォルダの中にファイルを入れていない。
A: 無線機のファームが(SDカードによるレピータリスト更新ができない)初期バージョン。(例:IC-7100)

Q: csv形式のファイルが無線機で読み込めない。
A:ファイルが所定のフォルダにコピーされていない。
A: ファイル名が長すぎる。
拡張子を除き、IC-9700は半角23文字(全角11文字+半角1文字)以内、ID-5100/ID-4100 は半角20文字(全角10文字)以内、その他の機種は半角15文字(全角7 文字+半角1文字)以内にしてください。

Q: [インポート]と[設定ロード]の違いは?
A: どちらもレピータリストの更新ができますが、[設定ロード]はクローニング用の全設定情報からレピータ情報だけを抜き出して、無線機に取り込みます。
[インポート]はレピータ情報だけ入ったファイル(csv形式)を読み込むため、処理時間が早い。

Q: 無線機で使えるSDカードの種類は?
A: 容量が2GBまでのSDカードおよび32GBまでのSDHCカードが使えます。なおセキュリティ対応型のSDカードは使えません。

Q: パソコンでフォーマット済みのSDカードも、無線機でフォーマット必要ですか?
A: 無線機でフォーマットしてからご使用下さい。SDカードが無線機で正しく使えるようになる他、無線機で必要なフォルダがSDカード内に自動的に生成されます。

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